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「ELを獲ることが今季最大の目標になるのかな」クロップ有終の美へ 遠藤航 UEFAヨーロッパリーグへの想い【WOWOW独占インタビュー《後編》】

 海外の監督で特に日本人選手と縁の深い監督といえば、多くの人がユルゲン・クロップをイメージするだろう。実際ボルシア・ドルトムントでは香川真司と丸岡満、リヴァプールでは南野拓実を指導し、昨年8月に遠藤航を迎え入れている。

 香川と共闘した期間には2010-11からブンデスリーガ2連覇、南野の所属期間にはプレミアリーグ、国内カップ、リーグカップを制しており、つい先日のリーグカップで遠藤航も欧州初タイトルを手にした。日本人選手のビッグタイトル獲得の見出しのそばには必ずクロップの名前がある。

 そんな稀代の名将が目指すリヴァプールでの最後のタイトルがUEFAヨーロッパリーグだ。就任1年目の2015-16シーズン、シーズン途中から指揮を執ったチームをEL決勝まで導いたものの、決勝でセビージャに敗れた。不屈のクロップ・リヴァプールの物語はここから始まったのである。

 在任中にCL、プレミアリーグ、国内カップ戦を制して、残すはELのみ。現在レッズの主軸として戦う遠藤航は、そのELに対してどのような想いを持っているのか。(全3編。前編:リヴァプール加入と自身の武器中編:クロップ監督とアンフィールド から続く)
※インタビューは昨年11月に行われたものです

「日本人で世界的な守備的MFが出てきていないからこそ」

──クロップ監督といえば香川選手や南野選手を思い浮かべます。クロップ監督から2人について話をされたことは?

「多くはないけど、南野選手がいたときはカップ戦(2021-22シーズンの国内カップ&リーグカップ)を獲れたのは彼がいたからだという話はしましたし、彼がいなければそのタイトルは無かったみたいな。どれだけ貢献してくれたのかみたいな話をしてくれました」

──日本人に理解のある監督というイメージですが、実際どう思いますか?

「まぁ好きなんだと思いますけど、彼みたいにトップクラブで監督をやっていれば色々な国の選手たちとやっているわけなんで、日本人が好きってわざわざ意識はしていないというか。それは日本人が一番意識しているっていう感覚なんで、あまり深くは考えていないです」

──リヴァプール加入にあたって南野選手や香川選手と話をしたことは?

「南野選手とはリヴァプールの街がどうとかそういう話はしていて。香川選手も連絡をくれて、クロップ監督は僕(遠藤)みたいなプレースタイルが好きだと思うし、絶対に合うと思うから頑張ってみたいな話をしてくれました」

──2人はどちらかというと前線の選手。クロップ監督も新しい感覚なのではないでしょうか?

「日本人で世界的な守備的MFが出てきていないからこそ、日本人で僕みたいなタイプの選手を、クロップ監督だけじゃなく世界的に(移籍で)獲っていないのが現状としてあると思います。自分は監督に求められてここにいるわけなんで、監督の期待に応えられるだけのプレーをこれから見せていかなければいけない。それができれば日本人のアタッカーだけじゃなくて、守備的MFとか後ろの(ポジションの)選手の価値を上げられるし、自分みたいな選手が日本人選手として出てくると思っているので、そういうことを背負いながらやっていかなければいけないなと」

──日本の若い選手たちは点を取るとか10番タイプに憧れると思いますが、遠藤選手がリヴァプールで戦っていることが少しずつ現状を変えられているのではないでしょうか?

「アタッカーに憧れるのは当たり前で、それでいいと思うし、日本だけじゃなくて世界的にみても子供はみんなアタッカーが好きっていう。ポジションがどこかで変わったときに『守備的MFやだな』ではなくて、『じゃあ遠藤航みたいにプレーしよう』みたいな、そういう風になっていけばいいと思います。それぞれのポジションで日本人のヒーロー的な存在がいれば、それは子どもの目指すべき選手になっていくと思います」

「単純に友達が多くないっていう(笑)」

──クロップ監督からの南野選手の話でも「タイトル」という言葉がありましたが、やはりシーズンの目標は優勝になりますか?

「そうですね、まだシーズン始まって数カ月しか経っていないのでタイトルの話をするのは早いですけど。自分がここに来た意味はチームにタイトルをもたらすことというか、僕自身も獲りたいと思っているし、カップ戦、EL、リーグ戦含めて獲れるだけの力がリヴァプールにはあると思うので、タイトル獲得を目指しています」

──CLやELで日本代表選手が多く戦っています。選手と連絡は取りますか?

「そんなには取らないですね。試合で会えば話すけど、そこまで連絡を取るタイプではないし。お互いたぶん、CLだったりELだったり試合は観ていると思います。別に日本人選手だけじゃなくて、普段あまり連絡を取らないです」

──それは昔からのスタイル?

「カッコよく言えばスタイルですけど、単純に友達が多くないっていう(笑)。でも別に普段家族との生活があるわけなんで、そっちが忙しいというか。子供の送り迎えしたりとか、そんなことをしていると1日が終わるっていう、そんな感じです」

──他の選手のCL/ELの試合をご覧になることも?

「観れるときは観ます、子供と一緒にとか。時間が夜遅くになると観れなかったりしますけど」

「CLとかELの舞台に立つ日本人が増えたなと思いますし、そのなかでも結果を残し続けている選手たちが増えてきたっていう。日本サッカーにとってはすごくいいことだと思います。もっともっとCL/ELに若い選手たちが出られるようになっていけばいいのかなって」

「ジェームズ・ミルナーのように」

──遠藤選手にとってELとはどんな舞台ですか?

「僕にとってはチャンスを貰っている分、かける思いは自ずと強くなっています。個人としては勝ち進めば進むほど、ELを獲ることが今シーズン最大の目標になるのかなと思うので。チームとしてはELは獲らなければいけないみたいな、最低ラインじゃないけど、それくらいのモチベーション。(優勝すれば)チャンピオンズリーグに出られるということを含めると。もちろんプレミアリーグでトップ4になるのも目指さなければいけないけれど、ELを獲れればCLに出られるよね、っていう感覚はみんなあると思うので、それだけ重要な大会だと思います」

──チャンピオンズリーグも来季以降の目標?

「そうですね。リヴァプールというチームはそこに出ることが目標ではなくて、CLは毎年出なきゃいけないし、そこで優勝にトライするチーム。個人的にはもちろん『CLに出たい』もあるけど、『CLでも優勝したい』という思いを持たなければいけないと思っています」

──最後に、リヴァプールでの目標は?

「短期的には今シーズン獲れるタイトルをしっかり獲っていきたいです。そのために目の前の1試合1試合、与えられた時間で活躍し続けられるように。僕は契約が4年あって、その4年で何を成し遂げられるかでいうと、もちろんチャンピオンズリーグも含めて獲っていきたいし、(現行契約の)4年以降もここに残れるだけの活躍をしていくことが自分にとっての目標になるのかなと思います」

──現行契約満了時は34歳ですよね。その頃の自分は想像できますか?

「あまりできないですよね、今はまだ。1シーズンずつやっていくしかないと思っているんで。まぁ『34歳だったらもう契約切れるんじゃね』って思っている人達もいるかもしれないけど、それは分からないというか。ジェームズ・ミルナーのように、長くいれるように頑張りたいなと思います」

 リーグカップ決勝後の記者会見でクロップ監督は「遠藤がリヴァプールと再び長期契約を結ぶことを確信している。パスポートでは30、31歳になっていると思うが、そうではない。彼はマシーンだ」と語り、厚い信頼を寄せた。しかしクロップが指揮を執るのは今季までで、現行契約が終わるときに誰が監督を務めているのかは分からない。

 再び長期契約を結ぶに値するタイトルへの貢献、そして何よりもユルゲン・クロップ監督の有終の美へ、UEFAヨーロッパリーグは遠藤とクラブにとって是が非でも獲りたい。5月22日、決勝の舞台ダブリンへ。リヴァプールの決勝トーナメントが幕を開ける。

【UEFAヨーロッパリーグ ベスト16 リヴァプールの配信予定】

3月8日(金)午前2:30 1st leg スパルタ・プラハ vs リヴァプール(解説: 安永聡太郎/ 実況:安井成行)

3月15日(金)午前4:45 2nd leg リヴァプール vs スパルタ・プラハ(解説: 安永聡太郎/ 実況:安井成行)

前編:リヴァプール加入と自身の武器 を読む
中編:クロップ監督とアンフィールド を読む

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