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「思ったより背が高いなと(笑)」遠藤航からみたクロップ監督とアンフィールド【WOWOW独占インタビュー《中編》】

 遠藤航といえばその真髄は守備にあり、代名詞の「デュエル王」についてはインタビュー前編で本人が語ったところ。しかしリヴァプールと前所属のシュトゥットガルトとでは何もかもが違う。それはクラブの立ち位置や目標、そして戦術だ。

 今季こそブンデスリーガで上位争いを演じているものの、遠藤が所属していた頃のシュトゥットガルトは残留争いが常で、チームとしての戦い方や、それに伴う遠藤の役割も今とは異なる。

 即時奪還とポゼッションを強みとするリヴァプールにおいて、移籍当初は守備面で求められるタスクの変化に苦戦する場面も散見されたが、それも今や過去の話だ。チームとしての守り方と、そこに対する遠藤の捉え方をインタビューで明かしている。(全3編。前編:リヴァプール加入と自身の武器 から 後編:ELへの想い に続く)
※インタビューは昨年11月に行われたものです

「入れ替わられるシーンを減らそうと思えば減らすことはできる」

──守備面で一番意識していることは?

「リヴァプールの良さは攻撃から守備への切り替えの部分で、どれだけ早くボールを奪い返せるかがカギになってくるので、アンカーの選手としてどう抑えていくかです。後ろに残りすぎても、それが監督の求めることではなかったりするので、そこは自分の中では意識的に変えなければいけない部分ではありました。リスクマネジメントの部分で」

「例えば、(相手に対して)プラス1人の状況を作って後ろで守るんじゃなくて、マンツーマン気味でも前にボールを奪いに行くみたいな意識の変化はありますし、ボールを奪いに行くプレー選択のラインが高くなっている感覚はあります。まだまだ難しいというか、自分の中で改善できるポイントかなと」

──リヴァプールのアンカーともなれば前への意識も求められるということでしょうか?

「そうですね、攻撃に関しては縦に(パスを)つけるみたいなところは良くなってきていると思います。あとは守備でのちょっとした、ボールを奪い返すタイミングとか、ポジショニングの微調整とか、そのあたりを改善していけば守備でも奪い返せるシーンは増えてくると思います」

──前に出ることによるリスクはどうマネジメントしていますか?

「これが一番難しくて、どこでリスクを負うかという話ですよね。リヴァプールはそこでリスクを負ってでも奪いに行く、というのが自分たちの求めるスタイルなので、自分のところで(相手と)入れ替わられたらヤバいみたいなことを意識しすぎると、逆に前に行けなくなってしまう。あまり考えすぎずに、ガツンと行って入れ替わられてもしょうがないというか、そこでスプリントして戻れば最後ゴール前で守れるという感覚でいるので。抜かれるのを恐れず、(奪いに)行き切ることを意識しています」

「まぁ最終的に守れるとは思うんです。入れ替わられるシーンを減らそうと思えば減らせることはできて、でも奪いに行かない選択をする=ボールを奪う回数は減るし、抜かれる回数も減るっていう話なので。そこは奪いに行くチャレンジをするっていうことを一番のプライオリティにするべきで、自分の良さにしなきゃいけない部分だと思っています」

──アンフィールドの雰囲気もあって背中を押されるんじゃないでしょうか?中盤でボールを奪った時に歓声が湧いたりしますよね。

「雰囲気は本当に凄いと思います。スタジアムに来ているサポーターみんなが一緒に戦っているのを一番感じられたスタジアムかなと」

──遠藤選手のプレースタイルにも合っているんじゃないかなと思います。

「もちろんボールを奪うシーンだけではないけど、前向きなプレーの選択だったり、ちょっとした良いプレーを見逃さない。それに対して拍手したりとか声援を送ったりとかあるんで、細かい部分でのサッカーを見る目は凄いし、歴史を感じますね」

「思ったより背が高いなと思いました(笑)」

──試合前に一番大切にしていることはありますか?

「あまり緊張とかするタイプではないので、試合前に特別なことをやっているかといわれるとそうではないです。臨むにあたってスタジアムの雰囲気、特にホームは良いから、勝手にモチベーションも上がってきますし。一緒に出る選手との関係性とか相手がどういう戦い方をしてくるかはある程度確認するので、それを頭に入れながら、どうプレーしようかなみたいなことを考えたりしています」

──緊張しないのは子どものころから?

「んー、どうなんですかね。最初デビューした時とかは今よりも緊張してたとは思いますけど。そこは経験を積んでどういうメンタリティで試合に臨んだらいいのかとか色々考えながらやっているんで、いつも通りやれるようなメンタリティになっていってるんじゃないかと思います」

──アンフィールドのデビュー戦でも特に動揺することはなかったですか?

「そうですね。退場者が出たっていう難しい状況ではあったんで(プレミアリーグ第2節ボーンマス戦、58分に味方が退場した直後に途中出場)。その中でもやることは限られるし、とにかく自分の良さを出そうみたいな感覚ではありましたね」

──ユルゲン・クロップ監督について。初めて会った時の印象は?

「思ったより背が高いなと思いました(笑)。結構大きいなって、身長が。あとは予想通りというか、すごく接しやすくて人柄が良いのが滲み出ていました」

──会う前の印象はどうでしたか?

「すごく選手を大事にする監督っていうイメージが個人的にはあって、どの選手でも褒めたり、ポジティブなことをメディアに対して話している印象はすごくありましたね」

──どんな話をしましたか?

「移籍してきた最初に個人的にミーティングをして、チームのやり方みたいな話をしてくれました。さっきも言ったように自分たちの生命線は攻から守への切り替えの部分で、そこのポジショニングだったり細かい確認をしたりですね」

「全員が戦力っていうのは当たり前で」

──これまで色々な監督と共闘されたと思いますが、あえてクロップ監督の特徴を挙げるなら何でしょうか?

「選手はすごく伸び伸びプレーできる環境なのかな。それを監督がうまく作り上げていて、彼の求めるサッカーをしっかり選手たちに伝えつつ、そこまで細かくああしろこうしろというタイプではないですね。肝は切り替えの部分だったりとか、もちろんチーム全体として(決めごと)はあるけど、選手の姿勢とかゲームの中での判断を尊重する監督だと思っています。選手はすごくプレーしやすいと思います」

──いろんなタイプの監督がいると思いますが、個人的にはどういう監督がやりやすいですか?

「あまり気にしないですかね。その監督がどういうタイプなのかは自分の中で意識したりはあるけど、何を求められているのかを理解することが選手としては一番大事です」

──クロップ監督は練習の時にはどのようなコミュニケーションをとりますか?

「練習ではあまり多くは喋らないですね。基本的にはトップチームのコーチが練習を進めるので。そこはたぶん監督が長く一緒にやっているパートナーとして信頼して任せて、大事な部分だけ入ったり、少しチームが緩んでいたりすると喝を入れるみたいな」

──多くのタイトルを獲っている監督のもとでやってみて、指導力の凄さを感じる部分はありますか?

「選手の特徴とか、選手をどう生かすかをすごく考えている監督だと思います。新加入選手も含めての選手マネジメント、スタメンで使うところとか、ベンチに座らせて途中交代で入れるタイミングとか。選手のことを考えながら選手交代をしている印象はあるので、チーム全員が戦力として同じ方向を向いていけるようなマネジメントをしている監督です」

──チーム内の競争という意味ではどういうスタンスですか?

「競争がどうとかを(クロップ監督が)言ったりはしないです。どちらかというと全員が戦力っていうのは当たり前で、どのタイミングで起用するのかということだけを考えていると思うし、あまり選手が気にすることではないのかな。選手はスタメンだろうがベンチからスタートしようが、100%準備して与えられた時間、チームに貢献できることだけを考えていればいいのかなと思います」

 奇しくもこのインタビューから約2カ月後、クロップ監督は今シーズン限りでの退任を発表した。

 負傷者を多く抱えながら挑んだ先月25日のリーグカップ決勝では下部組織所属の若手選手を途中から投入し、ウェンブリーでの決勝という貴重な経験を積ませ、直後の国内カップ戦ではアカデミー出身選手によるトップチーム初ゴールで勝利。遠藤はそうしたクロップ監督のマネジメントの手腕に感銘を受けている。

 インタビュー後編では過去にクロップ監督の薫陶を受けた香川真司、南野拓実とのエピソードをはじめ日本人選手との関係性、そしてUEFAチャンピオンズリーグ / UEFAヨーロッパリーグにかける想いを語っている。

【UEFAヨーロッパリーグ ベスト16 リヴァプールの配信予定】

3月8日(金)午前2:30 1st leg スパルタ・プラハ vs リヴァプール(解説: 安永聡太郎/ 実況:安井成行)

3月15日(金)午前4:45 2nd leg リヴァプール vs スパルタ・プラハ(解説: 安永聡太郎/ 実況:安井成行)

前編:リヴァプール加入と自身の武器 を読む
後編:ELへの想い を読む

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