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IBF世界S・ウェルター級タイトルマッチ バカラン・ムルタザリエフ対ティム・チュー

KO率73%の全勝王者 vs KO率68%の前WBO王者
オッズは16対3 チュー有利

 今年3月、大流血戦のすえセバスチャン・フンドラ(アメリカ)に12回判定負けを喫し、WBO世界S・ウェルター級王座を失ったティム・チュー(29=オーストラリア)が、バカラン・ムルタザリエフ(31=ロシア)の持つIBF王座に挑む。再起戦が即世界戦となるチューがオッズでは16対3と大きくリードしているが、大柄なスラッガー、ムルタザリエフの攻撃力は侮れない。

王座陥落から7ヵ月で再起戦=世界挑戦

 挑戦者の立場とはいえチューが主役であることは間違いない。ロシア出身で1990年代から2000年代前半にかけてS・ライト級で世界王者になったコンスタンチン・チューの息子として知られ、自身も昨年3月にWBO暫定世界S・ウェルター級王座を獲得。のちに正王者に昇格し、2度の防衛も果たした。今年3月、WBC暫定王者のフンドラとWBO王座とWBC王座(決定戦)をかけて対戦し、頭部に裂傷を負って出血。ドクターストップがかかってもおかしくないほどの大流血戦のなか十分なパフォーマンスができないまま小差の判定負けを喫した。8月にはバージル・オルティス(アメリカ)戦が内定したが、チューが負傷したためキャンセル。その後、ムルタザリエフへの挑戦が決まったという経緯がある。

ロシア出身の隠れた実力者ムルタザリエフ

 世界王者でありながら脇役の立場に甘んじているムルタザリエフはロシアの出身だが、プロ7戦目から主戦場をアメリカに定めている。2016年以降はセルゲイ・コバレフ(ロシア)の世界戦の前座に起用されることが多く、大観衆の前で勝利を重ねていった。世界15傑入りから6年以上をかけて上位にランクを上げ、今年4月にはドイツでIBF王座の決定戦に出場。地元のジャック・クルカイ(エクアドル/ドイツ)と激しい打撃戦を繰り広げたすえ11回で仕留め念願のベルトを手に入れた。

どちらが先にプレッシャーをかけるのか

 25戦24勝(17KO)1敗のチュー、22戦全勝(16KO)のムルタザリエフ。数字上は似たような戦績だが、中身の濃さではチューが上を行く。すでに4度の世界戦を経験しているのも大きなアドバンテージといえよう。加えて知名度の高さもあり、それがオッズに反映されているものと思われる。
 身長174cm、リーチ179cmのチューはプレッシャーをかけながら距離を詰め、左右フックや右アッパーなどで相手を攻め落としてしまうことが多い。フンドラ戦では持ち味を発揮できなかったが、流血で視界が妨げられたことに加え相手が超長身のサウスポーという点を割り引いて考える必要があるだろう。
 ただ、今回の相手、ムルタザリエフを侮ることは危険だ。このIBF王者は身長182cm、リーチ188cmと大柄で、体重を乗せて打ち込む右ストレート、右フック、中近距離で放つ右アッパーは強烈で、返しの左フックも破壊力がある。タフなクルカイを終盤で倒すなどスタミナもある。
 挑戦者のチューは圧力をかけて出たいところだが、それはムルタザリエフも同じだ。どちらが先手をとって自分の距離とペースに持ち込むのか。まずは序盤の展開に注目したい。

<S・ウェルター級トップ戦線の現状>


WBA         :テレンス・クロフォード(アメリカ)
WBA休養:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBC         :セバスチャン・フンドラ(アメリカ)
WBC暫定:バージル・オルティス(アメリカ)
IBF            :バカラン・ムルタザリエフ(ロシア)
WBO         :セバスチャン・フンドラ(アメリカ)
WBO暫定:テレンス・クロフォード(アメリカ)


 この夏、テレンス・クロフォード(37=アメリカ)がイスライル・マドリモフ(29=ウズベキスタン)に小差の12回判定勝ちを収め、WBA王座とWBO暫定王座を獲得した。パウンド・フォー・パウンド上位常連のスター選手が参入し、さらに期待を集めてきたバージル・オルティス(26=アメリカ)も同時期にWBC暫定王座を手にしたことでこの階級の注目度は一気に上がった。ただ、気になる点があるのも事実だ。これまで無敵ぶりを見せつけてきた37歳のクロフォードがやっと最終盤になって抜け出すという辛勝だったことと、21戦全KO勝ちだったオルティスがセルヒイ・ボハチュク(29=ウクライナ)に2度のダウンを奪われたすえの2-0判定勝ちに留まった点だ。ふたりともウェルター級からの転向組だけに、この階級に馴染むのに少し時間がかかるかもしれない。
 2本のベルトを持ちながら脇役に甘んじているのがセバスチャン・フンドラ(26=アメリカ)だ。エリクソン・ルビン(29=アメリカ)、ティム・チューに勝つなど確かな実績を残しているのだが、ブライアン・メンドサ(30=アメリカ)に逆転の7回KO負けを喫した印象が強いせいだろうか。身長197cm、リーチ203cmというヘビー級並みの体格を持つサウスポーは、勝敗はともかく誰と戦っても話題になるはずだ。
 今年4月にジャック・クルカイを11回KOで下してIBF王者になったバカラン・ムルタザリエフは大柄なスラッガーで、チューの挑戦を退けるようならば大化けする可能性を秘めている。
 フンドラへの挑戦が噂される元ウェルター級3団体王者のエロール・スペンス(34=アメリカ)、20戦全勝(12KO)のザンダー・ザヤス(22=プエルトリコ)、さらにザヤス同様、やや先物買いになるが8戦全勝(6KO)のヨエニス・テレス(24=キューバ)にも注目したい。

IBFインターナショナル ミドル級王座決定戦
セサール・マテオ・タピア対エンドリー・サーベドラ

 セサール・マテオ・タピア(26=メキシコ/オーストラリア)対エンドリー・サーベドラ(33=ベネズエラ)は世界ランカー対決だ。
タピアは2019年にオーストラリアの国内王座を獲得し、次戦で元世界王者の息子、スティーブ・コリンズ・ジュニア(アイルランド)に1回KO勝ち。今年4月には20戦全勝(17KO)のケイベル・ゴンサレス(ベネズエラ)に10回判定勝ちを収めて空位のWBO中南米王座を獲得している。戦績は17戦全勝(10KO)。WBO9位、IBF14位にランクされている。
 サーベドラは2018年6月にプロデビューし、6年間に17戦16勝(13KO)1敗の戦績を収めている。今年3月、元世界ランカーのアイザック・ハードマン(オーストラリア)に8回TKO勝ちを収めてWBOインターコンチネンタル王座を獲得。それが評価され、WBOではタピアよりも上位の5位にランクされている。オッズは15対8、タピア有利と出ている。

S・ウェルター級10回戦
ヨエニス・テレス対ヨハン・ゴンサレス

 ヨエニス・テレス(24=キューバ)対ヨハン・ゴンサレス(33=ベネズエラ)も世界ランカー対決だ。
 S・ウェルター級でWBA5位、WBC9位、WBO15位にランクされるテレスは、アマチュア時代はキューバ選手権8強に甘んじたが、2020年6月に転向したプロでは6戦目で世界ランカーを撃破。その勢いを維持して8戦全勝(6KO)の戦績を残している。
 対するゴンサレスは2017年のプロデビューで、コンスタントに試合をこなしてきて38戦35勝(34KO)3敗のレコードを収めている。のちの世界王者や現役世界ランカーとの対戦経験もある。ただ、今年5月にはサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ハイメ・ムンギア(メキシコ)の前座でヘスス・ラモス(アメリカ)に9回TKO負けを喫しており、8月の試合(2回終了TKO勝ち)を挟んで今回が再起第2戦となる。現在はWBA10位にランクされている。
 24歳のホープと経験豊富な33歳の強打者という興味深い組み合わせだが、オッズは10対1でテレス有利と出ている。

◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆


IBF世界S・ウェルター級タイトルマッチ
バカラン・ムルタザリエフvsティム・チュー

11/25(月)午後9:00 WOWOWライブWOD


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