WBA世界スーパー・ウェルター級暫定王座決定戦 ジャロン・エニス対ウイスマ・リマ
万能型スイッチヒッター vs Monstro(怪物)
エニスの2階級制覇が濃厚
今年4月、3度防衛してきたIBF世界ウェルター級王座に加えWBA王座を獲得したジャロン・エニス(28=アメリカ)が、両王座を返上してスーパー・ウェルター級に転向。その初戦でWBA暫定王座決定戦に出場する。相手はWBA8位にランクされるポルトガル在住の「Monstro(怪物)」ウイスマ・リマ(32=アンゴラ)。万能型スイッチヒッター、エニスの2階級制覇が濃厚とみられている。
才能と体格に恵まれたエニス
エニスは61戦58勝3敗のアマチュア戦績を残し、2016年4月にプロデビュー。2年間に17戦するなどキャリア序盤は比較的イージーな相手を蹴散らしていたが、その後は徐々に対戦相手の質を上げ、世界挑戦経験者のマイク・アルノーティス(ギリシャ)やフランクリン・ママニ(ボリビア)、トーマス・デュロルメ(グアダルペ/プエルトリコ)、元世界王者のセルゲイ・リピネッツ(カザフスタン)、世界ランカーのカスティオ・クレイトン(カナダ)らを連破。そして2023年1月にはIBF暫定世界ウェルター級王座を獲得した。正王者に昇格し3度の防衛を果たしたあとWBA王者のエイマンタス・スタニオニス(リトアニア)に6回終了TKOで圧勝、2団体王者になった。
才能に加え身長178cm、リーチ188cmと体格にも恵まれ、現時点では限界をみせていない。左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターで、ジャブからストレート、中近距離でのフック、アッパーとパンチも多彩だ。戦績は35戦34勝(30KO)1無効試合。WBA1位にランクされている。
アンゴラ出身でポルトガル在住のリマ
リマはアフリカ南西部のアンゴラの首都ルアンダの出身で、現在はポルトガルに住んでいる。2019年に隣国スペインでプロデビューし、その後はポルトガル、イギリス、ドイツ、カナダ、南アフリカなどを転戦。ここまで15戦14勝(10KO)1敗の戦績を残している。唯一の敗北は2023年6月、WBCインターナショナル ミドル級王座決定戦でアーロン・マッケナ(アイルランド)に10回判定負けを喫したものだ。積極的に攻めて出たものの長身のマッケナに巧みに迎撃され、大差をつけられての敗退だった。ちなみにマッケナは現在はミドル級で主要4団体すべてで15位内にランクされている。
以後、リマは4連勝(2KO)と勢いを取り戻している。特に直近の3試合に関しては全勝の相手とIBFインターコンチネンタル王座、IBO王座をかけて対戦して勝っており、「Monstro(怪物)」というニックネームも相まって不気味な存在になってきている。
オッズは16対1 エニスのワンマンショーか
体格で劣るファイター型のリマは左構えで積極的に仕掛けながら距離を潰して自慢の強打を打ち込みたいところだが、相手がエニスとなると簡単には目的を遂げられないだろう。エニスが左右どちらの構えで迎え撃つにしてもスピードと多彩なパンチでリマを翻弄してしまいそうだ。リマにチャンスがあるとすれば自らのリスクを承知のうえで中近距離の打ち合いに持ち込み、先に左を当てることだが、極めて難しい作業といえる。16対1のオッズが出ているようにエニスのワンマンショーに終わる可能性が高い。
<スーパー・ウェルター級トップ戦線の現状>
WBA:アバス・バルー(ドイツ)
WBC:セバスチャン・フンドラ(アメリカ)
暫定 :バージル・オルティス(アメリカ)
IBF :バカラン・ムルタザリエフ(ロシア)
WBO:ザンダー・ザヤス(プエルトリコ)
WBA王座に君臨していたテレンス・クロフォード(アメリカ)が9月、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)を破ってスーパー・ミドル級4団体王座を獲得し、この階級を去ったことで混戦の様相を呈している。WBAはクロフォードに代わって暫定王者だったアバス・バルー(31=ドイツ)が正王者に繰り上がった。そのバルーには7月にWBO王座を獲得したザンダー・ザヤス(23=プエルトリコ)との統一戦計画が持ち上がっている。来年早々に実現しそうだ。
また、WBC暫定王者のバージル・オルティス(27=アメリカ)と、ジャロン・エニス(28=アメリカ)がWBA暫定王座を獲得することを前提に対戦プランが出ており、こちらも2026年上半期に実現に向かいそうな気配だ。
身長197cm、リーチ203cmの規格外の体格の持ち主、サウスポーのWBC王者、セバスチャン・フンドラ(27=アメリカ)は、自身の負傷で10月に予定されたキース・サーマン(36=アメリカ)とのV3戦を延期したばかりだが、こちらも来年の早い時期にサーマン戦がリセットされるものと思われる。
23戦全勝(17KO)のIBF王者、バカラン・ムルタザリエフ(32=ロシア)は昨年10月、ティム・チュー(31=オーストラリア)を4度倒して3回TKO勝ち。破格のパワーを見せつけたが、それが災いして敬遠されているわけではないのだろうが、以後は1年以上も試合から遠ざかっている。実力と知名度が釣り合わないためマッチメークが難しいのかもしれない。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
エキサイトマッチ~世界プロボクシング
WBA世界S・ウェルター級暫定王座決定戦
ジャロン・エニス vs ウイスマ・リマ
12/1(月)午後9:00
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