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IBF世界スーパー・ライト級タイトルマッチ リチャードソン・ヒッチンス対ジョージ・カンボソス

長身技巧派王者 vs 元ライト級4団体王者
初防衛か2階級制覇か

 昨年12月にリアム・パロ(オーストラリア)を攻略して戴冠を果たしたIBF世界スーパー・ライト級王者のリチャードソン・ヒッチンス(27=アメリカ)が、IBF同級3位のジョージ・カンボソス(32=オーストラリア)の挑戦を受ける。ヒッチンスが初防衛を果たすのか、それとも元4団体統一世界ライト級王者のカンボソスが2階級制覇を成し遂げるのか。オッズは10対1、地元のヒッチンスが圧倒的有利と出ている。

初戦敗退に終わったリオ五輪 8年後にプロで頂点に

 ヒッチンスはハイチ出身の両親のもとアメリカのニューヨークで生まれ育った。テレビで見たフロイド・メイウェザー(アメリカ)の試合に感化され12歳でボクシングを始めた。国内のユース選手権やゴールデングローブ大会などで上位進出を果たしはしたが、そのたびにジャロン・エニス(アメリカ=前世界ウェルター級王者)やゲイリー・アントゥアン・ラッセル(アメリカ=現WBA世界スーパー・ライト級王者)、バージル・オルティス(アメリカ=現WBC暫定世界スーパー・ウェルター級王者)に表彰台を阻まれた。2016年夏、両親の出身国ハイチ代表としてリオデジャネイロ五輪に出場したが、このときも1回戦でラッセルと当たり敗退した。
 2017年3月にプロ転向を果たしたが、しばらくはリスクの少ない慎重なマッチメークが続いた。2020年あたりから骨のある相手との試合が組まれるようになり、2022年から2023年にかけてIBF北米王座、WBC米国王座、NABO北米王座を次々に獲得。昨年4月、29戦全勝(19KO)のグスタボ・レモス(アルゼンチン)とのIBF挑戦者決定戦も12回判定勝ちでクリアした。8ヵ月後、プエルトリコ遠征でパロに勝って現王座を手に入れている。身長178cm、リーチ188cmの恵まれた体格を生かした右のボクサー型で、中長距離で持ち味を発揮するタイプだ。19戦全勝(7KO)の数字が物語るようにパワーは平均の域を出ないが、左ジャブ、カウンターで合わせる右ストレートはスピードと切れがある。

カンボソスは4年前の輝きを取り戻せるか

 挑戦者のカンボソスはアマチュアで100戦(85勝15敗)を経験後の2013年5月にプロデビュー。マニー・パッキャオ(フィリピン)のスパーリング相手を務めるなどして地力をつけ、2019年には元世界王者のミッキー・ベイ(アメリカ)を破り、翌年にはIBF世界ライト級挑戦者決定戦も制した。2021年11月、圧倒的不利の予想のなかテオフィモ・ロペス(アメリカ)に挑戦。初回にダウンを奪って勢いづき、10回にはダウンを喫したが11、12回と踏ん張って12回判定勝ちを収め、WBA、WBC(フランチャイズ王座)、IBF、WBOと4本のベルトを獲得した。
 現時点ではこれがカンボソスが最も輝いた日といえる。初防衛戦でデビン・ヘイニー(アメリカ)に判定負けを喫して王座を失い、再戦でも完敗。昨年5月、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)とのIBF王座決定戦に臨んだが、引き立て役を務めることになってしまった(11回TKO負け)。今年3月、スーパー・ライト級転向初戦で12回判定勝ちを収め再起を果たしている。以前は軽快な動きを見せた時期もあったが、近年は気持ちを前面に出して戦うファイター型になっている印象が強い。戦績は25戦22勝(10KO)3敗。直近の5戦は2勝3敗と負け越している。

ヒッチンスが巧みに迎撃か

 アウトボクシングをベースにして戦うヒッチンスと、最近は正面突破型になっているカンボソス。長く速い王者の左ジャブが機能した場合、挑戦者は簡単には接近できないだろう。カンボソスがラフに突っ込んでかき回し、ヒッチンスを慌てさせることができれば勝機を見出せるかもしれないが、そのイメージは浮かんでこない。逆にヒッチンスの左ジャブで顔を跳ね上げられ、強引に前に出たところに右ストレートを合わせられるシーンが目に浮かぶ。ヒッチンスにとって現在のカンボソスは最も相性のいい相手といえるのではないだろうか。

<スーパー・ライト級トップ戦線の現状>


WBA:ゲイリー・アントゥアン・ラッセル(アメリカ)
暫定 :アレッサンドロ・リグチーニ(イタリア)
WBC:スブリエル・マティアス(プエルトリコ)
暫定 :イサック・クルス(メキシコ)
IBF   :リチャードソン・ヒッチンス(アメリカ)
WBO:テオフィモ・ロペス(アメリカ)


 2階級制覇を成し遂げているテオフィモ・ロペス(28=アメリカ)が最も実績と知名度があるが、このところ5試合続けて判定勝ちに留まっており、かつての生きの良さは感じられない。今年3月、ホセ・バレンスエラ(26=メキシコ/アメリカ)に勝ってWBA王者になったゲイリー・アントゥアン・ラッセル(29=アメリカ)は19戦18勝(17KO)1敗のサウスポーの強打者だが、1年前にWBC暫定王座決定戦でアルベルト・プエジョ(31=ドミニカ共和国)に競り負けており、まだ安定した評価を得るところまではいっていない。
同じことはWBC王者のスブリエル・マティアス(33=プエルトリコ)にもいえる。2023年2月にIBF王座を獲得したが、V2戦でリアム・パロ(29=オーストラリア)に12回判定負け。この7月、プエジョに競り勝ってWBCで返り咲きを果たしている。
パロに勝ってIBF王者になったリチャードソン・ヒッチンス(27=アメリカ)も評価を定める段階とはいえない。今回のジョージ・カンボソス(32=オーストラリア)戦でどんなパフォーマンスを見せるのか注目したい。
 こうして見てくるとラッセル、プエジョ、マティアス、そしてヒッチンス、パロは横並びといっていいかもしれない。この5人と、試合によって波があるWBC暫定王者のイサック・クルス(27=メキシコ)がロペスを追うかたちとなっている。7月にアルバニアで行われた決定戦でWBA暫定王座を獲得したアレッサンドロ・リグチーニ(37=イタリア)は、なぜ世界ランクに入っているのか首をかしげたくなる相手に勝っての戴冠だったため、真価は持ち越しとなっている。
 ランカー陣では24戦全勝(19KO)の平岡アンディ(29=大橋)、
2016年リオ五輪戦士のリンドルフォ・デルガド(30=メキシコ)に注目したい。

IBF世界ライト級挑戦者決定戦
アンディ・クルス対三代大訓

五輪金の「ダイヤモンド」に挑む日本王者

 IBF世界ライト級王者、レイモンド・ムラタラ(アメリカ)への指名挑戦権をかけて3位のアンディ・クルス(29=キューバ)と5位の三代大訓(30=横浜光)が対戦する。2021年に開催された東京五輪ライト級金メダリストでもある「Diamante(ディアマンテ=ダイヤモンド)」クルスに、日本王者の三代がどこまで迫れるか。
 クルスは五輪金のほか世界選手権でも3度の優勝実績を持つエリート中のエリートで、ライバルのキーション・デービス(アメリカ=東京五輪銀メダリスト、前WBO世界ライト級王者)には五輪や世界選手権などで4勝している。2年前にプロ転向後は5連勝(2KO)を収めている。現時点のKO率は40パーセントだが、世界挑戦経験者、元世界ランカーふたり、のちに世界挑戦する選手たちが相手だった点を考慮する必要があるだろう。ボクシングの完成度は高く、攻めて良し守って良しの万能型といえる。基本は右構えだが、左にスイッチしたこともある。
 三代はアマチュアで57戦(41勝16敗)を経験後、2017年3月にプロデビュー。6戦目に東洋太平洋スーパー・フェザー級王座を獲得し、昨年4月には日本ライト級王座を手に入れた。この王座は2度防衛中だ。基本に忠実な右のボクサーファイター型で、8年間に19戦17勝(6KO)1敗1分のレコードを残している。
 個々の戦力で勝るクルスが圧倒的有利であることは間違いない。三代は一矢報いることができるか。

◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆


エキサイトマッチ~世界プロボクシング
IBF世界S・ライト級タイトルマッチ
リチャードソン・ヒッチンス vs ジョージ・カンボソス

IBF世界ライト級挑戦者決定戦
アンディ・クルス vs 三代大訓

9/1(月)午後9:00 WOWOWライブWOD


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