WBO世界スーパー・ウェルター級王座決定戦 ザンダー・ザヤス対ホルヘ・ガルシア

22歳のスター候補が初の大舞台
曲者ガルシアに苦戦の可能性も
昨年3月にティム・チュー(オーストラリア)からWBO世界スーパー・ウェルター級王座を奪い、同時に空位になっていた同級WBC王座を獲得したセバスチャン・フンドラ(アメリカ)が、WBOの指示に背いてチューとの再戦を選択。そのためWBOは5月にフンドラの王座を剥奪した。これを受け今回の決定戦が行われる。1位のザンダー・ザヤス(22=プエルトリコ)が21戦全勝(13KO)、2位のホルヘ・ガルシア(28=メキシコ)が37戦33勝(26KO)4敗。次期スター候補と目されるザヤスが3対1で有利と見られているが、楽観視できないカードといえる。
期待に応えて順調に成長してきたザヤス
ザヤスはトップランク社とプロモート契約を結んで17歳でプロデビュー。慎重な育成プランが組まれるなか順調に勝利を重ね、3年前にはNABO、NABF北米王座を獲得し、昨年6月には元世界王者のパトリック・テイシェイラ(ブラジル)にも完勝した。今年2月には20戦全勝のスラワ・スポーマー(ドイツ)との世界ランカー対決にも9回TKO勝ちを収めている。やや決め手に欠ける傾向があるものの、まずは順調に成長曲線を描いてきたといっていいだろう。
直近の試合で五輪戦士を破ったガルシア
一方のガルシアは2013年1月に16歳でプロの世界に飛び込んだが、初10回戦を迎えるまでに20戦を要するなど歩みは比較的ゆっくりだった。世界挑戦経験者のカルロス・オカンポ(メキシコ)、元世界ランカーのエトウンディ・ウィリアムス(コートジボワール/ブラジル)らに敗れたが、この2年は8連勝(5KO)を収めている。特に世界ランカー対決となった今年4月のチャールズ・コンウェル(アメリカ)戦では元五輪戦士を相手に接戦を勝ち抜いており、大きな自信になったものと思われる。
スピードのザヤス 独特の角度でパンチを繰り出すガルシア
オッズは3対1でザヤス有利と出ており、周囲の期待度を考えるとまずは順当な数字といえそうだ。若さとスピードで勝るザヤスが序盤から主導権を握り、先に攻めては動いてポイントを重ねていく姿が想像できる。それが最も順当な予想ではないだろうか。
その一方、ゆったりしたテンポから独特のタイミングと角度で繰り出されるガルシアの左右フックに手を焼く可能性もある。ガルシアはスピードには欠けるが、相手にとっては戦いにくいタイプだけに、ザヤスが守勢にまわるような展開になると戴冠に黄信号が灯ることになりそうだ。
<TALE OF THE TAPE> 両選手のデータ比較表
ザンダー・ザヤス | ホルヘ・ガルシア | |
生年月日/年齢 | 2002年9月5日/22歳 | 1997年1月8日/28歳 |
出身地 | サンファン(プエルトリコ) | メキシコ |
アマ実績 | 2018年全米ユース選手権ウェルター級優勝 | |
プロデビュー | 2019年10月 | 2013年8月 |
戦績 | 21戦全勝(13KO) | 37戦33勝(26KO)4敗 |
KO率 | 62% | 70% |
身長/リーチ | 178cm/188cm | 183cm/ |
戦闘スタイル | 右ボクサーファイター型 | 右ボクサーファイター型 |
<スーパー・ウェルター級トップ戦線の現状>
WBA:テレンス・クロフォード(アメリカ)
暫定 :ヨエニス・テレス(キューバ)
WBC:セバスチャン・フンドラ(アメリカ) or ティム・チュー
暫定 :バージル・オルティス(アメリカ)
IBF :バカラン・ムルタザリエフ(ロシア)
WBO:空位 ※ザヤス対ガルシアで暫定王座決定戦
暫定 :テレンス・クロフォード(アメリカ)
このクラスの主役といえば4階級制覇王者のテレンス・クロフォード(37=アメリカ)だが、9月に2階級上のスーパー・ミドル級で4団体統一王者のサウル・カネロ・アルバレス(35=メキシコ)に挑むことになっている。
WBA暫定王者のヨエニス・テレス(25=キューバ)、WBC暫定王者のバージル・オルティス(27=アメリカ)らが台頭してきてはいるが、存在感を示すまでには至っていない。下の階級から上がってくるジャロン・エニス(28=アメリカ)とオルティスが対戦するプランが浮上しており、実現が待たれる。
元王者のジャック・クルカイ(38=エクアドル/ドイツ)を豪快な11回KOで斬って落とし、ティム・チュー(30=オーストラリア)を4度倒して3回TKOで下しているIBF王者のバクラム・ムルタザリエフ(32=ロシア)は体が大きくパワーもある。それだけに今後はさらにマッチメイクが難しくなりそうだ。
ランカーでは今回のWBO王座決定戦に出場するザンダー・ザヤス(22=プエルトリコ)とホルヘ・ガルシア(28=メキシコ)、長期ブランクから戦線復帰したキース・サーマン(36=アメリカ)、3度目の世界挑戦を待っているエリクソン・ルビン(29=アメリカ)らに注目したい。
WBC世界フェザー級暫定王座決定戦
ブルース・カーリントン対マテウス・ヘイタ
スピードで圧倒したいカーリントン
ヘイタはナミビア"5人目"を狙う
WBC王者のスティーブン・フルトン(アメリカ)がスーパー・フェザー級での世界挑戦を画策しており、今後の防衛戦プランが微妙になっている。それを受けて設けられる暫定王座の決定戦。1位のブルース・カーリントン(28=アメリカ)が15戦全勝(9KO)、11位のマテウス・ヘイタ(27=ナミビア)が14戦全勝(9KO)。全勝同士の対決だが、スピードとパンチの切れで勝るカーリントンの圧倒的有利は不動だ。
アマチュアを経て2021年10月にプロデビューしたカーリントンは右のボクサーファイター型で、最大の武器はスピードだが、左フックを中心にパンチ力もある。井上尚弥(大橋)のフェザー級転向を前提に対戦を呼びかけていたが、井上の転級プランが先延ばしになっており肩透かしをくらったかたちだ。
ヘイタはアフリカのナミビア出身で、14戦のうち13試合を自国で行ってきたため世界的には無名に近い存在といえる。世界的強豪との対戦は皆無だが、WBOアフリカ王座を獲得したことで15傑入りを果たした。右のボクサーファイター型だが、ガードも攻防のテンポも比較的ゆったりとしている。
スピードに大きな差があり、その利を生かしてカーリントンが序盤から主導権を握るものと思われる。両者の力量差は大きく、そのままカーリントンが一気に突っ走りそうだ。ヘイタが勝てばハリー・サイモン、パウルス・アンブンダ、パウルス・アンブンダ、ジュリアス・インドンゴに続いてナミビア5人目の世界王者誕生となるが、
その可能性は低い。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
エキサイトマッチ~世界プロボクシング
WBO世界S・ウェルター級王座決定戦
ザンダー・ザヤス vs ホルヘ・ガルシア
WBC世界フェザー級暫定王座決定戦
ブルース・カーリントン vs マテウス・ヘイタ
7/27(日)午前9:00頃~ 先行ライブ配信
7/28(月)午後9:00
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