WBO世界スーパー・フェザー級タイトルマッチ エマヌエル・ナバレッテ対チャーリー・スアレス

世界戦16度目のナバレッテ
挑戦者スアレスは2016年リオ五輪戦士
3階級制覇を成し遂げているWBO世界スーパー・フェザー級王者のエマヌエル・ナバレッテ(30=メキシコ)が、WBO1位にランクされるチャーリー・スアレス(36=フィリピン)の挑戦を受ける。これが16度目の世界戦となるナバレッテに対し、2016年リオデジャネイロ五輪戦士のスアレスは36歳にして初の世界挑戦となる。
3階級制覇の実績を持つナバレッテ
ナバレッテは2012年2月に17歳でプロデビュー。5連続1ラウンドKO勝ち後の6戦目に4回判定負けを喫したが、以後は勝利を積み重ね、2018年12月にはアイザック・ドグボエ(ガーナ/イギリス)を破ってWBO世界スーパー・バンタム級王座を獲得した。翌年5月にドグボエを返り討ちにすると8月、9月、12月、翌年2月と矢継ぎ早に防衛戦をこなすなど精力的に活動した。2020年にフェザー級、2023年にはスーパー・フェザー級でも王座を獲得し、3階級制覇王者の仲間入りを果たした。
ただ、スーパー・フェザー級では体格のアドバンテージがなくなったこともあり以前の勢いが感じられなくなり、ロブソン・コンセイサン(ブラジル)とのV2戦は引き分けに終わった。次戦ではベルトを保持したまま4階級制覇を狙ったが、格下と思われたデニス・ベリンチク(ウクライナ)に判定負け。再びスーパー・フェザー級に戻り、昨年12月には暫定王者のオスカル・バルデス(メキシコ)との団体内統一戦に臨み、6回KO勝ちを収めている。戦績は42戦39勝(32KO)2敗1分。
身長170cm、リーチ183cmのファイター型で、攻撃しながら構えを右から左、左から右に変えることが多い。体重を上げてきてからは攻防ともに雑な面が目立つようになっており、その点を不安視する声は少なくない。
五輪出場後30歳でプロに転向したスアレス
スアレスは28歳になる2016年8月にリオデジャネイロ五輪に出場。のちにプロで世界王者になるジョー・コルディナ(イギリス)にライト級1回戦で敗れたが、判定が割れる接戦だった。2019年1月、30歳でプロに転向し、ここまで18戦全勝(10KO)の戦績を残している。元世界ランカーのマーク・ジョン・ヤップ(フィリピン)、世界ランカーのポール・フレミング(オーストラリア)らを下し、フィリピン国内王座、IBFアジア王座、IBFインターコンチネンタル王座、WBCアジア王座などを獲得した実績を持っている。
プロでの経験値ではナバレッテに遠く及ばないが、スアレスはなかなかの実力者といっていいだろう。両ガードを高めに置いた構えからワンツーや逆ワンツーで飛び込み、大きな右フックやパワフルな左フックで攻め立てることが多い。勘の良さ、打ち終わりを突くスキルなどナバレッテを脅かす戦力を備えた選手といえる。
王者が馬力で押し切るか 挑戦者が効率的に迎撃するか
攻撃型のナバレッテがプレッシャーをかけながら変則的な間合いで攻め込み、スアレスが相手の打ち終わりを狙う展開になりそうだ。馬力で勝るナバレッテがラフな攻撃で押し切ってしまう可能性がある一方、挑戦者が王者の隙を突いて効率的に迎え撃ちポイントを重ねていく展開も考えられる。オッズは9対2、ナバレッテ有利と出ているが、そこまでの実力差はなさそうだ。
<エマヌエル・ナバレッテの全世界戦> 15戦13勝10KO1敗1分
2018年12月8日 | アイザック・ドグボエ (WBO世界スーパー・バンタム級王座獲得) |
〇12回判定 | |
2019年5月11日 | アイザック・ドグボエ | 〇12回TKO | 防衛1 |
2019年8月17日 | フランシスコ・デ・バカ | 〇3回KO | 防衛2 |
2019年9月14日 | ジャン・ミゲール・エロルデ | 〇4回TKO | 防衛3 |
2019年12月7日 | フランシスコ・オルタ | 〇4回KO | 防衛4 |
2020年2月22日 | ジェオ・サンティシマ | 〇11回TKO | 防衛5 |
2020年10月9日 | ルーベン・ビラ (WBO世界フェザー級王座獲得) |
〇12回判定 | |
2021年4月24日 | クリストファー・ディアス | 〇12回TKO | 防衛1 |
2021年10月15日 | ジョエト・ゴンザレス | 〇12回判定 | 防衛2 |
2022年8月20日 | エデュアルド・バエス | 〇6回KO | 防衛3 |
2023年2月3日 | リアム・ウィルソン (WBO世界スーパー・フェザー級王座獲得) |
〇9回TKO | |
2023年8月12日 | オスカル・バルデス | 〇12回判定 | 防衛1 |
2023年11月16日 | ロブソン・コンセイサン | △12回引分 | 防衛2 |
2024年5月18日 | デニス・ベリンチク (WBO世界ライト級王座決定戦) |
●12回判定 | |
2024年12月7日 | オスカル・バルデス | 〇6回KO | 防衛3 |
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
ナバレッテ | スアレス | |
生年月日/年齢 | 1995年1月17日/30歳 | 1988年8月14日/36歳 |
出身地 | メキシコシティ | サンイシドロ(フィリピン) |
アマ実績 | 2016年リオデジャネイロ五輪出場 | |
プロデビュー | 2012年2月 | 2019年1月 |
戦績 | 42戦39勝(32KO)2敗1分 | 18戦全勝(10KO) |
KO率 | 76% | 56% |
世界戦 | 15戦13勝(10KO)1敗1分 | |
獲得世界王座 | WBO Sバンタム級 WBO フェザー級 WBO Sフェザー |
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身長/リーチ | 170cm/183cm | 168cm/ |
戦闘スタイル | 右ファイター型 | 右ボクサーファイター型 |
ニックネーム | 「バケロ(カウボーイ)」 | 「King's Warrior」 |
<スーパー・フェザー級トップ戦線の現状>
WBA :ラモント・ローチ(アメリカ)
暫定 :アルバート・バティルガジエフ(ロシア)
WBC :オシャキー・フォスター(アメリカ)
IBF :空位
WBO :エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)
混戦模様の階級といえる。実績では3階級制覇のWBO王者、エマヌエル・ナバレッテ(30=メキシコ)がトップだが、この2年ほどは以前のような圧倒的な強さが見られず隙も多くなってきた印象だ。今回のチャーリー・スアレス(36=フィリピン)戦も楽な試合にはならないかもしれない。
地味な存在だったWBA王者のラモント・ローチ(29=アメリカ)は3月にWBA世界ライト級王者のジャーボンテイ・デービス(アメリカ)と引き分けて株を上げた。WBA暫定王者のアルバート・バティルガジエフ(26=ロシア)は2021年東京五輪フェザー級金メダリストで、プロでは12戦全勝(8KO)の戦績を残しているサウスポーだ。ローチとの団体内統一戦が実現することを期待したい。
WBC王者のオシャキー・フォスター(31=アメリカ)はスピードと防御技術が売りの右ボクサー型だが、最近は逞しさを増している。
ジョー・コルディナ(33=イギリス)を破ってIBF王者になったアンソニー・カカチ(36=アイルランド)はその王座を放棄し、独自路線を歩んでいる。カカチが返上して空位になった王座は5月28日、力石政法(30=大橋)とエデュアルド・ヌニェス(27=メキシコ)で争われる。試合は横浜で行われるため力石には地の利があるが、オッズは2対1でヌニェス有利と出ている。
このほか元IBF王者の尾川堅一(37=帝拳)、堤駿斗(25=志成)、波田大和(28=帝拳)ら日本勢が控えている。
IBF世界ライト級暫定王座決定戦
レイモンド・ムラタラ対ザウル・アブドゥラエフ
22戦全勝の「Danger」 vs 終盤に強い粘着型
オッズは18対5 ムラタラ有利
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が昨年5月にIBF王座を獲得後、活動を休止しているために設けられた暫定王座の決定戦。ランキングでは1位が空位で2位がザウル・アブドゥラエフ(31=ロシア)、3位のアンディ・クルス(キューバ)を挟んで4位にレイモンド・ムラタラ(28=アメリカ)という順になっている。しかし、主役が「Danger(危険人物)」のニックネームを持つムラタラであることは間違いない。
ムラタラはスピード、パワー、テクニックなど幅広い戦力を備えた右のボクサーファイター型で、過去には構えを左にスイッチして戦ったこともある。繰り出すパンチは右クロス、左フック、アッパー、左ボディブローなど多彩で、打ち出しのタイミングもいい。ただ、自分のテンポで戦うことが多いため不意打ちを食らってダウンを喫したこともある。このあたりが課題だが、次期チャンピオン候補であることは確かだ。戦績は22戦全勝(17KO)。
対するアブドゥラエフは2017年3月にプロデビューし、2年半後にはデビン・ヘイニー(アメリカ)とWBCの暫定王座を争ったが、一方的な展開のまま4回終了時点で棄権した。これがキャリア唯一の黒星だ(21戦20勝12KO1敗)。その後は元世界王者のデジャン・ズラチカニン(モンテネグロ)、元世界3階級制覇王者のホルヘ・リナレス(帝拳)、元世界王者のロジャー・グティエレス(ベネズエラ)らを連破。昨年10月にはアルゼンチンでIBF2位決定戦に臨み、ファン・ハビエル・カラスコ(アルゼンチン)に12回TKO勝ちを収めている。両ガードを高く揚げ上体を丸めた猫背の構えで対峙し、じわじわと迫っていくタイプだ。強打者のイメージはないが、パンチは硬そうだ。劣勢になっても粘り強く戦うことが多く、リナレス戦やカラスコ戦がそうだったように終盤になって逆転するなど勝負強い面がある。
スピードやパンチ力、瞬発力など見た目で分かる戦力ではムラタラが勝っており、オッズも18対5と出ている。アブドゥラエフの対応が遅れ早い段階でダメージを被るようだと中盤までに勝負が決する可能性もある。その一方、アブドゥラエフの左ジャブにムラタラが手を焼くようだと勝負は終盤までもつれるかもしれない。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
エキサイトマッチ~世界プロボクシング
WBO世界S・フェザー級タイトルマッチ
エマヌエル・ナバレッテ vs チャーリー・スアレス
IBF世界ライト級暫定王座決定戦
レイモンド・ムラタラ vs ザウル・アブドゥラエフ
5/12(月)午後9:00
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