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WBC米国・WBOインターナショナル ヘビー級タイトルマッチ ジャレド・アンダーソン対リヤド・メルウィー

近未来の王者候補 vs 元世界クルーザー級王者
体格とパワーの差を生かしアンダーソンが圧倒か

 16戦全勝(15KO)の快進撃を続ける近い将来の世界ヘビー級王者候補、ジャレド・アンダーソン(24=アメリカ)が、元WBA世界クルーザー級王者のリヤド・メルウィー(31=コートジボワール/ベルギー)を相手にWBC米国およびWBOインターナショナル ヘビー級王座の防衛戦に臨む。オッズは13対2、体格とパワーで大きく勝るアンダーソン有利と出ている。

主要4団体すべてで挑戦圏内にいるアンダーソン

 アンダーソンは身長193cm/リーチ199cm、体重110kg前後の大型選手で、パワーはもちろんのことスピードもある。2017年と2018年に全米選手権で優勝しているようにアマチュア経験がベースになっており、テクニックに関しても確かなものがある。距離とタイミングのいい右ストレートや左フックに加えボディブローも主武器のひとつだ。
 大手プロモート会社トップランク社の秘蔵っ子ということもありキャリア初期は慎重なマッチメークが施されてきたが、ここ2年ほどは対戦相手のレベルがアップ。昨年7月には元IBF世界ヘビー級王者のチャールズ・マーティン(アメリカ)と対戦するなどして経験値を上げてきている。そのマーティン戦はダウンを奪ったものの初の判定決着となったが、大差でジャッジ三者の支持を得た。現在はWBO4位をはじめWBCとIBFで5位、WBAで13位にランクされている。

ヘビー級転向4戦目のメルウィー

 メルウィーはアフリカのコートジボワール出身で、現在はベルギー国籍を取得して同国の首都ブリュッセルに住んでいる。20歳のときにベルギーでプロデビューし、2016年5月にクルーザー級のWBAインターコンチネンタル王座を獲得して世界15傑入りを果たした。2年後、WBA同級暫定王座決定戦に出場したが、アルセン・グーラミリアン(アルメニア/フランス)に11回TKOで敗れた。これがプロ25戦目で初の黒星だった。
 2019年10月、再びWBA同級暫定王座決定戦に出場し、今度はイムレ・ゼロ(ハンガリー)に7回KO勝ち、戴冠を果たした。正王者に昇格後に初防衛も果たしたが、のちに王座を返上してヘビー級に転向する道を選んだ。昨年5月、同じクルーザー級から転向してきたケビン・レリーナ(南アフリカ)に12回判定負けを喫したが、7ヵ月に2016年リオデジャネイロ五輪金メダリストのトニー・ヨカ(フランス)に競り勝って再起を果たしている。
 カウンターや相手の打ち終わりを突くなどスキルに長けているが、身長181cm、体重105kg前後とヘビー級ではサイズ不足の印象は拭えない。34戦32勝(26KO)2敗。

アンダーソンの豪快なKO勝ちに期待

 アンダーソンがプレッシャーをかけながら距離を潰しにかかり、メルウィーがカウンターアタックを狙うという展開になりそうだ。両者の体格やパワーの差を考えると番狂わせが起こる可能性は低いといえる。アンダーソンの勝利を前提にポイントを絞ってみると、防御技術の高いメルウィーをどう詰め、ダウンからKOに繋げるかという試合になりそうだ。

<ヘビー級トップ戦線の現状> ※2024年5月15日時点  


WBAスーパー:オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
WBA    :マヌエル・チャー(シリア/ドイツ)
WBC    :タイソン・フューリー(イギリス)
IBF       :オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
WBO    :オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
WBO暫定  :ジョセフ・パーカー(ニュージーランド)

 2度の延期を経て実現するWBC王者のタイソン・フューリー(35=イギリス)とWBA・IBF・WBO王者のオレクサンダー・ウシク(37=ウクライナ)の4団体王座統一戦。勝者が天下人であることは間違いないが、年齢からみて3年あるいは5年の在位は考えにくいところだ。
 元王者のアンソニー・ジョシュア(34=イギリス)はウシクに連敗して無冠になってからは4連勝(3KO)と調子を上げてきているが、致命的ともいえる打たれモロさがあり、長期スパンでの期待は難しい。アメリカの威信を背負ってきた元WBC王者のデオンテイ・ワイルダー(38=アメリカ)は2020年以降、フューリー戦の連敗を含め4戦1勝3敗と厳しい状況に追い込まれている。次戦で前WBO暫定王者のツァン・チレイ(41=中国)との"敗者復活戦"に臨むが、どちらが勝っても多くを望むのは酷というものだろう。
 WBO暫定王者のジョセフ・パーカー(32=ニュージーランド)はワイルダー、ツァンに連勝して株を上げているが、過去にジョシュア、ジョー・ジョイス(38=イギリス)に敗れており、時代を背負うほどの存在とはいえない。
 となると、やはり若手の台頭を期待するしかなさそうだ。一番手として名前が挙がるのがジャレド・アンダーソンだ。16戦全勝(15KO)と戦績は完璧で、身長193cm/リーチ199cm、体重110キロ前後と体格も申し分ない。あとは経験値を含めた総合力の底上げと世界挑戦のタイミングだろう。
 WBA4位、WBC2位、IBF6位、WBO3位のフランク・サンチェス(31=キューバ)は25戦24勝(17KO)1無効試合という戦績を残している好選手だが、もう少しアピールするものが欲しい。
 むしろWBC12位、WBO15位にランクされる東京五輪金メダリストのバホディル・ジャロロフ(29=ウズベキスタン)の方が上位陣にとっては脅威かもしれない。身長201cm/リーチ206cm、体重112キロ前後の大柄サウスポーは14戦全KO勝ちと底を見せておらず、誰と組んでも興味深いカードといえる。


WBCシルバー ヘビー級タイトルマッチ
エフェ・アジャグバ対グイド・ビアネロ

スパーリング仲間が実戦で対決
オッズは6対1 アジャグバ有利

 WBC4位、IBFとWBOで11位にランクされるWBCシルバー ヘビー級王者のエフェ・アジャグバ(29=ナイジェリア)が、WBC35位のグイド・ビアネロ(29=イタリア)を迎えて2度目の防衛戦に臨む。両者とも2016年リオデジャネイロ出場者であり、プロに転向後はスパーリングで手合わせする仲でもある。互いの手の内は知り尽くしているものと思われる。「彼のことはよく知っているが、試合では容赦しない」と意気込むアジャグバがオッズでは6対1で有利とみられている。
 アジャグバは身長198cm/リーチ216cm、体重108キロ前後とバランスのとれた筋肉質の選手で、プロ転向後は20戦19勝(14KO)1敗の戦績を残している。2021年10月にフランク・サンチェス(キューバ)にダウンを喫して10回判定負けを喫したのが唯一の黒星で、以後は4連勝を収めている。相手をプレスしながら切り札の右ストレートを狙う強打者で、距離とタイミングが合ったときは爆発的な力を発揮する。
 ビアネロは2018年12月にアメリカのニューヨークでプロデビュー。ここまで14戦12勝(10KO)1敗1分のレコードを残している。昨年1月、ポイントでリードしていながら自身の負傷が原因でTKO負けを喫したのが唯一の敗北だ。その後は2連勝を収めている。こちらも身長198cm/リーチ201cm、体重110キロ前後と大柄だが、動きながら角度をつけて飛び込むなど機動力がある。
 アジャグバがプレッシャーをかけ、ビアネロが左右に動いて揺さぶりをかけながら飛び込む展開になりそうだ。右ストレートという絶対的な武器を持つアジャグバが有利であることは間違いないが、動きが直線的になりすぎると手数が減り後手にまわる可能性もある。

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