WOWOWニュース

4団体統一世界S・ミドル級タイトルマッチ サウル・カネロ・アルバレス対ハイメ・ムンギア

百戦錬磨のスター vs 43戦全勝の27歳
総合力で勝るアルバレスが7対1で有利

 4階級制覇を成し遂げている4団体統一世界S・ミドル級王者のサウル・カネロ・アルバレス(33=メキシコ)が、元WBO世界S・ウェルター級王者で現在はS・ミドル級でWBCとWBOで1位にランクされるハイメ・ムンギア(27=メキシコ)の挑戦を受ける。メキシコの戦勝記念日(シンコ・デ・マヨ)に合わせた注目ファイトだが、オッズは7対1でアルバレス有利と出ている。百戦錬磨のスターが牙城を守るのか、それとも43戦全勝(34KO)のムンギアが下剋上を起こすのか。

7月で34歳になるアルバレス 直近の4戦が判定決着

 アルバレスはアマチュアを経て2005年10月にプロの道に進んだが、当時は15歳3ヵ月だった。それから18年半が経ち、誰もが認める世界一のスター選手に成長した。24度の世界戦を含めた戦績は64戦60勝(39KO)2敗2分。20歳でS・ウェルター級王座を獲得したのを皮切りにミドル級、S・ミドル級、L・ヘビー級の4階級で世界王座を獲得し、いまも4本のベルトを携えている。対戦してきた相手も豪華だ。シェーン・モズリー(アメリカ)、フロイド・メイウェザー(アメリカ)、ミゲール・コット(プエルトリコ)、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)、セルゲイ・コバレフ(ロシア)、ドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア)など錚々たるメンバーが名を連ねている。年間1~3試合をコンスタントにこなし、近年はメキシコにとって特別な5月と9月(独立記念日)にリングに上がることが恒例行事のようになっている。国を代表するスター選手とあって報酬も桁違いで、2022年~2023年の1年間に1億1,000万ドル(当時のレートで約148億円)を稼ぎ出している。
 ただ、最近は気になる点も出てきている。直近の4試合がすべて判定決着となっているのだ。ビボルに12回判定負けしたあとゴロフキンに小差の判定勝ちまでは仕方ないとして、楽勝とみられたジョン・ライダー(イギリス)とジャーメル・チャーロ(アメリカ)にもダウンを奪いながら最後まで粘られているのである。その事実だけを捉えて衰えと断じることはできないが、7月に34歳になるだけに気になるところといえる。歴戦の疲れが出てきたとしても不思議はない年齢になったのだ。

アルバレスの「辞退」を機に幸運が舞い込んだムンギア

 ムンギアも16歳9ヵ月という若さでプロデビューした。初陣が2013年7月だから、アルバレスがメイウェザーと対戦する2ヵ月前のことだ。S・ライト級からウェルター級、さらにS・ウェルター級に体重を上げながらKOの山を築き、2018年3月までに28戦全勝(24KO)という戦績を残していた。このあと、ムンギアのボクサー人生は思いがけず急カーブを描いて好転する。きっかけがアルバレスだったというのは何かの因縁だろうか。
 当時、アルバレスは一度引き分けたゴロフキンとの再戦が決まっていたが、ドーピング違反が発覚したため対戦を見送ることになった。そこで代役として挙手したのがムンギアだった。しかし、イベントを管理するネバダ州アスレチック・コミッションは「ムンギアはミドル級での実績がない」としてゴロフキンへの挑戦を認めなかった。こうして一度は大舞台を諦めたムンギアだったが、直後に朗報が飛び込む。サダム・アリ(アメリカ)の持つWBO世界S・ウェルター級王座に挑む予定だったリアム・スミス(イギリス)が急病を理由に対戦を辞退したため、ピンチヒッターとして挑戦する機会を得たのだ。このチャンスを生かし、ムンギアはアリから4度のダウンを奪って4回TKO勝ち、21歳でセンセーショナルな戴冠を果たした。
 この王座は井上岳志(ワールドスポーツ)ら5人を相手に防衛をこなしたあと返上。
ミドル級でも強豪を連破し、昨年6月には正式にS・ミドル級に転向した。セルゲイ・デレビヤンチェンコ(ウクライナ)戦では最終回に値千金のダウンを奪って12回判定勝ち。今年1月にはライダーから4度のダウンを奪って9回TKOで仕留めてみせた。アルバレス相手に判定まで粘ったライダーを倒したことで自信を増しているものと思われる。

序盤から飛ばして主導権を握りたい挑戦者

 ムンギアにとってアルバレスは少年時代からの憧れだった選手だというが、試合となれば当然のことながら敵対感情をむき出しにして戦うことになるだろう。自慢のパワーと多彩なパンチ、耐久力やスタミナが大先輩にどこまで通じるか。
 7対1というオッズが出ているようにアルバレスが圧倒的に有利であることは間違いない。ある程度は挑戦者の攻撃を受け止めたうえで巧みな試合運びをみせてポイントを重ね、相手の集中力が切れるのを待って中盤から終盤にかけて勝負をかける可能性が高そうだ。番狂わせが起こるとしたら、ムンギアが序盤から飛ばして主導権を握り、そのまま押し切った場合だろうか。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>

  <アルバレス> <ムンギア>
生年月日 1990年7月18日/33歳 1996年10月6日/27歳
出身地 メキシコ・グアダラハラ メキシコ・ティファナ
アマチュア戦績 46戦44勝2敗(他説あり)  
プロデビュー 2005年10月 2013年7月
獲得王座 WBA,WBC,WBO S・ウェルター級
WBA,WBC,IBF ミドル級
WBA,WBC,IBF,WBO S・ミドル級
WBO L・ヘビー級
WBO S・ウェルター級
プロ戦績 64戦60勝(39KO)2敗2分 43戦全勝(34KO)
KO率 61% 79%
世界戦の戦績 24戦21勝(11KO)2敗1分 6戦全勝(3KO)
身長/リーチ 173cm/179cm 183cm/183cm
ニックネーム 「カネロ」(シナモン=赤毛)  
戦闘タイプ 右ボクサーファイター型 右ボクサーファイター型

<ウェルター級~L・ヘビー級の体重区分>

    アルバレス ムンギア
ウェルター級 147ポンド(約66.67キロ)以下    
S・ウェルター級 154ポンド(約69.85キロ)以下 王座獲得 王座獲得
ミドル級 160ポンド(約72.57キロ)以下 王座獲得  
S・ミドル級 168ポンド(約76.20キロ)以下 王座獲得  
L・ヘビー級 175ポンド(約79.37キロ)以下 王座獲得  

<S・ミドル級トップ戦線の現状>

WBAスーパー:サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBA    :デビッド・モレル(キューバ)
WBC    :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBC暫定  :デビッド・ベナビデス(アメリカ)
IBF       :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBO    :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)


 サウル・カネロ・アルバレスがケイレブ・プラント(31=アメリカ)を11回TKOで下して4団体の王座を束ねた2021年11月当時は、アルバレスの独走状態だったが、その後の2年半で状況は大きく変化した。WBA王者のデビッド・モレル(26=キューバ)とWBC暫定王者のデビッド・ベナビデス(27=アメリカ)が快進撃を続けながら総合力をアップさせ、アルバレスを脅かす存在になってきたのだ。特に体が大きくてパワフルなベナビデスはアルバレスとの対戦を熱望しており、ファンも頂上対決の実現を待っているところだ。
 しかし、なかなかアルバレス戦が実現しないベナビデスは1階級上のL・ヘビー級にも興味を示し、元王者のオレクサンダー・グボジーク(ウクライナ)とのWBC暫定王座決定戦に出場する予定になっている。
 今回、アルバレスに挑むハイメ・ムンギアは43戦全勝(34KO)の強打者で、下の階級から上げてきたとはいえ身長とリーチが183センチと体格で見劣りしてはいない。大番狂わせを起こすことができるか。
 もうひとり、26戦全勝(22KO)のカメルーン出身のクリスチャン・エムビリ(28=フランス)もアルバレスにとっては脅威になりつつある。このところカナダをベースにしてキャリアを積み上げているエムビリは戦績が示すとおりのスラッガーで、誰と戦ってもスリリングな試合になりそうだ。
 プロデビューから16連続1ラウンドKO勝ちを収めて脚光を浴びたエドガー・ベルランガ(26=アメリカ/プエルトリコ)は、以後は5試合連続でフルラウンドを戦っていたが、2月に6試合ぶりのKO勝ちを収め通算戦績を22戦全勝(17KO)に伸ばした。「いつでも誰とでも戦う」と威勢はいいが、あと2、3戦は骨のある相手とのテストマッチが必要か。

記事をシェアする
  • line

×

PAGE TOP