WOWOWニュース

WBO世界S・フライ級王座決定戦 田中恒成対クリスチャン・バカセグア

悲願の4階級制覇に王手

 ミニマム級、L・フライ級、フライ級とすべてWBOで世界3階級制覇を成し遂げてきた田中恒成(28=畑中)が、中谷潤人(M.T)が返上して空位になったWBO世界S・フライ級王座の決定戦でクリスチャン・バカセグア(26=メキシコ)と対戦する。11対2のオッズが出ているようにスピードとパンチ力、経験値など多くの部分で勝る田中が圧倒的有利と見られている。

10度の世界戦を経験している田中

 田中は日本最速となるプロ5戦目でWBO世界ミニマム級王座を獲得し、8戦目にはL・フライ級も制覇。さらに2018年9月には木村翔(青木→花形)を下してWBO世界フライ級王座も手中に収め、わずか12戦で3階級制覇を成し遂げた。
 3度の防衛後、2020年の大晦日には4階級制覇を狙って井岡一翔(志成)の持つWBO世界S・フライ級王座に挑戦。田中は初回から積極的に仕掛けて出たが、技術力の高い4階級制覇王者に巧みに迎え撃たれたすえ8回TKOで敗れた。
 以後、再起戦で石田匠(井岡)に10回判定勝ち、橋詰将義(角海老宝石)に5回TKO勝ちを収めてWBOアジアパシフィック王座を獲得。さらにWBO4位のヤンガ・シッキボ(南アフリカ)を10回判定で制するなどして再び1位まで戻ってきた。10度の世界戦を含む戦績は20戦19勝(11KO)1敗。

9連勝で大舞台を迎えたメキシコの「ロッキー」

 エリート街道を歩んできた田中とは対照的に、バカセグアは28戦22勝(9KO)4敗2分の戦績が示すように挫折を乗り越えて現在の地位まで這い上がってきた雑草派だ。経験値を含め現有戦力では田中に及ばないが、怖いのは2019年11月以降に9連勝(4KO)と勢いを増してきている点である。この間、WBO中南米S・フライ級王座を獲得している。
 勇敢な戦いぶりからつけられたニックネームは「ロッキー」。距離を潰してから繰り出す連打でオッズをひっくり返すことができるか。


WBC世界バンタム級タイトルマッチ
アレハンドロ・サンティアゴ対中谷潤人
3階級制覇をかけ「ドネアに勝った男」に挑戦

 フライ級とS・フライ級で戴冠実績のある中谷潤人(26=M.T)が、3階級制覇をかけてWBC世界バンタム級王座に挑む。相手は昨年7月、元世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン)に勝って戴冠を果たしたアレハンドロ・サンティアゴ(28=メキシコ)。オッズは6対1、中谷の圧倒的有利と出ている。

中谷は「年間最高KO」の勢いを持続か

 中谷はコロナ禍のなか2020年11月にジーメル・マグラモ(フィリピン)とのWBO世界フライ級王座決定戦を8回KOで制して初戴冠。2度防衛後に体重苦から王座を返上し、昨年5月にアメリカのネバダ州ラスベガスでアンドリュー・マロニー(オーストラリア)とのWBO世界S・フライ級王座決定戦に出場した。2度のダウンを奪うなど大量リードで迎えた最終12回、中谷は強烈な左を打ち込んで元世界王者をキャンバスに沈め、2階級制覇を果たした。
 この試合は世界の複数のメディアから「ノックアウト・オブ・ザ・イヤー(年間最高KO)」に選ばれるほどの衝撃度だった。
 4ヵ月後、中谷は攻撃型のアルヒ・コルテス(メキシコ)を迎えて凱旋防衛戦に臨み、大差の12回判定勝ちを収めた。3度のダウンを奪う圧勝だったが、試合前は体重調整に苦しんだと明かしている。約2ヵ月後にS・フライ級王座を返上したのは賢明な判断だったといえよう。
 こうしてバンタム級に転向し、いきなり王座挑戦となった。体格的には問題ないものの、実際には新階級でどれだけ自分のパワーと耐久力が通用するのかは蓋を開けてみないと分からない。戦績は26戦全勝(19KO)。

タフで執拗な叩き上げ王者サンティアゴ

 サンティアゴは2012年12月にプロデビューし、11年間に36戦28勝(14KO)3敗5分という戦績を残している。数字が与えるインパクトは少ないが、KO負けがなく引き分けの数が多い点などが気になる。これらのデータからも読み取れるように執拗に食い下がりながら戦うタイプで、スタミナもある。王座を獲得したドネア戦のほか2018年9月にはジェルウィン・アンカハス(フィリピン)の持つIBF世界S・フライ級王座に挑んで引き分けたこともある。
 さらに破竹の勢いだったゲイリー・アントニオ・ラッセル(アメリカ)と互角に渡り合い(10回判定負け)、世界挑戦経験者のダビド・カルモナ(メキシコ)に10回判定勝ち、アントニオ・ニエベス(アメリカ)には7回終了TKO勝ちを収めるなど経験値も高い。
 サンティアゴは「中谷のことはリスペクトしているが、私は勝つために十分なトレーニングを積んできた。自分が強いことを証明する」と自信を口にしている。
 長中短どの距離でも戦える長身サウスポーの中谷が、攻撃型のサンティアゴを相手にどんな戦い方を選択するのか注目したい。


バンタム級8回戦
ジョナス・スルタン対増田陸
増田がプロ5戦目で世界挑戦経験者に挑戦

 4戦3勝(3KO)1敗の日本バンタム級3位、増田陸(26=帝拳)が、2度の世界挑戦経験を持つWBO6位のジョナス・スルタン(32=フィリピン)に挑む。
 増田はアマチュアで66戦(52勝14敗)を経験後、2022年7月にプロデビュー。4戦目で日本バンタム級王座に挑んだが、堤聖也(角海老宝石)に小差の10回判定負けを喫した。これが再起戦となる。168㎝の身長に対し177㎝と長いリーチを生かした左ストレートが主武器だ。
 スルタンは25戦19勝(11KO)6敗の戦績を残しているファイターで、6年前にジェルウィン・アンカハス(フィリピン)、2年前にはポール・バトラー(イギリス)と世界王座を争った経験を持っている。いずれも明確な差をつけられて敗れたが、それらを含めてKO負けは一度もないタフガイでもある。フィリピンのナショナル王座やIBFインターコンチネンタル王座、WBOインターコンチネンタル王座を獲得した実績も持っている。
 プロ5戦目、しかも再起戦となる増田にとってはリスクの高いカードだが、勝ったときのリターンも大きな試合といえる。

記事をシェアする
  • line

(C)NAOKI FUKUDA

×

PAGE TOP