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WBA世界バンタム級タイトルマッチ 井上拓真対ジェルウィン・アンカハス

「過去イチの強敵」を迎え撃つ井上

 昨年4月、決定戦を制してWBA世界バンタム級王座を獲得した井上拓真(28=大橋)が、S・フライ級のIBF王者時代に9度の防衛をマークした実績を持つジェルウィン・アンカハス(32=フィリピン)を相手に初防衛戦に臨む。井上はアンカハスを「過去イチの強敵」と評して警戒している。

兄に続く4団体王座統一を目標に掲げる井上

 井上は2018年12月にWBC暫定世界バンタム級王座を獲得し、兄の井上尚弥(大橋)とともに兄弟世界王者となった。しかし、翌年11月に正規王者のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との団体内統一戦で12回判定負けを喫し、「暫定」の2文字を取り去ることはできなかった。その後、栗原慶太(一力)、和氣慎吾(FLARE山上)、古橋岳也(川崎新田)ら国内の実力者に大差をつけて勝利。昨年4月、リボリオ・ソリス(ベネズエラ)に12回判定勝ちを収め、兄が返上した王座のひとつを獲得した。
 「今後の目標は兄が手放した4団体王座を再び統一すること」と話している。その第一歩が今回のアンカハス戦というわけだ。もともと昨年11月に予定されていた試合だが、井上が肋骨を痛めたため延期された経緯がある。戦績は19戦18勝(4KO)1敗。

S・フライ級王座を9度防衛した実績を持つアンカハス

 挑戦者のアンカハスは2009年7月にプロデビューし、以後14年超の間に39戦して34勝(23KO)3敗2分の戦績を残している。世界戦だけで12戦(9勝6KO2敗1分)を経験し、自国フィリピンのほか中国、オーストラリア、イギリス、アメリカ、メキシコで世界戦のリングに上がっており、まさに世界を股にかけて活躍してきた選手といえる。2022年2月にフェルナンド・マルチネス(アルゼンチン)に12回判定負けを喫してIBF世界S・フライ級王座を失い、8ヵ月後の再戦も大差の判定で敗れた。それを機にバンタム級に転向し、再起戦では5回TKO勝ちを収めている。
 サウスポーのボクサーファイター型のカテゴリーに入るが、踏み込みながら左ストレートを打ち抜いてくる攻撃型で、返しの右フックも強い。「井上のことは兄(尚弥)と同じくリスペクトしているが、しっかり勝ってベルトをフィリピンに持ち帰る」と自信をみせている。
 戦前のオッズは2対1、井上有利と出ている。積極的に攻めて出るアンカハス、迎え撃つ井上という構図になりそうだ。


WBA世界フライ級タイトルマッチ アルテム・ダラキアン対ユーリ阿久井政悟

6度防衛中の全勝王者vs一撃必倒の右を持つ挑戦者

 2018年2月の戴冠から6年の長期にわたって6度の防衛を重ねているWBA世界フライ級王者のアルテム・ダラキアン(36=アゼルバイジャン/ウクライナ)に、一撃必倒の右ストレートを持つWBA1位、ユーリ阿久井政悟(28=倉敷守安)が挑む。硬軟織り交ぜた幅広いボクシングをする王者と、1ラウンドKO勝ちが9度もある阿久井という組み合わせだ。

ウクライナから2日半を要して来日

 ダラキアンはカスピ海に面したアゼルバイジャン(当時はソビエト連邦)の首都バクーの生まれだが、国内紛争が激化するなか家族でウクライナに移住した。13歳でボクシングを始め、220戦207勝13敗の戦績を残し、24歳でプロに転向。2018年2月の王座決定戦で元世界2階級制覇王者のブライアン・ビロリア(アメリカ)に12回判定勝ちを収めてWBA世界フライ級王座を獲得した。その年には2度の防衛戦をこなしたが、以後はコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などで思ったような活動ができず、2020年以降は4年間に3度しかリングに上がっていない。
 今回の試合に向けても「キーウ(ウクライナの首都)でトレーニングしている最中に空襲警報が鳴り、メキシコから来てくれたスパーリング・パートナーと一緒に防空壕に逃げ込んだことが何度もあった」と話す。「亡くなった知人もいて死生観が変わった」と明かしている。
 今回もポーランドのワルシャワまでバスで長距離移動し、そこから日本に着くまで2日半を要したという。それでも勝負に関しては「全力でぶつかってくる挑戦者を跳ね返す。それが世界王者」と自信をみせている。戦績は22戦全勝(15KO)。

"宝刀"右ストレートを持つ阿久井

 阿久井は2014年4月にプロデビューし、翌年の全日本新人王を獲得するなどして注目を集めた。日本ランク入りしたあと、のちに世界王者になる中谷潤人(M.T)に6回TKOで敗れたが、再起戦では同じくのちの世界王者、矢吹正道(LUSH緑)に1回TKO勝ちを収めている。次戦で世界ランカーに敗れたが、以後は日本フライ級王座を獲得、3度防衛するなど6連勝(3KO)と調子を上げている。
 戦績は21戦18勝(11KO)2敗1分。この数字だけで阿久井の全貌を読み取ることは難しいが、11KOのうち9度が1ラウンドKOというデータをみると特徴が浮かび上がってくる。しかも、KOのほとんどが右ストレートなのである。その一方、直近の4戦をみると10回判定勝ち、10回TKO勝ち、10回判定勝ち、10回判定勝ちと長丁場も経験している。右ストレートという切り札を持ち、かつ長期戦もこなせるようになり総体的にレベルアップしてきたといえる。
 足を使いながら前後左右に動きつつ瞬時に攻撃に移るダラキアン。左ジャブで煽りながら右ストレートを狙う阿久井。1ラウンドから緊迫した展開になりそうだ。

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(C)NAOKI FUKUDA

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