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WBC・WBO世界S・ウェルター級タイトルマッチ ティム・チュー対セバスチャン・フンドラ

聖地ラスベガス初登場のチュー
長身サウスポーのフンドラと2冠戦

 2023年に戴冠試合を含め3度の世界戦をこなしたWBO世界S・ウェルター級王者のティム・チュー(29=オーストラリア)が、元同級WBC暫定王者のセバスチャン・フンドラ(26=アメリカ)と対戦する。当初、チューは元WBAWBC世界ウェルター級王者のキース・サーマン(35=アメリカ)と155ポンド(約70.3キロ)契約12回戦を行う予定だったが、サーマンが上腕二頭筋を痛めて辞退。これを受け前座でWBC王座決定戦に出場予定だったフンドラがチューと対戦することになった。試合はチューの持つWBO王座の防衛戦と、WBC王座決定戦として行われる。

24戦全勝17KO――攻撃力に拍車がかかるチュー

 元WBA・WBC・IBF世界S・ライト級王者のコンスタンチン・チューの息子としても知られるチューだが、いまは名実ともに独り立ちしたといっていいだろう。特に昨年は3月にWBO暫定王座を獲得し、6月に初回電撃KOで初防衛、10月にはWBC暫定王者のブライアン・メンドサ(アメリカ)を下してV2に成功するなど充実した一年だった。望んでいたジャーメル・チャーロ(アメリカ)との対戦は実現しなかったが、このままチューが勝ち進んでいけばチャーロの方が歩み寄ってくる可能性もある。
 チューは身長174cm、リーチ179cmで69.8kgが体重上限のクラスでは決して大柄というわけではないが、最近は自信を増してきたからかプレッシャーをかけながら距離を潰し、左右フックや右アッパーなどを思い切り叩きつけることが多い。湧き上がる観客と一体になり、良い意味でチュー自身が攻撃的なボクシングに酔っている印象さえ受ける。戦績は24戦全勝(17KO)。
 そういえば父親も戴冠直後は自信満々で攻め込んでいたものだが、攻め急ぎが裏目に出て20戦目に伏兵に不覚の10回TKO負けを喫するという苦い経験をしている。あれから27年、息子のティム・チューはどこまで突っ走って行けるのか期待と楽しみを持って見ていきたい。

ヘビー級並みの身長とリーチを持つフンドラ

 前述のとおりフンドラは当日のイベントでメインよりも3試合早く出場予定だった。セルヒイ・ボハチュク(28=ウクライナ)とのWBC王座決定戦に臨むことになっていたため調整は問題ない。ボハチュクに勝ったあとでチューとの対戦を希望していたため、試合2週間を切った時点で飛び込んできた話は、まさに朗報だったはずだ。
 フンドラは197cmの長身サウスポーで、リーチも203cmと数字上はヘビー級並みといえる。このサイズで約69.8kgのS・ウェルター級で戦うわけだから、相手にとっては敬遠したくなるタイプといえる。しかもアウトボクシングだけではなく、懐に呼び込んでおいて長い腕を折り畳んで左右フック、アッパーで迎え撃つなど幅のある攻撃ができる強みを持っている。
 戦績は22戦20勝(13KO)1敗1分。犠牲者リストのなかには暫定王座決定戦で9回終了TKOで屈したエリクソン・ルビン(アメリカ)、初防衛戦で大差をつけられて敗れたカルロス・オカンポ(メキシコ)らが名を連ねている。唯一の黒星は昨年4月、ブライアン・メンドサ(アメリカ)に7回KOで敗れたものだが、左フックと右フックのフォローを浴びるその瞬間までは一方的にリードしていたものだ。今回が約1年ぶりの再起戦となる。

オッズは4対1 チューが中盤に本領発揮か

 チュー対サーマンのオッズは7対1でチュー有利だったが、チュー対フンドラは4対1でチュー有利と差が縮まっている。チューを相手に番狂わせを起こす可能性はサーマンよりもフンドラの方が高いと見られているのだ。勝負のカギとなりそうな点を挙げるならば、チューの側とすればインサイドに入って自慢の強打を打ち込めるかどうか、フンドラにしてみれば呼び込んで左右フック、釣り針のような左右アッパーを突き上げることができるかどうかということになりそうだ。耐久力に関してはチューが上回っていると思われるが、過去に不用意なパンチを浴びてダウンを喫したこともあるだけに序盤は慎重に出る可能性が高い。
 聖地ラスベガス初登場のチューが中盤あたりで本領を発揮するとみるが、前半で歯車を狂わされた場合は苦戦も考えられる。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較>


  チュー フンドラ
生年月日/年齢 1994年11月2日/29歳 1997年12月28日/26歳
出身地 シドニー(オーストラリア) ウェストパームビーチ(アメリカ フロリダ州)
プロデビュー 2016年12月 2016年9月
獲得世界王座 WBO S・ウェルター級 WBC S・ウェルター級暫定
世界戦の戦績 3戦全勝(2KO) 3戦2勝(1KO)1敗
通算戦績 24戦全勝(17KO) 22戦20勝(13KO)1敗1分
KO率 71% 59%
身長/リーチ 174cm/179cm 197cm/203cm
戦闘タイプ 右ボクサーファイター型 左ボクサーファイター型
ニックネーム 「The Soul Taker」 「タワーリング・インフェルノ」

S・ウェルター級トップ戦線>


WBAスーパー:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBA    :イスライル・マドリモフ(ウズベキスタン)
WBC    :空位
WBC休養  :ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
IBF       :空位
WBO    :ティム・チュー(オーストラリア)

 2年前、ジャーメル・チャーロ(33=アメリカ)が4本のベルトを束ねたが、1度も防衛することなく2階級上の4団体王者、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)に挑んで完敗(12回判定負け)。それを機に各団体は別々の方針を打ち出した。
 WBAは王座決定戦を制したイスライル・マドリモフ(29=ウズベキスタン)を王者に認定し、WBCはチャーロを休養王者にスライドさせたうえで、今回のティム・チュー対セバスチャン・フンドラを王座決定戦として承認。もともとフンドラと王座決定戦を行う予定だったセルヒイ・ボハチュク(28=ウクライナ)はブライアン・メンドサ(30=アメリカ)との暫定王座決定戦に回った
 IBFは4月にバフラム・ムラタザリエフ(31=ロシア)対ジャック・クルカイ(38=エクアドル/ドイツ)の決定戦を予定している。
 これより前、チャーロの選択にいち早く反応したのがWBOで、2023年春にチャーロへの挑戦が決まっていながら試合が流れたチューに決定戦出場の機会を与え、トニー・ハリソン(33=アメリカ)に勝ったことで暫定王者に認定。半年後、チャーロから王座を剥奪してチューを正王者に昇格させている。
 決定戦で新王者が誕生することを見越して数えれば5人の世界王者が乱立することになる。チャーロの勢いが完全に失せているうえ、今後の活動予定が出ていないことを考えると、すでにこのクラスの主役はチューに移っているといっていいかもしれない。そういった意味でもアメリカのラスベガスで行う今回のフンドラ戦は極めて重要な意味を持つ。ロシア出身の父親(コンスタンチン・チュー)がそうだったように、オーストラリアの人気者チューは世界のスターになれるのかどうか。結果はもちろんだが、内容も問われる試合といえる。

WBA世界S・ライト級タイトルマッチ
ローランド・ロメロ対イサック・クルス
「幸運の王者」ロメロの初防衛戦

クルスが9対4で有利

 昨年5月、イスマエル・バロッソ(ベネズエラ)に逆転の9回TKO勝ちを収めてWBA世界S・ライト級王座に就いたローランド・ロメロ(28=アメリカ)が、「ピットブル」闘犬というニックネームを持つ小柄なファイター、イサック・クルス(25=メキシコ)の挑戦を受ける。オッズは9対4、挑戦者有利と出ている。

真価が問われるロメロ

 ロメロはライト級時代にWBA暫定王座を獲得したことがあるが、統括団体の方針転換で2021年8月に暫定王座が消滅。代わりに1位にランクされ、2年前にはWBA世界ライト級王者のジャーボンテイ・デービス(アメリカ)に挑戦したが、6回TKOで敗れた。前半はデービスが様子見に徹したこともあって互角に渡り合っていたロメロだが、攻めていったところに左のカウンターを浴びてダウン。辛うじて立ち上がったものの試合を続けられる状態ではなくレフェリーにストップされるという内容だった。
 1年後、ロメロはS・ライト級転向初戦、しかも再起戦でWBA王座決定戦に出場。3回にダウンを喫するなど戦況は思わしくなかったが、9回にダウンを奪い返し、さらに連打でレフェリー・ストップに持ち込んだ。敗者陣営だけでなく観客や視聴者も「ストップが早すぎる」としてトニー・ウィークス・レフェリーが批判されたが、もちろん結果が覆るはずはない。
 それから10ヵ月、ロメロの真価が問われることになる。

クルス 2.3キロの増量が吉と出るか凶と出るか

 クルスは身長163cm、リーチ160cmと63.5キロのS・ライト級では際立って小柄といえる。その分、胸板は分厚く首や腕は太い。この体格はハンディキャップになりかねないが、相手にとっても戦いにくいことこのうえない。小さく構えた状態で肉薄し、距離が詰まると思い切りよく左右フックを振り回し、相手が前傾姿勢になるとアッパーを突き上げる。もちろんクルス自身が被弾することもあるが、アゴは頑丈だ。28戦25勝(17KO)2敗1分。
 ただ、2015年3月のプロデビューから9年、S・フェザー級、ライト級で戦うことが多く、S・ライト級での試合は2018年11月以来となる。2.3キロの増量がプラスに作用するとは限らない。

接近図る挑戦者 迎え撃つ王者という構図か

 クルスがフェイントをかけながら接近を図り、ロメロが前後左右に動きながら迎え撃つ展開が予想される。王者とすればロープやコーナーを背負った戦いは避けたいところだ。データや相性から見て挑戦者に分があることは間違いないが、ロメロも16戦15勝(13KO)1敗とパンチ力があるだけに目の離せない試合になりそうだ。

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