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WBCシルバー S・ミドル級タイトルマッチ ハイメ・ムンギア対ジョン・ライダー

飛び級2階級制覇への布石
42戦全勝のムンギアが元暫定王者と試運転

 元WBO世界S・ウェルター級王者で、現在は2階級上のS・ミドル級でWBO1位、WBC2位に名前を連ねるハイメ・ムンギア(27=メキシコ)が、S・ミドル級で暫定王座を2度獲得した実績を持つWBC8位、WBO9位、IBF10位のジョン・ライダー(35=イギリス)と対戦する。ムンギアの持つWBCシルバー王座がかかった試合だが、世界挑戦権をかけたサバイバルマッチでもある。オッズは10対3、若くてパンチ力で勝るムンギア有利と出ている。

ゴロフキン戦却下 ⇒ 代役出場で王座獲得のムンギア

 ムンギアは2013年7月、16歳9ヵ月でプロデビューし、13連続KO勝ちやWBC中南米Sウェルター級王座を獲得するなどして2018年1月には世界15傑入りを果たした。その年の5月、ゲンナジーゴロフキン(カザフスタン)との再戦が予定されていたサウル・カネロアルバレス(メキシコ)にドーピング問題が起こったことを受け、ムンギアは代役としてゴロフキンに挑戦する意思を示したが、試合を管理するネバダ州アスレティック・コミッションから「ミドル級での実績がない」として却下された経緯がある。そんな矢先、今度はサダム・アリ(アメリカ)の持つS・ウェルター級のWBO王座に挑む予定だったリアム・スミス(イギリス)が皮膚疾患のため欠場することになり、代役としてムンギアが起用された。その試合でムンギアは4度のダウンを奪って4回TKOで圧勝、21歳で王座を獲得したのだった。
 井上岳志(ワールドスポーツ)ら5人の挑戦を退けたムンギアは王座を返上してミドル級に転向。強豪を連破しながら2年ほど待機したものの挑戦の機会は訪れず、2年前にS・ミドル級に上げた。昨年6月には3度の世界挑戦経験を持つ強豪、セルゲイ・デレビヤンチェンコ(ウクライナ)に競り勝ち、WBCシルバー王座を獲得するとともに168ポンドでも十分にやれる力があることを示した。
 42戦全勝(33KO)の戦績が示すとおりのスラッガーで、デレビヤンチェンコとの激闘を勝ち抜いて一定以上の耐久力があることを証明している。身長、リーチとも183cmあり、2階級下から上げてきたにもかかわらず体格で見劣りすることもない。

暫定王座を2度獲得した「ゴリラ」

 ライダーはアマチュア(35戦30勝5敗)を経て2010年9月にプロデビュー。ビリー・ジョー・サンダース、ニック・ブラックウェル、ジャック・アーンフィールド、ロッキー・フィールディングといったイギリスのライバルに競り負けるなどして出世が遅れたが、2019年5月にはWBA暫定世界Sミドル級王座を獲得。半年後、カラム・スミス(イギリス)に惜敗して無冠になったが、2022年11月にはWBOで暫定王座に返り咲いた。
 こうした実績もあるが、ライダーの名前が広く知られることになったのは昨年5月のアルバレス戦によるところが大きいだろう。世界的なスター選手のホーム、メキシコに乗り込んで4団体王座に挑んだのだが、5回にダウンを喫して12回判定負けに終わった。大差をつけられて完敗だったことは事実だが、勝負を捨てずに最後まで持ち堪えた点は評価に値する。
 ライダーは身長175cmと76.2kgのクラスにしては小柄だが胸板は厚い。ニックネームは「ゴリラ」。距離を詰めて執拗に食い下がるサウスポーの好戦型だが、パンチの切れや破壊力には欠ける。

ムンギアの回転の速い連打にアドバンテージ

 短躯のライダーが左構えで前進し、ムンギアがそれを受け止めて応戦するパターンになりそうだ。ライダーは距離を詰めないと自分の仕事ができないが、問題は接近できるかどうか。ムンギアが中間距離でワンツーから左フック、そしてワンツーと矢継ぎ早にパンチを繋いできた場合、ライダーが前に出ながら後手にまわるという展開も考えられる。10対3のオッズが示すように、この階級に馴染んできたムンギアがシルバー王座を防衛しそうだ。

<S・ミドル級トップ戦線の現状>

WBAスーパー:サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBA    :デビッド・モレル(キューバ)
WBC    :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBC暫定  :デビッド・ベナビデス(アメリカ)
IBF       :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBO    :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)

 この階級の主が4階級制覇の実績を持つ4団体統一王者、サウル・カネロ・アルバレス(33=メキシコ)であることに異論を挟む者はいないだろう。昨年も5月にジョン・ライダー、9月にジャーメル・チャーロ(33=アメリカ)を退けて防衛を果たしている。しかし、2試合ともダウンを奪いはしたものの判定まで粘られており、ライダーからは「もうカネロは全盛期を過ぎたのだと思う」とコメントされたほどだ。それに同調する識者やファンは少なくないものと思われる。
 アルバレスの次戦が気になるところだが、5月にWBC世界ミドル級王者のジャモール・チャーロ(33=アメリカ)を相手に防衛戦を行うプランが出ているようだ。ふたりがミドル級の王者だったころの対決であれば垂涎のカードだったが、アルバレスがS・ミドル級に転向し、チャーロが心身のバランスを崩して2年以上のブランクをつくったあとのマッチアップとあっては機を逸した印象は拭えない。オッズが8対1と傾くのも当然だろう。
 むしろアルバレスに関しては、28戦全勝(24KO)のWBC暫定王者、デビッド・ベナビデス(27=アメリカ)、10戦全勝(9KO)のWBA王者、デビッド・モレル(26=キューバ)、あるいは26戦全勝(22KO)のクリスチャン・エムビリ(28=カメルーン/フランス)らとの対戦の方が興奮度は高まるのではないだろうか。もちろん42戦全勝(33KO)のハイメ・ムンギアとの対戦も興味深い。つまり、底を見せていない若くて勢いのある選手たちがアルバレス包囲網を敷いているという状況なのだ。アルバレスがどのタイミングで誰と戦うのか、そこで世代交代が起こるのかどうか興味は尽きない。
 このほか元IBF王者のケイレブ・プラント(31=アメリカ)、セルゲイ・デレビヤンチェンコ(38=ウクライナ)も力がある。

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