IBF世界フェザー級タイトルマッチ ルイス・アルベルト・ロペス対阿部麗也
自称「天才サウスポー」が初挑戦
変則技巧派強打者ロペスの壁を破れるか
日本とWBOアジアパシフィック王座を獲得し、昨年4月の挑戦者決定戦で元2階級制覇王者のキコ・マルチネス(スペイン)に完勝した阿部麗也(30=KG大和)が、ルイス・アルベルト・ロペス(30=メキシコ)の持つIBF世界フェザー級王座に挑む。舞台はアメリカのニューヨーク州ベローナ。中立国での大舞台となるが、7対1で王者有利のオッズが出ているように海外初試合の阿部にとって超えるべきハードルは決して低くはない。
元2階級制覇王者を下して指名挑戦権を獲得
阿部はアマチュアで15戦(7勝2KO8敗)を経験後、20歳のときにプロデビューした。ルーキー時代に2敗した以外は順調な歩みをみせ、2017年にはのちに世界ランク入りするジョー・ノイナイ(フィリピン)、世界挑戦経験者の細野悟(大橋)を下した。その後、2019年の日本フェザー級王座への挑戦で引き分け、続く同級王座決定戦で僅差の判定負けを喫するなど小さな壁にぶつかったが、2022年5月の丸田陽七太(森岡)戦で一気に日本王座とWBOアジアパシフィック王座を獲得して世界への希望を繋いだ。
昨年4月のマルチネス戦では元王者の強打を自慢のスキルで空転させ続け、ロペスへの指名挑戦権を手に入れた。
サウスポーのボクサーファイター型で、自ら「天才」と称するように目と勘の良さに自信を持っている。戦績は29戦25勝(10KO)3敗1分。
敵地で戴冠と初防衛を果たしたロペス
ロペスは2015年11月にプロデビュー。2019年2月にWBOインターナショナル フェザー級王座を獲得した。初のアメリカ遠征で結果を出したわけだが、続く初防衛戦でのちに世界挑戦するルーベン・ビリャ(アメリカ)に判定負けを喫して陥落。これで一度は勢いが衰えたが、2021年9月にトップランク(TR)社が売り出していたガブリエル・フローレス(アメリカ)に圧勝して評価を高めた。これを機にTR社と契約を交わすことになった。その流れでイギリスのリーズでジョシュ・ウォーリントン(イギリス)に競り勝ち、現在の王座を獲得した。2022年12月のことだ。
初防衛戦でベルファスト(イギリス 北アイルランド)に乗り込み、人気者のマイケル・コンラン(イギリス/アイルランド)に5回TKO勝ち。V2戦ではアメリカのテキサス州コーパスクリスティでジョエト・ゴンザレス(アメリカ)を判定で退けた。3度の世界戦はすべて自国以外で行っており、そういった意味でも逞しい王者といえる。
ニックネームの「El Venado(鹿)」の由来は、走るのが速かったからとも、飛びかかるように打つからとも言われている。上体を立たせた構えで相手と対峙し、前後左右の動きで揺さぶりながら右フック、左フック、あるいはアッパーを打っていく変則型で、31戦29勝(16KO)2敗の戦績以上にパンチ力はありそうな印象だ。
前半でリードを奪いたい挑戦者
ロペスが変則的な動きを交えながらプレッシャーをかけ、サウスポーの阿部が距離を保つために前後左右に動いて対応するという展開が考えられる。阿部は相手の正面に立たず、ロペスが出てきたタイミングにカウンターを合わせたりいなしたりして技術力の高さをアピールしてポイントをピックアップしたい。逆に王者の圧力に押されて後退し、ロープやコーナーに追い込まれる展開になると厳しい。できれば阿部は前半をリードして中盤を迎えたい。
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
ロペス | 名前 | 阿部 |
1993年8月21日/30歳 | 生年月日/年齢 | 1993年3月25日/30歳 |
メヒカリ(メキシコ バハカリフォルニア州) | 出身地 | 福島県(日本) |
15年11月 | プロデビュー | 13年6月 |
31戦29勝(16KO)2敗 | 戦績 | 29戦25勝(10KO)3敗1分 |
52% | KO率 | 34% |
3戦全勝(1KO) | 世界戦 | |
163㎝/169㎝ | 身長/リーチ | 172㎝/175cm |
右ボクサーファイター型 | 戦闘スタイル | 左ボクサー型 |
「El Venado(鹿)」 | ニックネーム | 「天才」 |
<日本のジム所属の世界フェザー級王者>
※西暦は王座獲得年
1 西城正三(協栄)
2 柴田国明(ヨネクラ)
3 越本隆志(FUKUOKA)
4 ホルヘ・リナレス(帝拳)
5 粟生隆寛(帝拳)
6 長谷川穂積(真正)
1968年
1970年
2006年
2007年
2009年
2010年
<フェザー級トップ戦線の現状>
WBA :空位
WBC :レイ・バルガス(メキシコ)
WBC暫定:ブランドン・フィゲロア(アメリカ)
IBF :ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)
WBO :ラファエル・エスピノサ(メキシコ)
WBA王座はリー・ウッド(35=イギリス)が返上したため空位になり、1位のオタベク・ホルマトフ(25=ウズベキスタン)と2位のレイモンド・フォード(24=アメリカ)が決定戦を行う。同じ日にルイス・アルベルト・ロペス対阿部麗也のIBFタイトルマッチが挙行されるということは、勝者同士が近い将来に王座統一戦を行うプランがあるとみるのが自然だろう。
WBC王者のレイ・バルガス(33=メキシコ)は2022年7月にマーク・マグサヨ(28=フィリピン)から王座を奪ったが、防衛戦を行わないまま昨年2月にS・フェザー級のWBC王座決定戦に出場、オシャキー・フォスター(アメリカ)に完敗した。3月に指名挑戦者のニック・ボール(26=イギリス)を相手に初防衛戦に臨む予定だ。
WBO王座は昨年12月、ロベイシ・ラミレス(30=キューバ)からラファエル・エスピノサ(29=メキシコ)に持ち主が変わった。身長185センチのエスピノサは24戦全勝(20KO)の戦績を残しているが、ラミレス戦では5回に痛烈なダウンを喫しており、まだ評価を定めるのは早そうだ。再戦が実現すればラミレスが返り咲く可能性も十分にありそうだ。
ランカーのなかでは前WBC・WBO世界S・バンタム級王者のスティーブン・フルトン(29=アメリカ)に注目したい。すでにWBA3位、IBF15位、WBO3位にランクされており、再起&前哨戦を挟んで勝負に出る可能性もある。2021年11月に王座統一戦で対戦して僅差で勝った相手、現WBC暫定王者のブランドン・フィゲロア(27=アメリカ)との再戦を見たいところだ。
3階級制覇を目指す亀田和毅(32=TMK)、堤駿斗(24=志成)、下町俊貴(27=グリーンツダ)、松本圭佑(24=大橋)らも挑戦の機会を狙っている。
WBA世界フェザー級王座決定戦
オタベク・ホルマトフ対レイモンド・フォード
若く能力の高いサウスポー同士の対決
パンチ力で勝るホルマトフにアドバンテージ
リー・ウッド(イギリス)がS・フェザー級に転向するために返上して空いた王座を1位のオタベク・ホルマトフ(25=ウズベキスタン)と2位のレイモンド・フォード(24=アメリカ)が争う。ホルマトフが12戦全勝(11KO)、フォードが15戦14勝(7KO)1分、無敗のサウスポー同士の対決となる。
ホルマトフはアマチュア時代、2016年11月にロシアで開催された世界ユース選手権フライ級準決勝で堤駿斗(当時は習志野高校⇒現在は志成ジム所属)に僅差の判定で敗れ3位に甘んじた。2021年8月にプロに転じ、KOの山を築いてきた。2年前にはIBF13位のアンドラニク・グリゴリアン(アルメニア)に12回判定勝ちを収め、昨年3月のWBA世界フェザー級挑戦者決定戦ではパトリック・ウォード(イギリス)を5回TKOで下している。12月の前哨戦ではサウスポーのメキシコ人選手に8回TKO勝ちを収めている。
フォードは17年、18年全米選手権で準優勝、18年全米ゴールデングローブ大会優勝などアマチュアで活躍後、2019年3月にプロに転向した。デビン・ヘイニー(アメリカ)、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、テオフィモ・ロペス(アメリカ)らの前座に出場して勝利を重ね、2022年11月にはWBA14位のサカリア・ルーカス(ナミビア)に8回KO勝ち。昨年4月の直近の試合では元世界王者のジェシー・マグダレノ(アメリカ)に12回判定勝ちを収めている。スピードのあるサウスポーから2度のダウンを奪って快勝しており、自信を深めているはずだ。
同じサウスポーで右ジャブが多いという共通点はあるが、その先の攻防パターンは異なる。ホルマトフが左ストレート、右フック、左アッパーなど比較的振りの大きなパンチを強く打ち込んでくるのに対し、フォードはディフェンスの意識も強いのか打っては離れるボクシングを展開することが多い。攻撃力で勝るホルマトフがオッズでは11対8で有利と出ているが、打ち終わりにアゴが空くことが多く防御面で不安も残る。ともに若く潜在能力が高いだけに予想の難しい試合といえる。
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エキサイトマッチ~世界プロボクシング IBF世界フェザー級タイトルマッチ ルイス・アルベルト・ロペスvs阿部麗也
3/4(月)午後9:00
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