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3団体統一世界L・ヘビー級タイトルマッチ アルツール・ベテルビエフ対カラム・スミス

KO率100%の鉄腕 vs 2階級制覇狙う長身パンチャー
オッズは3対1で王者有利だが...

 アマチュア時代に2度のオリンピック出場を果たし、プロでは8度の世界戦を含め19戦全KO勝ちという驚異的なレコードを残しているL・ヘビー級の3団体統一王者、アルツール・ベテルビエフ(38=ロシア/カナダ)が、元WBA世界S・ミドル級王者で現在はWBC世界L・ヘビー級1位にランクされるカラム・スミス(33=イギリス)の挑戦を受ける。この試合は2023年8月19日にカナダのケベックで行われる予定だったが、ベテルビエフが歯の治療後にアゴの骨の感染症にかかったため5ヵ月延期された経緯がある。オッズは3対1で王者有利と出ているが、スミスの右ストレート、左フックが波瀾を起こす可能性も十分にありそうだ。

故障が目立つベテルビエフ 気になるコンディション調整

 ベテルビエフはアマチュア時代にオリンピックではメダルに届かなかったが、3度出場した世界選手権では2009年に優勝、2007年には準優勝、2011年はオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)に阻まれてベスト8という結果を残している。2013年にカナダのGYM(グループ・イボン・ミシェル)とプロモート契約を交わしてプロに転向した。4年後、12戦目に空位のIBF世界L・ヘビー級王座を獲得し、V2後にWBC王者のオレクサンダー・グボジーク(ウクライナ)を下して王座を統一。さらに2022年6月にはWBO王者のジョー・スミス(アメリカ)にも2回TKOで圧勝、3本のベルトを束ねた。今年1月、WBO1位のアンソニー・ヤード(イギリス)戦は仕留めるまでに苦労したが、8回TKOで底力を見せつけた。
 19戦全KO勝ちという戦績どおりの強打者だが、単にパンチ力があるだけでなく相手を追い込むスキルにも長けている。ただ、肩や背中など故障が多いことでも知られ、試合間隔が1年以上空くことも珍しくない。今回も先の事情で約1年ぶりの実戦となる。38歳という年齢を考えると、コンディション調整が気になるところでもある。

身長191㎝/リーチ198㎝ 大柄な挑戦者スミス

 スミスもアマチュア経験者だが、こちらは英連邦やヨーロッパ、イギリス国内の大会への出場が中心で、ベテルビエフのような世界レベルの実績は残していない。2012年11月に22歳でプロデビューし、順調に白星を重ねていった。ポール、スティーブン、リアム(元WBO世界S・ウェルター級王者)の兄に続く「スミス4兄弟」の末弟として知られる、ルーキー時代から高い注目度と期待を背負って戦ってきた。
 WBCインターナショナル王座、EBU欧州王座など数々の地域王座を獲得後、2018年9月にジョージ・グローブス(イギリス)を7回KOで屠ってWBA世界S・ミドル級王者になり、アッサン・エンダム(カメルーン/フランス)、ジョン・ライダー(イギリス)を相手に2度の防衛を果たした。2020年12月には世界的なスーパースター、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)と対戦したが、12回判定で完敗、WBA王座を失った。これが30戦して唯一の敗北だ(29勝21KO1敗)。アルバレス戦後、L・ヘビー級に階級を上げて再起。2022年8月にはWBC同級2位のマチュー・ボードリーク(フランス)に4回KO勝ちを収め、指名挑戦権を手に入れた。
 2023年3月には前哨戦を予定していたが、自身の負傷でキャンセル。そして8月のベテルビエフ戦が延期になったため、今回が1年5ヵ月ぶりのリングとなる。
 191㎝の身長と198㎝のリーチを持つ大柄な右ボクサーファイター型で、右ストレート、左フックが主武器だ。

王者が攻め崩すか 挑戦者が巧みに迎撃か

 約3年前とはいえ、スミスが体格で劣るアルバレスのプレッシャーに抗うことができずにブロックした腕や肩にパンチを浴びて失点を重ねたイメージが強いためか、オッズは3対1でベテルビエフ有利と出ている。まずは順当な数字であろう。攻撃型のジョン・ライダー(イギリス)に苦戦したように圧力をかけて前に出てくるタイプを持て余す傾向があるだけに、さらにプレッシャーの強いベテルビエフが相手となったら抵抗しきれないのではないかという心配は当然だろう。
 では、スミスにチャンスがないのかといったらそういうわけではない。王者の正面に立たずに体格の利を生かして距離を保ち、そのうえで相手を突き放すことができれば勝機は広がりそうだ。ベテルビエフが飛び込んでくるタイミングに右ストレートや左フックを合わせることができればイギリスのファンが狂喜するシーンを作り出せるかもしれない。

<ベテルビエフの8度の世界戦 相手と結果、開催地>

2017年  
11月 エンリコ・コーリング(ドイツ) 〇12回KO @アメリカ・フレズノ
  (IBF世界L・ヘビー級王座獲得)
2018年  
10月 カラム・ジョンソン(イギリス) 〇4回KO @アメリカ・シカゴ 防衛①
2019年  
5月 ラディボヤ・カライジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ/アメリカ)
〇5回KO @アメリカ・ストックトン 防衛②
10月 オレクサンダー・グボジーク(ウクライナ) 〇10回TKO @アメリカ・フィラデルフィア 防衛③
  (WBC世界L・ヘビー級王座獲得=2団体王座統一)
2021年  
3月 アダム・デインズ(ロシア/ドイツ) 〇10回TKO @ロシア・モスクワ 防衛④
12月 マーカス・ブラウン(アメリカ)   〇9回KO @カナダ・モントリオール 防衛⑤
2022年  
6月 ジョー・スミス(アメリカ)     〇2回TKO @アメリカ・ニューヨーク 防衛⑥
  (WBO世界L・ヘビー級王座獲得=3団体王座統一)
2023年  
1月 アンソニー・ヤード(イギリス)   〇8回TKO @イギリス・ロンドン 防衛⑦


<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較>

ベテルビエフ

名前

スミス
1985年1月21日/38歳 生年月日/年齢 1990年4月23日/33歳

ロシア・ハサヴュルト
※現在はカナダ・モントリオール在住
(カナダ国籍)

出身地 イギリス・リバプール

08年北京五輪L・ヘビー級出場

09年世界選手権L・ヘビー級優勝

12年ロンドン五輪ヘビー級出場

アマチュア実績

10年英連邦大会ウェルター級2位

11年英国選手権ミドル級優勝

数百戦を経験(勝敗数不明) アマチュア戦績  
13年6月 プロデビュー 12年11月
IBF、WBC、WBO世界L・ヘビー級 獲得王座 WBA世界S・ミドル級
19戦全勝(19KO) 戦績 30戦29勝(21KO)1敗
100% KO率 70%
8戦全勝(8KO) 世界戦の戦績

4戦3勝(2KO)1敗

182㎝/185㎝ 身長/リーチ 191㎝/198㎝
右ファイター型 戦闘スタイル 右ボクサーファイター型
  ニックネーム 「Mundo」(世界)


<L・ヘビー級トップ戦線の現状>

WBAスーパー        :ドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア)
WBC・IBF・WBO:アルツール・ベテルビエフ(ロシア/カナダ)vs カラム・スミス(イギリス)

 2017年11月にIBF王座を獲得後、WBC王座、WBO王座をコレクションに加えたアルツール・ベテルビエフ(38=ロシア/カナダ)と、2016年5月にWBA暫定王座を獲得(のちに正王者に昇格)したあと7年半に12度の防衛をこなしているドミトリー・ビボル(33=キルギス/ロシア)のトップ並走が続いている。攻撃型のベテルビエフと基本に忠実で堅実なボクシングに定評のあるビボル。矛と盾という組み合わせだけに興味深いカードといえる。4団体王座統一という付加価値もつくだけに実現してほしい全勝の王者対決だ。
 追う一番手として名前が挙げられるカラム・スミス(33=イギリス)は今回の挑戦で主役の座を取って変わりたいところ。ベテルビエフを倒して戴冠を果たすようなことがあれば大きなスポットライトを浴びることになる。
 2016年リオデジャネイロ五輪L・ヘビー級銅メダリストのジョシュア・ブアチ(30=ガーナ/イギリス)は、プロ転向後の5年半で17戦全勝(13KO)をマークしている。主要4団体すべてで3位以内にランクされており、2024年は勝負の年になりそうだ。
 元WBC王者のオレクサンダー・グボジーク(36=ウクライナ)が2023年2月に約3年ぶりに戦線復帰を果たし、3連勝を収めて各団体でトップ10に戻ってきた。2019年10月のベテルビエフとの統一戦では10回TKOで敗れたが、9回まではジャッジ二者がグボジーク優勢と採点していたほどの実力者だけに、無視できない存在といえる。

【番組オフィシャルサイト】
https://www.wowow.co.jp/sports/excite/
【エキサイトマッチ公式Twitter】
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【WOWOWofficial YouTube】
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