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WBA世界S・ミドル級タイトルマッチ デビッド・モレル対セナ・アグベコ

王者の6連続KO防衛が濃厚
カネロ・アルバレスにアピールできるか

 プロ転向3戦目にWBA暫定世界S・ミドル級王座を獲得し、正王者昇格後に5連続KO防衛を果たしているデビッド・モレル(25=キューバ)が、同級10位にランクされるセナ・アグベコ(31=ガーナ)を迎えて6度目の防衛戦に臨む。もともとモレル対アグベコは今年4月に行われる予定だったが、アグベコのMRI画像に異常があるとしてネバダ州アスレチック・コミッションが試合を許可しなかった経緯がある。モレルは代役のヤマグチ・ファルカン(ブラジル)に142秒KO勝ちを収めてV5を果たし、一方のアグベコは異常がないことを証明して今回の試合が実現する運びとなった。
 アグベコは73パーセントのKO率を残しているだけに軽視できないが、総合力で勝るサウスポーのモレル有利は動かない。

3戦目で暫定王座を獲得した成長途上の25歳

 モレルは2016年世界ユース選手権やキューバ選手権で優勝するなど輝かしい実績を残して2019年8月にプロ転向を果たした。初戦で2勝6敗の相手に1回KO勝ちを収めると、次戦の8回戦では直近の10戦で4勝(4KO)4敗2分の中堅選手に2回KO勝ちと順調な船出をみせた。解せないのはこれだけの実績で翌年5月にモレルをWBA3位にランクした統括団体の判断だ。いや、いまでは「先見の明があった」ということになるのか。
 ランクインから3ヵ月後、モレルはレノックス・アレン(ガイアナ)に12回判定勝ちを収めてWBA暫定世界S・ミドル級王座を獲得する。4ヵ月後、初防衛戦に臨むことになったモレルは前日計量で体重オーバーの失態を犯したが、WBAはノンタイトル戦に変更して試合を挙行。救われたモレルは3回KO勝ちを収めて恩情に応えた形となったが、それだけでは終わらない。WBAは正王座が空いたため、のちにモレルを暫定王者から正王者に昇格させたのだ。
 WBAの行き過ぎた庇護もあって晴れて正王者となったモレルは、初防衛戦を1回KOで終わらせると、4回TKO、4回TKO、12回TKO、1回KOで5度の防衛を果たしている。世界的に名のとおった強豪が相手ではないものの実績を残して批判を封じたといえる。
 いまやモレルの才能と戦力に関して疑問を投げかける者は少ないはずだ。サウスポーからスピードのある左ストレートを放ち、右アッパー、右フックと繋げるコンビネーションはスムーズでダイナミックだ。それでいて伸びしろを残しているのだから末恐ろしい。

デビューから15連続KO勝ちを記録したアグベコ

 アグベコは元柔道選手で、2007年にはガーナ選手権優勝という経歴を持っている。ボクシングを始めたのは16歳のときで、19歳でプロに転向した。いきなり15連続KO勝ちを収めたが、ほとんどが負け越しの相手だった点は割り引いて考えなければなるまい。2014年2月、初めてガーナを離れてアメリカのリングに上がったが、4回TKO負けに終わった。それを機に主戦場をアメリカに移して活動している。2021年2月に世界ランカーのウラディミール・シシュキン(ロシア)に10回判定で完敗を喫した以外は順調に勝利を重ね、ここまで30戦28勝(22KO)2敗の戦績を残している。
 ガードは甘くなることが多いが、勘がよくスウェーで相手のパンチを外すケースが目立つ。主武器は打ち下ろすように放つ右ストレートだ。

モレルの圧勝か 右ストレートにかける挑戦者

 サウスポーのモレルが揺さぶりをかけながら煽り、アグベコが右ストレートで迎え撃つ展開になりそうだ。スピードやパンチの多彩さ、コンビネーションの速さなどで勝るモレルが序盤で主導権を握るようならば勝負は中盤を待たずに決するかもしれない。オッズも12対1で王者を支持しているほどだ。総合的な戦力に加え大舞台の経験に差があるだけに当然といえよう。同じ階級のスター選手、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)との対決に向けて勝利はもちろんのことアピールできる内容が求められる。
 番狂わせがあるとしたら、アグベコの右ストレートが命中した場合だろう。10人目のガーナ出身の世界王者が誕生する可能性は10パーセントといったところか。

<デビッド・モレル 世界戦全戦績>

2020年8月 レノックス・アレン     〇12回判定
   (WBA暫定世界S・ミドル級王座獲得 ※のちに正王者に昇格)
2021年6月 マリオ・カサレス      〇1回KO  防衛①
2021年12月 アランテス・フォックス   〇4回TKO   防衛②
2022年6月 カルビン・ヘンダーソン   〇4回TKO   防衛③
2022年11月 アイドス・イェルボシーヌリ 〇12回KO   防衛④
2023年4月 ヤマグチ・ファルカン    〇1回KO  防衛⑤


<ガーナ出身の世界王者 (9人)>

※西暦は最初の世界王座獲得年

デビッド・コティ フェザー級 1975年
アズマー・ネルソン フェザー級、S・フェザー級 1984年
ナナ・コナドゥ S・フライ級、バンタム級 1989年
アイク・クォーティ ウェルター級 1994年
アルフレド・コティ バンタム級 1994年
ジョセフ・アグベコ バンタム級 2007年
ジョシュア・クロッティ ウェルター級 2008年
アイザック・ドグボエ S・バンタム級 2018年
リチャード・コミー ライト級 2019年


<S・ミドル級トップ戦線の現状>

WBAスーパー:サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBA    :デビッド・モレル(キューバ)
WBC    :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBC暫定  :デビッド・ベナビデス(アメリカ)
IBF       :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBO    :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)

 実績、実力、知名度で4団体統一王者のサウル・カネロ・アルバレス(33=メキシコ)がトップを走っているが、直近の4戦がすべて判定決着になっている点が気になる。WBA世界L・ヘビー級王者のドミトリー・ビボル(32=キルギス/ロシア)に敗れ、ゲンナジー・ゴロフキン(41=カザフスタン)には小差で勝利。格下のWBO暫定王者、ジョン・ライダー(35=イギリス)と、2階級上げたジャーメル・チャーロ(33=アメリカ)からはダウンを奪ったものの倒し切れず、フルラウンドを戦うことになった。15歳からプロで戦い始めて18年。疲労の蓄積や経年劣化が表面化してきたとしても不思議ではない。
 そのアルバレスの斜陽をとらえるのは誰なのか。一番手に挙げられるのがWBC暫定王者のデビッド・ベナビデス(26=アメリカ)だ。若くて体も大きくパワーもある。スピードや細かなテクニックには課題があるものの馬力は魅力だ。11月26日には3階級制覇を狙って挑んできたデメトリアス・アンドラーデ(35=アメリカ)に6回TKO勝ちを収め、あらためてアルバレスを脅かすパワーがあることを証明してみせた。
 すでにWBA王座を5度防衛しているデビッド・モレル(25=キューバ)も楽しみな存在といえる。ベナビデスとは異なるタイプで、こちらはスピードとパンチ力が売りだ。サウスポーという点もアドバンテージといえよう。
 WBAとWBCで1位にランクされるクリスチャン・ムビリ(28=カメルーン/フランス)は2016年リオデジャネイロ五輪ミドル級ベスト8の実績を持ち、プロ転向後は25戦全勝(21KO)を収めている。ガードを固めて接近し、パワフルな左右フック、アッパーを顔面とボディに打ち分けるマイク・タイソン型のファイターだ。攻撃力があるだけに怖い存在といえる。
 42戦全勝(33KO)の元WBO世界S・ウェルター級王者、ハイメ・ムンギア(27=メキシコ)もそろそろ勝負に出たいところだ。ただ、今年6月のセルゲイ・デレビヤンチェンコ(38=ウクライナ)戦では最終12回にダウンを奪って僅差の判定勝ちを収めたが、課題も残した。もう少し試運転が必要か。
 デビューから16試合連続1ラウンドKO勝ちを収めて注目を集めたエドガー・ベルランガ(26=アメリカ)は、このところ5連続判定勝ちと以前の勢いはない。ただ、それなりの相手にそれなりの差をつけて勝っている点は評価に値する。まだ若いだけに勢いを取り戻してから勝負に出た方がよさそうだ。

【番組オフィシャルサイト】
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