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WBCシルバー ヘビー級タイトルマッチ エフェ・アジャグバ対ジョー・グッドオール

"未完の大器"は覚醒するか
アジャグバの右ストレートに期待

 身長198㎝、リーチ216㎝、体重約107㎏というバランスのとれた巨人、WBC世界ヘビー級7位、IBF13位のエフェ・アジャグバ(29=ナイジェリア)が、WBC29位にランクされるジョー・グッドオール(31=オーストラリア)を相手にWBC同級シルバー王座の初防衛戦に臨む。この試合を機に"未完の大器"アジャグバが覚醒するか注目したい。

左ジャブを生かしたいアジャグバ

 ナイジェリア出身のアジャグバは2016年リオデジャネイロ五輪に出場するなどアマチュアで活躍後、2017年3月にアメリカでプロデビューした。以来、今回の試合を含め20戦すべてをアメリカ国内で行ってきた。上体を立たせたアップライトの姿勢から左ジャブを飛ばして突き放し、右ストレートに繋げる攻撃パターンを持っている。直近の試合でもある8月のヤン・コソブツキー(カザフスタン)との世界ランカー対決でも左ジャブを有効に使い、相手の失格による反則負けを誘い出している。アジャグバの左ジャブに邪魔されて接近できないコソブツキーがストレスを溜め込み、意図的にローブローを繰り返すという展開だった。
 その試合を含め19戦18勝(13KO)1敗の戦績を残しているが、KO勝ちの多くは右ストレートによるものだ。裏返せば攻撃パターンが決まっていて相手に動きが読まれやすいということもいえる。唯一の敗北であるフランク・サンチェス(キューバ)戦はテクニックのある相手に動かれ、後手にまわったすえ7回にはダウンを奪われるという完敗だった(10回判定負け)。攻防の幅を広げることができればさらなる飛躍が期待できる。

踏み込んで左右フックを狙うグッドオール

 グッドオールは2018年4月にプロデビューし、引き分けを挟んで自国で7連勝(6KO)をマーク。昨年3月には同胞のティム・チューのアメリカ遠征の際に前座に出場、1回KO勝ちを収めた。しかし、その3ヵ月後、同国人のジャスティン・ヒュニに10回判定負けを喫している。
 いったんは後退を強いられたグッドオールだが、今年7月にはアメリカのオクラホマ州ショウニーで行われたジョージ・カンボソス(オーストラリア)の再起戦の前座に出場。半年前、アジャグバにジャッジ三者が96対94と採点する僅差の10回判定負けを喫したステファン・ショー(アメリカ)の再起戦の相手に選ばれたのだ。オッズは6対1、WBC33位のショー有利だったが、グッドオールは6回に連打を浴びせて番狂わせのTKO勝ちを収めた。これが最新試合で、戦績を12戦10勝(9KO)1敗1分に伸ばしている。こちらも197㎝と長身だが、アジャグバよりも射程が短く、自ら踏み込んで左右フックを狙うことが多い。

アジャグバの切り札 右ストレートが炸裂するか

 19対3のオッズが出ているようにアジャグバ有利は動かしがたいものといえる。左ジャブを有効につかって自分の距離を保ちながら右ストレートを打ち込むことができれば中盤あたりのKO勝ちが見えてくる。グッドオールは相手の左ジャブを掻い潜って中近距離の戦いに持ち込みたいが、簡単な作業ではないだろう。アジャグバの大砲が火を噴く可能性が高そうだ。

<ヘビー級トップ戦線の現状>

WBAスーパー:オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
WBA    :マヌエル・チャー(シリア/ドイツ)
WBC    :タイソン・フューリー(イギリス)
IBF       :オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
WBO    :オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
WBO暫定  :ツァン・チレイ(中国)

 3団体統一王者のオレクサンダー・ウシク(36=ウクライナ)とWBC王者のタイソン・フューリー(35=イギリス)の統一戦が12月に計画されていたが、先送りが確実になった。実現するとしても早くても来春になりそうだ。まだ衰えを見せてはいないとはいえウシクは1月で37歳になり、その半年後にフューリーは36歳になる。頂上対決の"賞味期限"は確実に迫ってきている。
 同じことは前WBC王者のデオンテイ・ワイルダー(38=アメリカ)、前3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(34=イギリス)にもいえる。ふたりとも現在は無冠だが、米英対決の機運が高まっているだけに実現が待たれる。このカードも1年以内がリミットか。
 さらに実績と知名度のある元3団体統一王者のアンディ・ルイス(34=アメリカ)、元WBO王者のジョセフ・パーカー(31=ニュージーランド)も年齢を重ねてきており、ベストのパフォーマンスができる時間は限られてきている。そんな中、40歳のWBO暫定王者、ツァン・チレイ(中国)は大健闘しているが、単にジョー・ジョイス(38=イギリス)との相性が良かったともいえる。今後、誰と戦いどんな結果を出すのか、もう少し様子を見たい。現時点では脇役に甘んじているが、以後の活躍によっては無視できない存在になる可能性もある。
 こうした一方、16戦全勝(15KO)のジャレド・アンダーソン(23=アメリカ)、東京五輪金メダリストでプロでは13戦全KO勝ちの大型サウスポー、バホディル・ジャロロフ(29=ウズベキスタン)が力をつけてきている。さらにエフェ・アジャグバ(29=ナイジェリア)、アジャグバに勝ったフランク・サンチェス(31=キューバ)も控えている。

NABF北米・WBOグローバル ライト級タイトルマッチ
レイモンド・ムラタラ対ディエゴ・トーレス

18戦全勝15KO vs 18戦全勝17KO
「危険人物」ムラタラの地域王座防衛戦

 今年5月、世界挑戦経験者のジェレマイア・ナカティラ(ナミビア)に電撃の2回TKO勝ちを収めて空位のライト級NABF北米、WBOグローバル王座を獲得したレイモンド・ムラタラ(26=アメリカ)の初防衛戦。アメリカのリング初登場となるディエゴ・トーレス(26=メキシコ)の実力は未知だが、18戦全勝(17KO)と高いKO率を誇るだけにスリリングな試合が期待できそうだ。
 ムラタラはホセ・ラミレス(アメリカ)、シャクール・スティーブンソン(アメリカ)、ジャニベク・アリムハヌリ(カザフスタン)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)らトップランク社のスター選手たちの前座に起用されてきたが、その多くで印象的な勝利を収めてきた。特に長期戦が予想されたナカティラ戦では左のカウンターをきっかけにチャンスをつかみ、一気に連打で仕留めてみせ評価を上げたところだ。現在はWBC、IBF、WBOで9位にランクされている。ただ、今年3月のウンベルト・ガリンド(アメリカ)戦では初回にダメージの残るダウンを喫するなど耐久力に課題を抱えており、まだ高い次元での安定感はない。
 対するトーレスは2019年8月のプロデビューから4年間で18連勝、17KOをマークしている。そのなかには元世界ランカーのネリ・サギラン(メキシコ)を58秒で屠った試合も含まれている。力量差のある相手との試合が多いためか序盤でのKO勝ちが多いが、それを割り引いてもパンチ力はありそうだ。
 ムラタラは左右に動きながら揺さぶりをかけ、機を見て飛び込んで回転の速いコンビネーションを顔面とボディに打ち分けるものと思われる。それに臆することなくトーレスがカウンターを狙えれば勝負の行方は分からなくなりそうだが、引いてしまうようだと一方的な展開になる可能性がある。

S・フェザー級10回戦
ヘンリー・レブロン対ウィリアム・フォスター

無敗の世界ランカー対決
オッズは11対8 フォスター有利

 18戦全勝(10KO)、WBO世界S・フェザー級8位、IBF9位のヘンリー・レブロン(26=プエルトリコ)と、17戦16勝(10KO)1無効試合の戦績を残しているWBA同級12位のウィリアム・フォスター(30=アメリカ)が拳を交える。地域王座もかかっていない試合だが、興味深い世界ランカー対決だ。
 レブロンは伊藤雅雪(伴流/横浜光)対クリストファー・ディアス(プエルトリコ)、伊藤対ジャメル・ヘリング(アメリカ)、ジョシュ・テイラー(イギリス)対テオフィモ・ロペス(アメリカ)など世界戦の前座カードに出場しながら18連勝を収めてきたサウスポーで、前戦に続き今回が2度目の10回戦となる。昨年6月には8回判定勝ちで空位のWBO中南米S・フェザー級王座を獲得している。
 対するフォスターも今年9月に9回TKO勝ちで空位のWBA中米S・フェザー級王座を獲得した試合に続き、これが2度目の10回戦となる。昨年1月、エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)に2対1の8回判定勝ちを収めた試合が光る。ニックネームは「The Silent Assassin(静かなる暗殺者)」。
 サウスポーのレブロン、178㎝の長身のフォスター。11対8でフォスター有利のオッズが出ているように接戦が予想される。

【番組オフィシャルサイト】
https://www.wowow.co.jp/sports/excite/
【エキサイトマッチ公式Twitter】
https://twitter.com/Excite_Match
【WOWOWofficial YouTube】
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