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S・ライト級10回戦 リンドルフォ・デルガド対カルロス・サンチェス

KO率74%のリオ五輪戦士デルガド
いよいよ世界戦線に参入

 WBC世界S・ライト級10位にランクされるリンドルフォ・デルガド(29=メキシコ)が、前々戦に続いて2度目の10回戦に臨む。2016年リオデジャネイロ五輪出場後にプロ転向して7年。19戦全勝(14KO)の戦績を残しているエリートが、いよいよ世界戦線に絡んできた。
 デルガドは2017年4月にプロデビューし、いきなり11連続KO勝ちを収めるなど順調に白星を重ね、2021年9月には世界挑戦経験者のミゲール・サムディオ(メキシコ)も2回TKOで下した。そのあたりから対戦相手のクオリティを上げ、連勝を19まで伸ばしてきた。直近のルイス・エルナンデス(メキシコ)戦では元WBC米大陸王者に左アッパーから右アッパーを浴びせて痛烈なダウンを奪い、4回KO勝ちを収めている(2023年11月)。
 エルナンデス戦がそうだったように、デルガドは自ら下がりながら距離とタイミングを計ることが多い。そして相手が入ってきたところを左フックやアッパー系のパンチで迎え撃つパターンを持っている。ずば抜けたスピードやパワーがあるわけではないが、攻防ともにバランスのとれた戦力を備えている。
 今回の相手、カルロス・サンチェス(28=メキシコ)も27戦25勝(19KO)2敗の好戦績を残している。こちらも2016年1月のプロデビューから22連勝(18KO)を収めて期待を集めたが、2年前にのちの世界ランカー、ペドロ・カンパ(メキシコ)に3回TKO負けを喫して勢いはストップ。再起して2勝後、現世界ランカーのスティーブ・クラゲット(カナダ)に10回判定で完敗を喫した。デルガド同様、均整のとれた戦力を持っているサンチェスだが、カンパとクラゲットに敗れているように壁を超えられないまま現在に至っている。ニックネームはEl Tiburon(エル・ティブロン=鮫)」。世界ランカーを相手に大暴れすることができるか。
 サンチェスが仕掛け、デルガドが迎え撃つパターンが予想される。
オッズは10対1でデルガド有利と出ているが、サンチェスが先手をとって前半リードで折り返すようだと勝負はもつれる可能性もありそうだ。

<S・ライト級トップ戦線の現状>


WBA:イサック・クルス(メキシコ)
WBA暫定:イスマエル・バロッソ(ベネズエラ)
WBC:デビン・ヘイニー(アメリカ)
IBF:スブリエル・マティアス(プエルトリコ)
WBO:テオフィモ・ロペス(アメリカ)

 デビン・ヘイニー(25=アメリカ)、テオフィモ・ロペス(26=アメリカ)といった知名度の高い選手ふたりが王座に君臨しているが、この両王者を含めて混戦状態といえる。ヘイニーは4月にアマチュア時代からのライバル、ライアン・ガルシア(25=アメリカ)に3度のダウンを喫して12回判定負け。相手が体重超過していたためWBC王座を失うことはなかったが、プロ32戦目にして初黒星を喫したことで評価は急落した。ガルシアのドーピング違反が取り沙汰されるなか、仮に結果が「無効試合」に変更されたとしても落ちた評価がすぐに戻ることはないだろう。
 ロペスは2021年11月にジョージ・カンボソス(30=オーストラリア)に不覚をとってWBCフランチャイズ王座を含む4本のベルトを失ったあとS・ライト級に転向。3戦目にジョシュ・テイラー(33=イギリス)を破ってWBO王座を獲得したが、その試合を含め直近の3戦はすべて小差の判定勝ちに留まっている。6月下旬に予定されるスティーブ・クラゲット(34=カナダ)とのV2戦で派手なKO勝ちが期待される。
 「ピットブル(闘犬)」というニックネームを持つWBA王者のイサック・クルス(25=メキシコ)、打撃戦を好むWBO王者のスブリエル・マティアス(32=プエルトリコ)は特徴がはっきりした個性派だが、主役というタイプではない。ただ、ヘイニーやロペスのような主役級を食う可能性は十分にあるだけに今後のマッチメークが注目される。
 6月中旬、17戦全KO勝ちのゲイリー・アントゥアン・ラッセル(27=アメリカ)が、同じサウスポーのアルベルト・プエジョ(29=ドミニカ共和国)とWBC暫定王座決定戦に臨む。ラッセルが有利と見られているが、22戦全勝(10KO)の元王者も侮れない。
 このほかレジス・プログレイス(35=アメリカ)、ホセ・ラミレス(31=アメリカ)、ローランド・ロメロ(28=アメリカ)の元王者たちに加え、WBO1位のアーノルド・バルボサ(32=アメリカ)、2016年リオデジャネイロ五輪にハイチ代表として出場してラッセルに敗れたIBF1位のリチャードソン・ヒッチンス(26=アメリカ)、ロペスに善戦したWBC1位のサンドール・マルティン(30=スペイン)、WBA1位のケネス・シムズ(30=アメリカ)、日本の平岡アンディ(27=大橋)らが控えている。

S・フェザー級8回戦
ロブソン・コンセイサン対ホセ・グアルダード

4度目の挑戦を目指す五輪金の"再起戦"

 自国ブラジルで開催された2016年リオデジャネイロ五輪ライト級金メダリストのロブソン・コンセイサン(35)が、4度目の世界挑戦に向けて"再起戦"に臨む。
コンセイサンは2021年9月にオスカル・バルデス(メキシコ)、2022年9月にはシャクール・スティーブンソン(アメリカ)、2023年11月にはエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)の持つS・フェザー級の世界王座に挑んだが、小差の12回判定負け、大差の12回判定負け、12回引き分けという結果に終わった。ナバレッテ戦では2度のダウンを喫しながら巻き返し、「勝っていた」と推す識者やファンも少なくなかったほどだ。今回勝てばオシャキー・フォスター(アメリカ)の持つWBC世界S・フェザー級王座への挑戦が具体化するだけに前哨戦の意味も持った試合となる。
 身長179cm、リーチ178cmの恵まれた体格から繰り出す左ジャブとチョップ気味の右ストレートが主武器の右ボクサーファイター型で、必要に迫られれば接近戦も厭わない。戦績は21戦17勝(8KO)2敗1分1無効試合。
 相手のホセ・グアルダード(25=メキシコ)は7年のプロ生活で18戦15勝(5KO)1敗1分1無効試合の戦績を残しているが、メキシコ国外で戦った経験は1度もなくローカルホープの域を出ない選手といえる。今回がアメリカのリング初登場となる。
 アマチュア時代には金メダル獲得を含め3度の五輪出場を果たし、プロでは3度の世界挑戦経験を持つコンセイサンが圧倒的有利といえる。4度目の世界挑戦を見据え、3年間遠ざかっているKO勝ちがノルマといえそうだ。


ライト級8回戦
アブドゥラー・メイソン対ロナル・ロン

13連勝を狙う20歳の逸材メイソン

 2021年11月に17歳7ヵ月でプロデビューし、2年半に12戦全勝(10KO)をマークしている20歳のサウスポー、アブドゥラー・メイソン(アメリカ)が、19戦14勝(11KO)5敗の戦績を残している中堅どころ、ロナル・ロン(26=ベネズエラ)と対戦する。
 メイソンは身長175cmに対しリーチが188cmと長く、その恵まれた右腕を素早く伸ばして相手を牽制。続いてスピードと破壊力のある左ストレートを打ち抜く攻撃パターンを持っている。チャンス時には中近距離での打ち合いも辞さない。ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)やシャクール・スティーブンソン(アメリカ)らトップランク社のスター選手の前座に起用されることが多く、そのことからも期待の大きさがうかがえる。いまは潜在能力の高さが目立つが、経験値を上げていけば総合的な戦力そのものが大きく跳ね上がるはずだ。WBC26位にランクされているとはいえ、まだまだ先物買いの印象は拭えないが、名前を覚えておいて損はないだろう。
 相手のロンは元ベネズエラのナショナル王者だが、2018年12月に同王座を失った試合を含め直近の8戦は4勝(4KO)4敗と伸び悩んでいる。ここ2戦は連敗しており、メイソン戦が再起戦となる。
 メイソンのスピードとパワーに要注目だ。

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