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WBC世界ライト級王座決定戦 シャクール・スティーブンソン対エドウィン・デ・ロス・サントス

技巧派 vs 強打者 サウスポー対決
スティーブンソンの3階級制覇が濃厚

 4団体統一世界ライト級王者のデビン・ヘイニー(アメリカ)が1階級上のS・ライト級でWBC王者のレジス・プログレイス(アメリカ)に挑戦することが決定。これにともないWBCはヘイニーを"休養王者"にスライドさせ、1位のシャクール・スティーブンソン(26=アメリカ)と2位のフランク・マーティン(アメリカ)に王座決定戦を行うよう命じた。ところが最終段階でマーティンが対戦を渋り、交渉は決裂。こうした流れのなかで6位のエドウィン・デ・ロス・サントス(24=ドミニカ共和国)にチャンスがまわってきたという経緯がある。スティーブンソン対マーティンの全勝対決も興味深いが、技巧派のスティーブンソンと82パーセントのKO率を誇るデ・ロス・サントスの対戦はそれ以上に楽しみなカードといえるかもしれない。

リオ五輪銀メダル ⇒ プロで2階級制覇

 スティーブンソンは2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級決勝でロベイシー・ラミレス(キューバ=現WBO世界フェザー級王者)に惜敗して銀メダルに甘んじたが、トップランク社と契約してプロに転向してからは極めて順調に出世してきた。デビューから2年半後の2019年10月にWBO世界フェザー級王座を獲得すると、これを惜しげもなく返上。2021年6月にはWBO暫定世界S・フェザー級王座につき、4ヵ月後には正王者のジャメル・ヘリング(アメリカ)を手玉にとって10回TKO勝ち、「暫定」の2文字を取り去った。さらに昨年4月にはWBC王者のオスカル・バルデス(メキシコ)にも12回判定で圧勝、王座統一を果たした。
 ところがロブソン・コンセイサン(ブラジル)との初防衛戦を前に規定体重をつくることができず、17万ドル(当時のレートで約2,380万円)の罰金に加え2本のベルトを剥奪された。ちなみにこの試合のスティーブンソンの報酬は4億2,000万円だったと伝えられる。これを機にライト級に転向したスティーブンソンが今年4月、吉野修一郎(三迫)とWBC世界ライト級挑戦者決定戦を行い6回TKO勝ちを収めたのは記憶に新しいところだ。戦績は20戦全勝(10KO)。
 比較的広めのスタンスをとるサウスポーで、懐が深いうえに身のこなしが俊敏でハンドスピードもずば抜けているため、相手にとっては戦いにくいタイプといえる。ディフェンスに比べ攻撃力が高く評価されることは少ないが、ここという場面で打ち込むパンチはシャープだ。

14度のKOはすべて3回以内 即決型のデ・ロス・サントス

 思いがけず早くチャンスが巡ってきたデ・ロス・サントスは2018年8月にプロデビュー。ドミニカ共和国内で3年半に13連勝(12KO)を収めたが、2022年1月のアメリカ初遠征で14戦無敗のウィリアム・フォスター(アメリカ=現WBA世界S・フェザー級12位)に8回判定負けを喫した。これが唯一の黒星だ。
 再起戦で12戦全勝(11KO)のルイス・アコスタ(アメリカ)に2回KO勝ちを収めると、次戦では当時WBC世界ライト級9位のホセ・バレンスエラ(メキシコ/アメリカ)に3回KO勝ち、WBC米大陸王座を獲得した。この試合後、デ・ロス・サントスは敗者と入れ替わりに世界15傑入りを果たした。さらに今年7月、ジャロン・エニス(アメリカ)対ロイマン・ビリャ(ベネズエラ/コロンビア)のIBF暫定世界ウェルター級タイトルマッチの前座でジョセフ・アドルノ(アメリカ)に大差の10回判定勝ちを収めている。
 17戦16勝(14KO)1敗の戦績が示すとおりのサウスポーのハードパンチャーで、14度のKOはすべて3ラウンド以内という即決型でもある。特に踏み込んで打ち抜く左ストレート、返しの右フックが強いうえ相打ち覚悟とも思えるカウンターもあるため、相手にとっては危険度が高い選手といえる。

スティーブンソンが着々と加点か それとも...

 サウスポー同士のカードだが、スピードとスキルのスティーブンソン、パンチ力のデ・ロス・サントスという構図になる。8対1のオッズが出ているようにスティーブンソン有利は不動といえる。2年前、同じサウスポーのヘリング戦で見せたように中長距離から右ジャブで煽っておいて左ストレートというパターンに持ち込めればポイントを積み重ねることは難しくないだろう。デ・ロス・サントスが集中力を欠くようなことがあればスティーブンソンの中盤以降のストップ勝ちも考えられる。
 ただ、デ・ロス・サントスが踏み込んで放つ思い切りのいい左ストレートと右フックには最大限の警戒が必要だ。特にパンチのタイミングや軌道が読み切れない前半は要注意といえる。

<ライト級トップ戦線の現状>

WBAスーパー:デビン・ヘイニー(アメリカ)
WBA    :ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBC    :空位
WBC休養  :デビン・ヘイニー(アメリカ)
IBF       :デビン・ヘイニー(アメリカ)
WBOスーパー:デビン・ヘイニー(アメリカ)

 昨年、ジョージ・カンボソス(30=オーストラリア)に連勝して4団体王座に君臨することになったデビン・ヘイニー(24=アメリカ)と、WBAレギュラー王者のジャーボンテイ・デービス(28=アメリカ)がトップを並走し、この両雄と離れずにワシル・ロマチェンコ(35=ウクライナ)とシャクール・スティーブンソン(26=アメリカ)が追うという構図だ。実績ではロマチェンコがトップだが、来年2月で36歳になる点が気になる。若くて底を見せていないヘイニー、デービス、スティーブンソンとの争いは時間が経てば経つほど厳しいものになっていきそうだ。
 次期王者候補たちの台頭も著しい。デービスに善戦して実力を披露済みのファイター、イサック・クルス(25=メキシコ)、18戦全勝(15KO)のレイモンド・ムラタラ(26=アメリカ)、同じく18戦全勝(12KO)のフランク・マーティン(28=アメリカ)、29戦全勝(25KO)のウィリアム・セペダ(27=メキシコ)ら伸びしろを残した猛者がチャンスを待っている。さらに、東京五輪ライト級銀メダリストのキーション・デービス(24=アメリカ)も1、2年後には王座に接近してくるはずだ。今回、スティーブンソンとWBC王座を争うエドウィン・デ・ロス・サントス(24=ドミニカ共和国)もダークホースとして押さえておきたい。前4団体王者のカンボソスも巻き返しを狙っている。

WBO世界S・フェザー級タイトルマッチ
エマヌエル・ナバレッテ対ロブソン・コンセイサン

3階級制覇王者 vs 五輪金メダリスト
攻撃力で勝るナバレッテにアドバンテージ

 今年2月、WBO世界S・フェザー級王座を獲得し、S・バンタム級、フェザー級と合わせて3階級制覇を成し遂げたエマヌエル・ナバレッテ(28=メキシコ)が、2016年リオデジャネイロ五輪ライト級金メダリストのロブソン・コンセイサン(35=ブラジル)を迎えて2度目の防衛戦に臨む。世界戦12戦全勝(8KO)のナバレッテ、3度目の世界挑戦にかけるコンセイサン。オッズは9対1でナバレッテ有利と出ているが、接戦になる可能性もある。
 ナバレッテは2012年から33連勝中だが、9ヵ月前のリアム・ウィルソン(オーストラリア)とのWBO世界S・フェザー級王座決定戦では4回に痛烈なダウンを喫するなど危ない場面が見られた。3年間に3.6キロの体重増加が悪い方に出たかと思われたが、その試合を9回TKOで終わらせると、8月には元2階級制覇王者のオスカル・バルデス(メキシコ)に大差の12回判定勝ちを収め、改めて力のあるところを示した。完全にS・フェザー級に馴染んだかどうか、今回の試合ではっきりそうだ。
 コンセイサンは3度目の世界挑戦となる。2年前のバルデス戦は小差の判定負けだったが、コンセイサンを支持する関係者やファンも少なくなかった。1年後、シャクール・スティーブンソンに挑んだが、前日計量で失格した前王者に大差の判定で敗れた。完敗といえる内容だった。バッティングによる負傷で2回無効試合に終わった今年6月の再起戦を挟んで今回の試合に臨む。
 パンチ力をはじめとする攻撃力とプロでの経験値で勝るナバレッテが有利であることは間違いない。中長距離からテンポよく繰り出す回転の速い連打が標的をキャッチすれば中盤以降のKO、TKO勝ちも考えられる。その一方、身長179センチ、リーチ178センチと大柄な挑戦者を攻めあぐみ、噛み合わせが甘いままラウンドを重ねる可能性もある。その場合は終盤まで勝負がもつれそうだ。

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