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WBO世界S・ウェルター級タイトルマッチ ティム・チュー対ブライアン・メンドサ

親子世界王者 vs 「弾丸」と呼ばれるWBC暫定王者
総合力で勝るチューに大きなアドバンテージ

 今年3月にWBO暫定世界S・ウェルター級王座を獲得し、親子世界王者となったティム・チュー(28=オーストラリア)が、WBC暫定王者のブライアン・メンドサ(29=アメリカ)をホームに迎えて2度目の防衛戦に臨む。王者同士の対戦となるが、総合力で勝るチューに大きなアドバンテージがあるカードといえる。オッズは11対2の大差でチュー有利と出ている。

試合の2週間前に正王者に昇格

 元世界S・ライト級王者のコンスタンチン・チュー(ロシア/オーストラリア)の息子として知られるティム・チューは今年3月、元王者のトニー・ハリソン(アメリカ)に9回TKO勝ちを収め、WBO暫定世界S・ウェルター級王座を獲得し、親子王者という夢をかなえた。6月には初防衛戦を1回KOでクリアしている。前後してWBOは「9月30日までにWBO正王者(4団体統一王者)のジャーメル・チャーロ(アメリカ)と対戦すること」と命じたが、チャーロはS・ミドル級の4団体統一王者、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)への挑戦を選択。そのためWBOはアルバレス戦当日にチャーロのベルトを剥奪し、チューを正王者に昇格させた経緯がある。
 晴れてWBO正王者になったチューは23戦全勝(17KO)の戦績を残している強打者で、この3年ほどでさらに強くなった印象だ。話題性だけでなく実力の伴ったオーストラリアのスター選手といっていいだろう。

予想と劣勢を跳ね返して戴冠を果たしたメンドサ

 対するメンドサは24戦22勝(16KO)2敗の戦績を収めている。2019年以降、アルツール・ベテルビエフ(ロシア/カナダ)、エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)、エリスランディ・ララ(キューバ/アメリカ)らの世界戦の前座に出場して名前を売ってきた。チュー対テレル・ゲシェイ(アメリカ)の前座に起用され、5回TKO勝ちを収めたこともある。その一方、ホープのヘスス・ラモス(アメリカ)に大差の判定負けを喫するなど飛躍しきれない状態といえた。
 昨年11月、元世界王者のジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)に5回KO勝ちを収めて評価を上げ、今年4月には「タワーリング・インフェルノ」セバスチャン・フンドラ(アメリカ)の持つWBC暫定世界S・ウェルター級王座に挑戦するチャンスを得た。オッズは8対1で長身サウスポーのフンドラ有利。はたして暫定王者が着実にポイントを重ねていくという展開だった。ところが7回、メンドサは左フックでフンドラを腰砕けにさせ、そこに右フックをフォローして痛烈な逆転KO勝ちを収めてみせた。「La Bala(ラ・バラ=弾丸)」の異名を体現した勝利といえた。

総合力で勝るチューが主導権掌握か

 ここ3戦のメンドサの勢いと一発のパンチ力は侮れないが、それがチューの総合力を上回るとは思えない。パワーをはじめスピード、テクニック、経験値など多くの面でチューが上を行っているといえる。
 WBO王者が慎重に探りを入れながら前半で主導権を握り、徐々にペースを上げて引き離していく可能性が高そうだ。メンドサが集中力を欠くようだと中盤から終盤にかけてダウンシーン、あるいはKOシーンが見られるかもしれない。

<S・ウェルター級トップ戦線の現状>

WBAスーパー:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBC    :ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBC暫定  :ブライアン・メンドサ(アメリカ)
IBF       :ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBO    :ティム・チュー(オーストラリア)

 昨年5月、ジャーメル・チャーロ(33=アメリカ)がブライアン・カスターニョ(34=アルゼンチン)に10回KO勝ちを収めて4本のベルトを収集。いったんは天下が統一されたが、今年1月に予定されたティム・チュー(28=オーストラリア)とのWBOの指名防衛戦を負傷のため延期、キャンセルしたことで再び激動の時代に突入しそうな気配になってきた。対抗馬の一番手に挙げられるのがWBO王者になったチューだ。元世界S・ライト級王者を父に持つサラブレッドは話題性、スター性に加え実力も備えてきたうえ23戦全勝(17KO)と底を見せていない点も魅力だ。
 サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)の持つS・ミドル級4団体王座に挑んで完敗(12回判定負け)を喫したチャーロは試合後、「自分の階級に戻る」とコメントしたが、チューとの対戦に応じるかどうかは分からない。仮想オッズは3対2でチャーロ有利と出ているが、近況を考えればイーブンの予想が妥当だろう。
 「ハンマー」の異名を持つサウスポー、エリクソン・ルビン(28=アメリカ)が新鋭のヘスス・ラモス(22=アメリカ)との世界ランカー対決に競り勝ったが、今後に期待を抱かせるほどの内容とはいかなかった。もともと地力のある選手なので、あと1、2戦、力のある相手との試運転を見てみたいところだ。
 ラモスと並んで将来が期待されているザンダー・ザヤス(21=プエルトリコ)は17戦全勝(11KO)と順調に白星を伸ばしている。すでにWBOは3位にランクしているが、さすがに先物買いの印象は拭えない。WBC15位、IBF14位が現在の正しい位置といえよう。

フェザー級12回戦
サム・グッドマン対ミゲール・フローレス

次代のスター候補 vs 世界挑戦経験者
15戦全勝 25歳のグッドマンに注目

 S・ウェルター級のWBO王者、ティム・チュー(28)、クルーザー級のIBF王者、ジェイ・オペタイア(28)、バンタム級のWBO王者、ジェイソン・マロニー(32)に続き、オーストラリア現役4人目の世界王者候補として注目と期待を集めているサム・グッドマン(25)が、世界挑戦経験者のミゲール・フローレス(31=メキシコ)と対戦する。
 グッドマンはアップライトの構えからテンポよく左から右、右から左と打ち込んでくるボクサーファイター型で、直近の2戦はチューの世界戦の前座に出場している。元世界王者のTJドヘニー(アイルランド)、元暫定世界王者のライース・アリーム(アメリカ)に判定勝ちを収め、現在S・バンタム級ではIBFとWBOで1位、WBCで10位にランクされている。このまま強豪相手に内容の伴った勝利を重ねていけば井上尚弥(大橋)の対戦相手としてクローズアップされる可能性もある。
 フローレスはキャリア14年のベテランで、2019年11月にはWBA世界S・フェザー級のスーパー王座をかけてレオ・サンタ・クルス(メキシコ)と対戦した経験を持っている(12回判定負け)。再起戦でのちのWBA暫定世界フェザー級王者のエデュアルド・ラミレス(メキシコ)に5回TKO負けを喫してトップ戦線から脱落。直近の試合は昨年9月で、元3階級制覇王者のアブネル・マレス(メキシコ)と10回引き分けに終わっている。
 スピードやテクニックに加え地の利もあるグッドマンが有利であることは間違いない。オッズは10対1と出ているほどだ。顔面からボディと矢継ぎ早にパンチを打ち込んでくるグッドマンの攻撃に、4敗のうち3度がKO(TKO)負けと決して打たれ強くはないフローレスがどれだけ我慢できるか。

【番組オフィシャルサイト】
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ティム・チュー Getty Images

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