4団体統一世界S・ミドル級タイトルマッチ サウル・カネロ・アルバレス対ジャーメル・チャーロ

階級を超えた統一王者同士の対決
パワーのアルバレス チャーロはスピードで対抗か
4階級制覇の実績を持つ4団体統一世界S・ミドル級王者のサウル・カネロ・アルバレス(33=メキシコ)が、2階級下の4団体統一世界S・ウェルター級王者、ジャーメル・チャーロ(33=アメリカ)の挑戦を受ける。最初にニュースを目にしたとき、多くのファンが「ジャモール・チャーロの間違いでは?」と思ったはずだ。現にアルバレスとWBC世界ミドル級王者のジャモール・チャーロは対戦交渉のテーブルについていたと伝えられるから、実現していたとしても不思議はなかったのだ。
しかし、ジャモール・チャーロは「心身のコンディションが整わなかった」として辞退。こうしたなか双子の兄に代わってアルバレスと対戦することになったのが弟のジャーメル・チャーロというわけだ。予想外の"仰天マッチ"だが、階級を超えた統一王者同士の対決という付加価値がつく注目ファイトであることは間違いない。
身長で10㎝、リーチで6㎝ チャーロが上回る
この試合の最大の注目ポイントは両者の体格、体重にあるといっていいだろう。直近の試合の体重を比較してみるとアルバレスが75.6キロ、チャーロが69.2キロ。6.4キロの差がある。もともとアルバレスも初めて世界王座を獲得したのはS・ウェルター級だったが、それから12年半が経過している。ミドル級(約72.5キロ以下)からS・ミドル級(約76.2キロ以下)を制覇し、さらにL・ヘビー級(約79.3キロ以下)でも世界王者になっており、現在は76キロ前後がベスト体重と思われる。
これに対しウェルター級でプロキャリアをスタートさせたチャーロは2010年から主戦場をS・ウェルター級に定めてきた。2016年5月に獲得したWBC王座は4度目の防衛戦で失ったが、1年後に奪回。2020年にはWBA王座とIBF王座をコレクションに加え、昨年5月にWBO王者のブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)を10回KOで斬って落として4団体王座を統一した。遠くない将来にミドル級に進出するという噂もあったが、兄が支配している階級ということもあって実現しないままとなっていた。
興味深いのは、ベスト体重ではアルバレスの方が重いものの身長とリーチでは逆にチャーロが勝っている点である。アルバレスが身長173センチ/リーチ179センチなのに対しチャーロは183センチ/185センチと数値では上回っているのだ。両者が揃って会見した際に並んだ映像や写真を見ても明らかにチャーロの方が大きいことが分かる。
オッズは7対2 チャーロは左ジャブとスピードに活路
アルバレスはパワーを生かした戦いをするものと思われるが、これに対しチャーロはスピードとパンチの切れで対抗することになりそうだ。もしも早い段階でチャーロがアルバレスのプレッシャーに抗いきれなくなるようだと勝負は中盤を待たずに決する可能性がある。
一方、チャーロの勝利パターンを探る場合、スピードがカギになりそうだ。単に距離をキープするための左ジャブではなく、スピードを生かして自ら踏み込んで相手を突き放すような攻撃的なジャブを打つことができれば勝機は広がるものと思われる。左に続いて切れのある右ストレートを打ち込めればアルバレスを慌てさせられるだろう。昨年5月、ドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア)がアルバレスの前進を押さえ込んだ攻撃パターンが良きサンプルになりそうだ。
課題もある。体重増によってパワーは増すだろうが、生命線ともいえるスピードを維持できるかどうかという点だ。さらにカスターニョとの再戦以来、実戦は1年4ヵ月ぶりとなるが、2階級上で戦うためのコンディションを作れるかどうか。リング外の話になるが、WBOがチャーロの王座を剥奪する動きもある。それも含めチャーロにとっては"ぶっつけ本番"となることが多い試合になりそうだ。
ちなみにオッズはアルバレス有利で推移しているが、ウィリアムヒルでは7対2と意外に接近した数字となっている(9月13日時点)。
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
アルバレス | チャーロ | |
1990年7月18日/33歳 | 生年月日 | 1990年5月19日/33歳 |
メキシコ・グアダラハラ
|
出身地 |
アメリカ・テキサス州 |
アマチュア実績 | 05年ジュニア五輪3位 | |
46戦44勝2敗(他説あり) | アマチュア戦績 | 64戦56勝8敗 |
05年10月 | プロデビュー | 07年12月 |
WBA,WBC,WBO S・ウェルター級 |
獲得王座 | WBC,WBA,IBF,WBO S・ウェルター級 |
173センチ/179センチ | 身長/リーチ | 183センチ/185センチ |
63戦59勝(39KO)2敗2分 | プロ戦績 | 37戦35勝(19KO)1敗1分 |
62% | KO率 | 51% |
23戦20勝(11KO)2敗1分 | 世界戦の戦績 | 9戦7勝(6KO)1敗1分 |
「カネロ」 |
ニックネーム | 「アイアンマン(鉄人)」 |
右ボクサーファイター型 | 戦闘タイプ | 右ボクサーファイター型 |
ホセ&エディ・レイノソ親子 | トレーナー | デリック・ジェームス |
75.6キロ | 直近の試合の体重 | 69.2キロ |
<S・ミドル級トップ戦線の現状>
WBAスーパー:サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBA :デビッド・モレル(キューバ)
WBC :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBC暫定 :デビッド・ベナビデス(アメリカ)
IBF :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBO :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
4本のベルトを持つサウル・カネロ・アルバレス(33=メキシコ)が圧倒的な存在感を示している。すでにS・ミドル級で7度の世界戦を経験しており、この階級の主といっていいだろう。ただ、直近の3試合に限ってみた場合、WBA世界L・ヘビー級王者のドミトリー・ビボル(32=キルギス/ロシア)に12回判定負け、ゲンナジー・ゴロフキン(41=カザフスタン)に12回判定勝ち、ジョン・ライダー(35=イギリス)に12回判定勝ちと、KOから遠ざかっている点が気になる。30歳を超え、少しずつ陰りが見え始めてきた印象は拭えない。
一方でWBA王者のデビッド・モレル(25=キューバ)、WBC暫定王者のデビッド・ベナビデス(26=アメリカ)のようにパワーのある若手が台頭してきている。遠くない将来にアルバレス対モレル、アルバレス対ベナビデスの実現を期待したい。
このほか25戦全勝(21KO)のWBC1位、クリスチャン・ムビリ(28=カメルーン/フランス)、元WBO世界S・ウェルター級王者で42戦全勝(33KO)のハイメ・ムンギア(26=メキシコ)、3階級制覇を狙う32戦全勝(19KO)の技巧派サウスポー、デメトリアス・アンドレイド(35=アメリカ)ら個性派が控えている。さらに元IBF王者のケイレブ・プラント(31=アメリカ)、かつて16連続1ラウンドKO勝ちをマークして話題になったエドガー・ベルランガ(26=アメリカ)もいる。
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写真:AP/アフロ