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IBF世界バンタム級王座決定戦 エマヌエル・ロドリゲス対メルビン・ロペス

井上尚弥が返上したベルトの争奪戦
経験とスキルで勝るロドリゲスが返り咲きか

 今年1月、井上尚弥(大橋)が返上したバンタム級4団体王座のひとつ、IBFのベルトを元王者で現2位のエマヌエル・ロドリゲス(31=プエルトリコ)と3位のメルビン・ロペス(25=ニカラグア)が争う。若くて威力のある左フックを持つロペスを侮ることはできないが、経験とテクニックで勝るロドリゲスが王座返り咲きを果たす可能性が高い。

トンネル脱出 運を取り戻したロドリゲス

 ロドリゲスは2010年ユース選手権準優勝、同年ユース夏季五輪で優勝するなどアマチュアで182戦171勝11敗の戦績を残して19歳でプロデビュー。早くから世界王者候補として注目を集め、その期待に応え2018年5月にはIBF世界バンタム級王座を獲得した。初防衛戦では現WBO王者のジェイソン・マロニー(オーストラリア)を際どい判定で退けている。
 自信満々で臨んだのが2019年5月の井上尚弥戦だ。試合は階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」準決勝としてイギリスで行われた。初回、ロドリゲスは強気な姿勢を見せて井上を脅かしたが、長続きはしなかった。2回にWBA王者の井上の左フックを浴びてダウン。再開後、ボディを攻められて2度のダウンを追加されてKO負けを喫した。
 この敗戦でIBF王座だけでなく運も失ったのかロドリゲスは再起戦の相手が四転五転したすえ、レイマート・ガバリョ(フィリピン)に物議をかもす12回判定負けでWBC暫定王座を取り損ねた。次戦のゲイリー・アントゥアン・ラッセル(アメリカ)戦はWBA世界バンタム級暫定王座決定戦として行われたが、開始から16秒、バッティングで負傷してリングに横転(1回無効試合)。苦痛を堪える表情は気弱にも見えたものだ。
 こうして3試合連続で勝利を逃したロドリゲスだったが、昨年3月に1回KO勝ちで再起を飾ると、10月にはラッセルとの再戦で完勝してみせた。10回負傷判定勝ちという消化不良の結果ではあったが、初回からカウンターなどスキルで無敗のサウスポーを手玉にとり、8回には右ストレートのカウンターでKOに匹敵する痛烈なダウンも奪っている。この2戦でトンネルを出し、運も取り戻した印象だ。戦績は24戦21勝(13KO)2敗1無効試合。

7連続KO勝ちをマークしたこともあるロペス

 ロペスは30戦29勝(19KO)1敗という戦績を残しているが、ロドリゲスと比較すると強豪との対戦や実績面で見劣りしてしまう。WBC中南米王座、WBCユース王座、NABF北米王座などを獲得したことはあるが、2019年10月にはホセ・ベラスケス(チリ)との世界ランカー対決で9回逆転TKO負けを喫している。その後は8連勝と復調しているが、昨年12月の試合がジャッジの見解が2対1に割れる辛勝だった点が気になる。
 ロペスはサウスポーのボクサーファイター型で、踏み込みながら放つ左オーバーハンドや返しの右フックを主武器としている。無名相手とはいえ7連続KO勝ちを収めたこともあり、パンチ力は侮れない。

オッズは5対1でロドリゲス有利

 前戦でサウスポーのラッセルに圧勝したこともありロドリゲス有利は不動といえる。オッズも5対1と出ている。ロドリゲスが左ジャブで探りを入れながら主導権を握り、ロペスが出てくるタイミングに合わせて右のカウンターを狙うものと思われる。
 総合力で劣るロペスは序盤でペースを握りたい。右ジャブでリズムをとりながら左に繋げることができれば勝機は広がるはずだ。後手にまわる展開が続くようだとダメージが重なって中盤から終盤につかまる危険性があるだけに早めに勝負に出たい。

<バンタム級トップ戦線の現状>

WBA:井上拓真(大橋)
WBC:アレクサンドロ・サンティアゴ(メキシコ)
IBF   :空位
WBO:ジェイソン・マロニー(オーストラリア)


 今年1月、井上尚弥(30=大橋)が集めた4団体王座をすべて返上してS・バンタム級に転向。その後、4月にリボリオ・ソリス(41=ベネズエラ)との決定戦を制した弟の井上拓真(27=大橋)がWBA王座を受け継ぎ、5月にはジェイソン・マロニー(32=オーストラリア)がビンセント・アストロラビオ(26=フィリピン)に勝ってWBO王座を獲得。7月、ノニト・ドネア(40=フィリピン/アメリカ)との決定戦で判定勝ちしたアレクサンドロ・サンティアゴ(27=メキシコ)がWBC王者になった。
 今回、残る1席をエマヌエル・ロドリゲス(31=プエルトリコ)とメルビン・ロペス(25=ニカラグア)が争うわけだ。
 決定戦に出場したメンバーを見ると井上尚弥と対戦して敗れた選手が3人(マロニー、ドネア、ロドリゲス)もいる。いかに「モンスター」の存在感が大きく、かつ絶対的だったかということが分かる。
 3人の新王者に関しては評価を定める段階ではなく、しばらくは防衛戦の相手や結果を見ていく必要があるだろう。その先に井上拓真が言うように「4団体統一戦をやりたい」という方向性が出て来ることが理想だ。
 ランカー陣を見てみると、元IBF世界S・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(31=フィリピン)、ロドリゲスに敗れたゲイリー・アントゥアン・ラッセル(30=アメリカ)、レイマート・ガバリョ(27=フィリピン)ら力のある選手が控えている。
 日本人ランカーも多く、世界挑戦経験者の石田匠(31=井岡)、日本王者の堤聖也(27=角海老宝石)、元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(28=志成)、パンチ力のある栗原慶太(30=一力)、8戦全勝の西田凌佑(27=六島)らが大舞台に上がるチャンスを待っている状態だ。

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