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WBO世界S・フェザー級タイトルマッチ エマヌエル・ナバレッテ対オスカル・バルデス

3階級制覇王者 vs 2階級制覇王者
オッズは13対8でバルデス有利

 今年2月、リアム・ウィルソン(オーストラリア)との王座決定戦で9回TKO勝ちを収めて戴冠を果たしたエマヌエル・ナバレッテ(28=メキシコ)の初防衛戦。もともとオスカル・バルデス(32=メキシコ)とは2月に対戦する予定だったが、バルデスの負傷で先送りになった経緯がある。ともに強打者として知られており、3階級制覇王者のナバレッテが約82パーセント、2階級制覇の実績を持つバルデスが約72パーセントと高いKO率を誇る。打撃戦が期待されるカードだが、違う展開になる可能性もある。

KO負け寸前の窮地を脱して3階級制覇を達成

 ナバレッテはデビュー6戦目に4回判定負けを喫したが、それから11年間は32連勝(26KO)中だ。この間、WBOのS・バンタム級、フェザー級、そしてS・フェザー級の王座を獲得しており、世界戦だけで11戦全勝(8KO)をマークしている。
 S・バンタム級時代には10ヵ月間に5度の防衛戦をこなすなどアクティブな活動が目立ったが、コロナ禍の影響もあってか2021年は2試合、2022年は1試合、2023年は今回が2試合目とペースは落ち着いてきたといえる。
 それに比例して勢いに陰りが見え始めている印象も受ける。短期間での階級アップと関係があると考えるのが合理的であろう。S・バンタム級時代は身長170センチ、リーチ183センチの体は際立って大きかったが、2階級上のS・フェザー級では平均的なサイズといえる。先のウィルソン戦では4回に痛烈なダウンを喫してKO負け寸前のピンチに陥ったこともあり、この階級での評価は先送りとなっている状態だ。戦績は38戦37勝(31KO)1敗。

アマ時代に五輪に2度出場 プロでは2階級制覇

 バルデスは2度のオリンピック出場後にプロデビュー。地域王座を獲得しながら世界のトップ戦線に浮上し、2016年7月にWBO世界フェザー級王座を獲得した。この王座は3年間に6度防衛したのちに返上し、S・フェザー級に転向。2021年2月にはミゲール・ベルチェルト(メキシコ)を劇的な10回KOに屠ってWBC王座を奪取して2階級制覇を成し遂げた。このベルチェルト戦は内容、結果ともバルデスのベストファイトに挙げられる試合といっていいだろう。
 その後、初防衛戦では2016年リオデジャネイロ五輪金メダリストのロブソン・コンセイサン(ブラジル)に12回判定で辛勝。次戦ではWBO王者のシャクール・スティーブンソン(アメリカ)との統一戦に臨んだが、6回にダウンを喫したすえ大差の判定負けでベルトを手放すことになった。今年5月、アダム・ロペス(アメリカ)に大差の10回判定勝ちを収めて再起を果たしている。戦績は32戦31勝(23KO)1敗。

打撃戦か技術戦か 選択権握るナバレッテ

 ともに勇敢なファイター型だが、得意とする攻撃パターンと距離は異なる。機を見て左構えで戦うこともできるナバレッテが中長距離からの回転の速い連打で仕留めることが多いのに対し、バルデスは接近しながら振り抜く左フックを中心にパンチングパワーに定評がある。
 体格で劣るバルデスは踏み込んで左ジャブ、右ストレート、そして左フックを狙いたいところだが、ナバレッテが簡単にそれを許すとは思えない。ロングレンジからストレート系のパンチを多用して挑戦者を突き放そうとするのではないだろうか。バルデスが距離を詰めることができれば必然的に打撃戦になりそうだが、ウィルソン戦で痛い目に遭っているナバレッテが安全策を採った場合は技術戦になる可能性もある。
 体格を含めた総合力では王者が勝るとみるが、ナバレッテの直近の試合の出来が悪かったことが響いてかオッズは13対8でバルデス有利と出ている。

<S・フェザー級トップ戦線の現状>

WBA:エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)
WBC:オシャキー・フォスター(アメリカ)
IBF   :ジョー・コルディナ(イギリス)
WBO:エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)


 WBA王者のエクトル・ルイス・ガルシア(31=ドミニカ共和国)が昨年8月、WBC王者のオシャキー・フォスター(29=アメリカ)が今年2月にベルトを獲得。IBF王者のジョー・コルディナ(31=イギリスが)は今年4月に2度目の戴冠を果たし、WBO王者のエマヌエル・ナバレッテ(28=メキシコ)が今年2月に王座獲得と、この階級では4人とも実績が乏しい。3階級制覇のナバレッテが多少リードしてはいるが、戴冠試合で痛烈なダウンを喫しており突き抜ける存在にはなっていない。
 追う一番手がナバレッテに挑むオスカル・バルデス(32=メキシコ)で、これに前IBF王者のシャフカッツ・ラヒモフ(29=タジキスタン)、元IBF王者の尾川堅一(35=帝拳)が続く。
 さらに各団体のランキングを見てみると、活動を継続するのか不明なレオ・サンタ・クルス(35=メキシコ)、元WBA王者のレネ・アルバラード(34=ニカラグア)、元WBA暫定王者のクリス・コルバート(26=アメリカ)らが名を連ねているが、よほど奮起しないと返り咲きは難しそうだ。エデュアルド・エルナンデス(25=メキシコ)はKO率89パーセント超の強打者だが、4年前にグティエレスに1回KO負けのイメージが払拭しきれていない印象だ。
 むしろ勢いのある力石政法(29=緑)、18戦全勝(10KO)のサウスポー、ヘンリー・レブロン(25=プエルトリコ)らの方が期待できそうだ。

S・ライト級10回戦
リンドルフォ・デルガド対ハイル・バルティエラ


五輪戦士 vs 21歳のホープ
デルガドのスピードと技術に注目

 アマチュア時代に2016年リオデジャネイロ五輪に出場(ライト級1回戦敗退)した実績を持つリンドルフォ・デルガド(28=メキシコ)が、プロデビュー後に15連勝を収めたこともある21歳のジャイール・バルティエラ(メキシコ)と対戦する。
 デルガドは2017年4月にプロ転向し、ここまで17戦全勝(13KO)の戦績を残している。エロール・スペンス(アメリカ)やエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)の前座に起用されることが多く、井上尚弥(大橋)対マイケル・ダスマリナス(フィリピン)や中谷潤人(MT)対アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)の際も同じリングに上がっている。
 ワンツーを軸にした右のボクサーファイター型だが、72パーセントのKO率ほどの迫力は感じられない。よくいえば慎重、悪くいえば攻め手が遅いという印象だ。WBC世界S・ライト級14位にランクされているが、その地位にふさわしい技量をみせることができるか。
 バルティエラは2018年7月に16歳でプロの世界に飛び込み、WBC中南米ライト級王座を獲得するなど15連勝(8KO)を収めたが、16戦目に5回KO負けを喫した。再起戦を挟み昨年7月にレイモンド・ムラタラ(アメリカ=現世界ランカー)に8回完封負け。次戦でNABO北米S・ライト級王座に挑んだが、負傷による4回無効試合という結果に終わった。戦績は19戦16勝(8KO)2敗1無効試合。体を沈めながら飛び込んで食らいつくタイプだが、飛び抜けたものは感じられない。
 3試合連続でナバレッテの前座を務めるデルガドが、初となる10回戦でどれだけ自己アピールができるか。

【番組オフィシャルサイト】
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【エキサイトマッチ公式Twitter】
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