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WBC・WBO世界S・バンタム級タイトルマッチ スティーブン・フルトン対井上尚弥

技巧派の「クールボーイ」 vs 万能型の「モンスター」
世界中が注目する全勝対決

 昨年12月にバンタム級の4団体世界王座を統一し、今年1月にすべてを返上してS・バンタム級に転向した井上尚弥(30=大橋)が、その初戦でWBC・WBO2団体王者のスティーブン・フルトン(29=アメリカ)に挑む。21戦全勝(8KO)のフルトンはS・バンタム級でNO.1の評価を受けており、近い将来にはフェザー級転向を視野に入れているテクニシャンだ。大柄でスピードがあり懐が深いフルトンは難敵だが、オッズは9対2で井上有利と出ている。

無敗戦士9人に初黒星をつけた大柄な2団体王者

 フルトンはアマチュアを経て2014年10月にプロデビュー。2021年1月にアンジェロ・レオ(アメリカ)を破ってWBO王座を獲得し、10ヵ月後にはWBC王者のブランドン・フィゲロア(アメリカ)に競り勝って2団体の王座を束ねた。昨年6月には元王者のダニエル・ローマン(アメリカ)に付け入る隙を与えず、一方的な判定勝ちを収めて防衛を果たした。戦績が示すようにパワーが売りの選手ではなく、パンチの速さと俊敏な身のこなし、懐の深さ、危機感知能力の高さを備えた選手だ。加えて55.3キロが体重上限のS・バンタム級で身長169センチ、リーチ179センチと体格に恵まれている。本人が自慢しているように、特筆すべきはレオやフィゲロアを含め9人の無敗選手に初黒星をつけている点であろう。「イノウエが10人目だ」と吹いているが、それだけの自信があるということなのだろう。

4階級制覇を狙い「新たな挑戦」に踏み出すモンスター

 井上は2012年10月にL・フライ級でプロデビューし、6戦目に同級WBC王座を獲得。8戦目には飛び級でWBOのS・フライ級王座に挑戦し、世界戦だけで30度を超していた技巧派のオマール・ナルバエス(アルゼンチン)を2回で粉砕して2階級制覇を成し遂げた。この階級には3年5ヵ月留まり7度の防衛を果たしたあとベルトを返上。2018年5月、バンタム級への転向初戦でジェイミー・マクドネル(イギリス)に挑み、わずか112秒TKO勝ちを収めて3階級制覇を果たした。
 初防衛戦で元王者のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を右一発で失神させると、その後は活躍の場を世界に広げ、イギリスでIBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に2回KO勝ち。元5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)には少々手を焼いたものの次戦ではアメリカでジェイソン・マロニー(オーストラリア)を7回KOで沈めた。
 以後、マイケル・ダスマリナス(フィリピン=3回KO)、アラン・ディパエン(タイ=8回TKO)、WBC王座に返り咲いていたドネアを2回TKOで下し、さらにWBO王者のポール・バトラー(イギリス)にも11回KO勝ちを収め、4本のベルト収集という仕事を完遂した。S・バンタム級への転向と今回のフルトン戦は「新たな挑戦」という位置づけになる。

<TALE OF THE TAPE  両選手のデータ比較表>

フルトン   井上尚弥
1994年7月17日/29歳 生年月日/年齢 1993年4月10日/30歳
フィラデルフィア(アメリカ) 出身地  座間市(日本 神奈川県)
2013年全米ゴールデングローブ大会優勝 アマ実績 11年世界選手権出場
90戦75勝15敗 アマ戦績 81戦75勝(48KO)6敗
2014年10月 プロデビュー 2012年10月
21戦全勝(8KO) 戦績 24戦全勝(21KO)
38% KO率 88%
3戦全勝 世界戦 19戦全勝(17KO)
169cm/179cm 身長/リーチ 165cm/170cm
右ボクサー型 戦闘スタイル 右ボクサーファイター型
「クールボーイ」 ニックネーム 「モンスター」


<S・バンタム級トップ戦線の現状>

WBAスーパー:マーロン・タパレス(フィリピン)
WBC    :スティーブン・フルトン(アメリカ)
IBF       :マーロン・タパレス(フィリピン)
WBO    :スティーブン・フルトン(アメリカ)


 この春までスティーブン・フルトン(29=アメリカ)とムロジョン・アフマダリエフ(28=ウズベキスタン)の並走が続いていたが、4月にマーロン・タパレス(31=フィリピン)がアフマダリエフに競り勝ち、WBAスーパー王座とIBF王座を奪取。これによりフルトン対井上尚弥(30=大橋)の勝者が対抗王者と4団体王座をかけて戦うというプランは軌道修正の必要が出てきた。アフマダリエフは2016年リオデジャネイロ五輪銅メダリストで11戦全勝(8KO)という付加価値を持っていたため魅力的な相手といえた。2階級制覇のタパレスが力不足だとはいわないが、40戦37勝(19KO)3敗という戦績はKO 率を含め少々アピールに欠ける。4年前に岩佐亮祐(セレス)に11回TKO負けを喫した印象が強いせいだろうか。その後、アフマダリエフ戦を含め4連勝と復調しているのが救いだ。
 無冠になりWBA2位にランクされているアフマダリエフだが、WBAから1位の亀田和毅(32=TMK)と次期挑戦者決定戦を行うよう指示を受けている。すでに指名挑戦権を有している亀田はフェザー級転向を視野に入れていると伝えられるだけに、動向が注目される。
 このほかジョンリエル・カシメロ(34=フィリピン)、ルイス・ネリ(28=メキシコ)、サム・グッドマン(24=オーストラリア)、そのグッドマンに敗れたライース・アリーム(33=アメリカ)らが挑戦の機会を待っている。瞬間最高値の高いカシメロ、77パーセントのKO率を誇るサウスポーのネリはネームバリューと攻撃力はあるが、総合力ではフルトン、井上には及ばないと思われる。

WBO世界フェザー級タイトルマッチ
ロベイシ・ラミレス対清水聡

 ロベイシ・ラミレス(29=キューバ)はアマチュア時代に2012年ロンドン五輪フライ級と2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級で金メダルを獲得したエリートで、トップランク社とプロモート契約を交わしてプロに転向した。しかし、2019年8月のデビュー戦では8戦4勝(2KO)2敗2分のアダン・ゴンザレス(アメリカ)に試合開始から30秒も立たないうちに不覚のダウンを喫し、そのまま挽回できずに4回判定負けという屈辱を味わった。その後、ゴンザレスには6回判定勝ちで雪辱している。
 プロの水に慣れてきた2021年あたりからは対戦相手のレベルが上がり、昨年6月には世界ランカーのエイブラハム・ノバ(アメリカ)に左一発で5回KO勝ち。次戦では元世界ランカーのホセ・マティアス・ロメロ(アルゼンチン)に9回TKO勝ちを収め、今年4月のアイザック・ドグボエ(ガーナ/イギリス)戦では大差の12回判定勝ち、空位のWBO世界フェザー級王座を獲得した。
 一方の清水は2008年北京五輪(フェザー級)、2012年ロンドン五輪に出場した経験を持ち、ロンドン大会ではバンタム級で銅メダルを獲得している。2016年9月に30歳でプロ転向を果たし、4戦目にOPBF東洋太平洋フェザー級王座を獲得。2019年7月のWBOアジアパシフィック S・フェザー級王座挑戦は失敗(ジョー・ノイナイに6回TKO負け)に終わったが、その後はフェザー級に戻ってWBOアジアパシフィック王座を獲得するなど3連勝(2KO)を収めている。
 五輪メダリスト、サウスポー、プロ転向後は13戦(ラミレス)と12戦(清水)とデータ上は似たところが多いが、体格と戦闘スタイルは異なる。立ち位置を変えながらプレッシャーをかけて攻め込むラミレスに対し、長身の清水は変則的な角度とタイミングで放つ左ストレートが生命線といえる。

54キロ契約8回戦
武居由樹対ロニー・バルドナド

 異種格闘技からボクシングに転向して6戦全KO勝ちのOPBF東洋太平洋S・バンタム級王者、武居由樹(27=大橋)が、近い将来の世界挑戦を視野に入れてバンタム級より500グラム重い54キロ契約8回戦に臨む。相手のロニー・バルドナド(27=フィリピン)は21戦16勝(9KO)4敗1分と驚くほどの戦績ではないが、今年1月にフィリピンの国内王座を獲得して自信を増している。
WBC10位、IBF11位にランクされるサウスポーの武居のコンディション、パフォーマンスに要注目だ。

【番組オフィシャルサイト】
https://www.wowow.co.jp/sports/excite/
【エキサイトマッチ公式Twitter】
https://twitter.com/Excite_Match
【WOWOWofficial YouTube】
https://www.youtube.com/user/WOWOWofficial

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