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IBF暫定世界ウェルター級タイトルマッチ ジャロン・エニス対ロイマン・ビリャ

KO率87%の暫定王者 vs KO率89%の挑戦者
オッズは10対1でエニス圧倒的有利

 今年1月、IBF暫定世界ウェルター級王座を獲得したジャロン・エニス(26=アメリカ)が、同級2位にランクされるロイマン・ビリャ(30=コロンビア)を迎えて初防衛戦に臨む。31戦30勝(27KO)1無効試合、KO率87パーセントのエニスに対し、ビリャも27戦26勝(24KO)1敗、KO率89パーセントと譲らない。オッズは10対1でエニスが圧倒しているが、パンチ力のある選手同士のカードだけに数字は当てにならない。

強豪を連破して暫定王座に辿り着いたエニス

 父デリックに加え17歳上の兄デリック・ジュニア、14歳上の兄ファラーも元プロボクサーという家庭に生まれたエニスは15歳のときにボクシングを始め、全米ゴールデングローブ大会で優勝するなどアマチュアで61戦58勝3敗の戦績を残した。この3敗はいずれもゲイリー・アントゥアン・ラッセル(アメリカ)に判定で敗れたものだが、エニスも2015年の五輪予選でラッセルから勝利を収めている。
 2016年4月、19歳になる2ヵ月前にプロに転向し、順調に白星を重ねていった。デビューから2年後、初10回戦では世界挑戦経験者のマイク・アルノーティス(ギリシャ)を2回TKOで下し、1年後には同じく世界挑戦経験者のフランクリン・ママニ(ボリビア)に1回終了TKO勝ちを収めた。さらに2020年には元世界ランカーのファン・カルロス・アブレウ(ドミニカ共和国)を6回TKOで一蹴し、結果として相手が負傷して1回無効試合になりはしたものの元世界ランカーのクリス・バン・ヘーデン(南アフリカ)も圧倒。勢いは止まらず元世界王者のセルゲイ・リピネッツ(カザフスタン)を6回、世界挑戦経験者のトーマス・デュロルメ(グアダルーペ/プエルトリコ)を1回、IBF6位のカスティオ・クレイトン(カナダ)を2回でKOと圧倒的な強さを見せつけた。
 そんな折りIBFを含めた3団体王者のエロール・スペンス(アメリカ)とWBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)との統一戦計画が具体化。これを受けIBFは暫定王座の設置を決め、今年1月にエニスはカレン・チュカジャン(ウクライナ)と対戦した。この試合、チュカジャンが守りに徹したためエニスは攻めあぐねたが、ジャッジ三者から120対108で支持を受けて暫定王座を獲得した。

アメリカで無敗のホープに連勝して注目されたビリャ

 ビリャも2015年1月のプロデビューから19連続KO勝ちを収めたが、その名前が世界に広まることはなかった。ほとんどがベネズエラやコロンビアで二線級を相手にした試合だったのだから仕方ないだろう。2019年4月、初のメキシコ遠征で元世界王者の息子、マルコス・ビジャサナ(メキシコ)に競り負け、連続KO勝ちがストップした。
 しかし、そこから這い上がる。再度のメキシコ遠征、ドミニカ共和国遠征、ウルグアイ遠征で連続KO(TKO)勝ちを収めると、2022年9月には初めてアメリカに呼ばれた。ここでテオフィモ・ロペス(アメリカ)のスパーリング・パートナーを務めるなどして注目されつつあった18戦無敗のホープ、ジャネルソン・フィゲロア・ボカチカ(アメリカ)からダウンを奪って大差の8回判定勝ちを収めた。
 この勝利が認められたビリャは今年1月、ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)対エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)のWBA世界ライト級タイトルマッチの前座に出場することになった。ラシディ・エリス(アメリカ)との世界ランカー対決は終盤まで敗色が濃かったが、最終12回に2度のダウンを奪って劇的な逆転判定勝ちを収めてみせた。この直後のリングでエニスがチュカジャンに勝ったわけだが、観客の印象度という点ではビリャが上回ったのではないだろうか。

攻撃的アウトボクシングでエニスが仕留めるか

 最後の最後でエリスからダウンを奪ったビリャの左フックは要注意だが、その試合で11回まで劣勢だったことは事実だ。強気だが慎重な面もあるエニスがエリスと同じ失敗を犯すとは思えない。身長で8センチ(エニスが178センチ、ビリャが170センチ)、リーチで10センチ(エニスが188センチ、ビリャが178センチ)勝るエニスは右構えであれ左構えであれ遠い距離から速いジャブを飛ばして攻撃的なアウトボクシングを試みるはずだ。ビリャがこれを巧みに掻い潜って距離を詰めることができればスリルに富んだ展開になりそうだが、簡単な作業ではないだろう。エニスがポイントを重ねながら徐々に相手にダメージを植えつけ、さらに集中力も下げさせていく可能性が高い。ビリャの一発が当たらない場合、中盤から終盤にかけてエニスが仕留めてしまいそうだ。

<ウェルター級トップ戦線の現状>


WBAスーパー:テレンス・クロフォード(アメリカ)
WBA    :エイマンタス・スタニオニス(リトアニア)
WBC    :テレンス・クロフォード(アメリカ)
IBF       :テレンス・クロフォード(アメリカ)
IBF暫定     :ジャロン・エニス(アメリカ)
WBO    :テレンス・クロフォード(アメリカ)

 テレンス・クロフォード(35=アメリカ)がエロール・スペンス(33=アメリカ)に9回TKO勝ちを収め、S・ライト級に続いて2階級で4団体王座を統一。これで誰もが認めるウェルター級NO.1となった。ただ、IBF暫定王者のジャロン・エニス(26=アメリカ)の評価が高いだけに、浮かれているわけにもいかない。
とはいえ現時点ではクロフォードに比べてエニスの知名度が低いためスーパーファイトにはなりにくく、マッチメークは少し先になりそうだ。エニスがロイマン・ビリャ(30=コロンビア)との初防衛戦に勝ち、WBA王者のエイマンタス・スタニオニス(29=リトアニア)との王者対決を制するか、またはスペンスとのサバイバル戦をクリアした場合はクロフォードとの頂上決戦が盛り上がるはずだ。
 スタニオニスへの挑戦を今年4月、7月と連続して自身の体調問題でキャンセルしたバージル・オルティス(25=アメリカ)は19戦全KO勝ちのホープで期待値も高いが、戦線復帰と信頼回復には少々時間がかかるかもしれない。
 S・ライト級の元4団体統一王者、ジョシュ・テイラー(32=イギリス)がウェルター級に転向してきそうだが、減量苦から解放されてもうひと暴れしてくれるかどうか。各団体で上位にランクされるコディ・クローリー(30=カナダ)はパワーには欠けるが大柄なサウスポーで相手にとっては戦いにくいタイプだ。
 キース・サーマン(34=アメリカ)、ヨルデニス・ウガス(37=キューバ)ら元世界王者は試合間隔が空きすぎていることもあり旬を過ぎた印象を拭えない。

【番組オフィシャルサイト】
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