強豪国ひしめく南半球4カ国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」は、今週いよいよ最終節を迎える。

第２節を終えた時点で唯一無傷の2連勝と他を圧倒する強さを見せるニュージーランド代表"オールブラックス"は、勝てば全勝優勝で3連覇達成という大一番。永年のライバルである隣国、オーストラリア代表"ワラビーズ"もホームのブリスベンでの開催となるだけに、ファンの前で何としても勝利をもぎ取り一矢報いたいところだろう。ともに１勝１敗と競り合う２位の南アフリカと3位のアルゼンチンの対戦も、W杯を占う上で見逃せない一戦となる。

WOWOWはこの必見の最終節を生中継し、WOWOWオンデマンドでもライブ配信。フィジカル、スピード、スキル、インテリジェンスと全てにおいて世界トップクラスの激突を余すことなくお届けする。

この最終節のオーストラリアvsニュージーランド（7/29）は世界屈指の伝統を誇るラグビー対抗戦「ブレディスローカップ」の第１戦を兼ねており、8/5には第２戦が行われる。1932年から90年以上に渡り開催されているこの二カ国間の対抗戦は、勝ち越した国が優勝杯のブレディスローカップを獲得し、1勝1敗などイーブンの場合は前年のカップ獲得国がそのまま保持ことになっている。

現在、ニュージーランドがブレディスローカップを21年連続保持しているが、その奪還に闘志を燃やしているのが、かつて日本代表やイングランドを率い、今年オーストラリアのHC（ヘッドコーチ）に就任した世界的名将エディー・ジョーンズ氏で、オーストラリアが最後にカップを保持していた2002年当時の指揮官でもある。

カップ奪還のためにはオーストラリアが2連勝する必要があるが、世界ランキング3位（7月24日時点）のニュージーランドに対し同8位のオーストラリアはいかにして戦い、勝機を見出すのか。今回、ブレディスローカップの奪還とW杯優勝を目標に掲げるエディー・ジョーンズHCに、元日本代表の大西将太郎さんがインタビューを敢行。ニュージーランドとの2連戦への並々ならぬ思いを語ってもらった。

ニュージーランド代表"オールブラックス"／©Getty Images

大西　次はオールブラックスとのブレディスローカップになります。今のエディーさんの思いを聞かせてください。

エディー　まずはプレトリア（ザ・ラグビーチャンピオンシップ第1節、南アフリカとの対戦地）で勝利を挙げることが目標でしたが、残念ながらそれは叶いませんでした。（カップ奪還が目標の）ブレディスローカップはもう21年も勝っていません。ですから、ニュージーランドとのメルボルンでの対戦は大きなチャンスです。あのスタジアムは世界で唯一、オーストラリアがニュージーランドに対してアドバンテージがあるグラウンドです。我々はあの場所でいいプレーができます。観客はものすごい数になるでしょう。

我々としてはフィジカルを前面に出し、断固とした気持ちで臨む必要があります。試合は早い段階でアタックすること、そして試合の中できちんと足場を組んでニュージーランドにプレッシャーをかけることが大事です。圧を受けた彼らはどんな反応を示すでしょうかね。

オーストラリア代表"ワラビーズ"／©Getty Images

大西　今のニュージーランドの状態をどう見ていますか？

エディー　とても興味深いです。ニュージーランドはW杯の前に、その次のW杯のコーチ（スコット・ロバートソン次期HCら）を知るというプロセスをたどりました。それはチームの結束にいい影響をもたらすでしょう。選手たちは確実にイアン・フォスター（現ニュージーランドHC）が好きなので、彼のためにプレーするでしょう。

W杯イヤーのニュージーランドはいつもスロースターターです。でも今年はバーンと鳴り物入りでスタートしました。それはイアン・フォスターに対する選手たちの気持ちも一部働いていると思います。だから彼らは本当にいいラグビーをしていますね。とてもフィジカルなラグビーです。彼らのアタックはこれまでよりもはるかにストレートですし、南アフリカ戦（第２節）での最初の20分のキッキングゲームはこの世の物とは思えないほどでした。どのキックも空中でボールを取り戻していたと思います。すごいことです。

大西　今、注目しているニュージーランドの選手をお願いします。

エディー　まずはアタックに絡むSO（スタンドオフ）リッチー・モウンガですね。力強いキッキングゲームに持ち込み、さらにキックリターンがとても得意です。そして巧みなフットワークと足の速さで相手を倒す能力があります。彼こそプレッシャーをかけるべき相手です。

リッチー・モウンガ／©Getty Images

そしてFW（フォワード）にはLO（ロック）ブロディー・レタリックがいます。彼はワールドクラスの素晴らしいLOで、ラインアウトでの働きがいいだけでなく、ラックでの仕事も世界の誰にも負けません。彼ら2人こそ、我々が注意するべき選手たちです。

ブロディー・レタリック／©Getty Images

大西　オーストラリアもブレディスローカップに向けてしっかりと準備して臨みますか？

エディー　キックオフが待ち遠しいです。彼らには試合の序盤でショックを与えないといけません。私がイングランドを指揮していた時に、ニュージーランドに対していい結果を出しました（19年W杯準決勝での勝利など）。オーストラリアもフィジカルを前面に押し出してプレーすること、目的意識を持ってプレーすることが大事です。そしてニュージーランドを追い詰めた時、ニュージーランドが我々からのプレッシャーの熱波をハンドリングできるかどうか、でしょうね。

大西　ブレディスローカップを奪還すれば、エディーさんが以前にHCだった2002年以来となりますね。

エディー　あれから21年経ちました。そして偶然にもブレディスローカップの2試合目は（2001年に勝利を収めたニュージーランドの）ダニーデンです。だから今回、メルボルン・クリケット・グラウンドとダニーデンで試合をすることはチームにいい形で作用します。彼らの方が優勢ではありますが、どんなに優勢でも必ず弱点があるので、確実に彼らの弱点を見つけるつもりです。

オーストラリア代表"ワラビーズ"／©Getty Images

大西　さらに、サマー・ネーションズシリーズの最終週にはフランスとの対戦があります（日本時間8月28日）。今のフランスをどう見ていますか？

エディー　フランスはニュージーランドと似たようなプレーをしますね。キッキングチームからカウンターアタックによく持ち込みます。キックからパワフルにプレーしますので、ニュージーランドと同様に、彼らに対してどうやってプレッシャーをかければいいか、見極めないといけません。セットピースとブレイクダウン周りの対策をする必要があるでしょうね。

これらの試合は、W杯に向けて素晴らしい準備になるでしょう。ニュージーランドとの２試合、そしてフランスとのテストマッチは、W杯の準備としてこれ以上ないものです。

名将エディー・ジョーンズHCも今や遅しとキックオフを待ち侘びるブレディスローカップ。そして続いて開催されるサマー・ネーションズシリーズと併せて、ぜひWOWOWで世界最高のラグビーをご堪能いただきたい。