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WBO暫定世界S・ウェルター級タイトルマッチ ティム・チュー対カルロス・オカンポ

親子王者の夢を成就したチューの初防衛戦
世界挑戦3度目のオカンポを圧倒か

 今年3月、元王者のトニー・ハリソン(アメリカ)を9回TKOで下してWBO暫定世界S・ウェルター級王者になったティム・チュー(28=オーストラリア)の初防衛戦。挑戦者のカルロス・オカンポ(27=メキシコ)は37戦35勝(23KO)2敗の戦績を残しているが、ウェルター時代はIBF王者のエロール・スペンス(アメリカ)に初回KO負け(2018年6月)。S・ウェルター級に上げてからはWBC暫定王者のセバスチャン・フンドラ(アメリカ)に大差の12回判定負けと結果を出せていない。地力に加え地の利もあるチューがオカンポを圧倒しそうだ。

ダイナミックでパワフルなチュー

 チューは元世界S・ライト級王者のコンスタンチン・チュー(ロシア/オーストラリア)の息子で、アマチュアを経て22歳でプロデビューした。地域王座を獲得しながら徐々に対戦相手のレベルを上げ、3年前には元世界王者のジェフ・ホーン(オーストラリア)にも8回TKOで圧勝。その後も世界挑戦経験者のデニス・ホーガン(アイルランド)、井上岳志(ワールドスポーツ)、テレル・ゲシェイ(アメリカ)を連破して指名挑戦権を手にした。今年1月に4団体統一王者のジャーメル・チャーロ(アメリカ)に挑戦する予定だったが、王者が負傷したためハリソンとの暫定王座決定戦が用意された経緯がある。
 身長174センチとこの階級では決して大柄ではないが、プレッシャーをかけながら左右のロングフック、タイミングのいい左右アッパーなど自信を持って打ち込んでいく父親似の好戦的なスタイルの持ち主で、そのボクシングはダイナミックでパワフルだ。戦績は22戦全勝(16KO)。KO率は73パーセントだが、その数字以上にパンチには破壊力が感じられる。
 いま乗りに乗っているチューだが、不安がないわけではない。試合の3週間前、チューは友人とバーベキューを楽しんでいる際に犬に噛まれて腕を26針縫う傷を負っているのだ。翌々日にはジムワークを再開したというが、調整の最終段階でのアクシデントが試合に影響を及ぼさないという保証はない。

体格に恵まれた挑戦者は3度目の正直を狙う

 オカンポはスペンス戦までは22連勝中だったが、サウスポーの実力派王者には歯が立たなかった。その敗北を機に転級して12連勝を収めたあとフンドラに挑戦。197センチの長身サウスポー王者に向けて両足を踏ん張りながら左右フックを強振して見せ場もつくったが、ジャッジの支持を集めることはできなかった。今年3月、8戦無敗のマウリシオ・グティエレス(メキシコ)に5回TKO勝ちを収めて再起戦を飾り、今回の挑戦にこぎ着けた。
 身長179センチ、リーチ185センチと体格に恵まれているが、その利を生かすボクシングではなく、踏み込んで左右フックを振り抜く戦い方が目立つ。パンチ力はまずまずだが、スピードは感じられない。

オカンポには噛まれない? 暫定王座の防衛が濃厚

 犬に噛まれた傷が試合に影響を及ぼさないという前提で考えるならば、チューの勝利は不動といっていいだろう。自信を持ちすぎてアゴを上げた状態のまま襲い掛かって左右のパンチを強振することが多く、そこに一抹の不安は残る。しかし、オカンポにそこを突く度胸と能力があるかと問われると「否」という答えを返すことになる。9対1という一方的なオッズが出ているようにチューの防衛が濃厚だ。オカンポが打撃戦に付き合わなければ勝負が長引くことも考えられるが、現在の両者の力関係を見るかぎりチューがオカンポに噛まれる可能性は極めて低いとみる。

<親子世界王者>


エスパダス父子 グティ・エスパダス&グティ・エスパダスJr
スピンクス父子 レオン・スピンクス&コーリー・スピンクス
バスケス父子  ウィルフレド・バスケス&ウィルフレド・バスケスJr
アリ父娘    モハメド・アリ&レイラ・アリ
チャベス父子  フリオ・セサール・チャベス&フリオ・セサール・チャベスJr
ユーバンク父子 クリス・ユーバンク&クリス・ユーバンクJr
チュー父子   コンスタンチン&ティム

<S・ウェルター級トップ戦線の現状>


WBA  :ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBC  :ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBC暫定:ブライアン・メンドサ(アメリカ)
IBF     :ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBO  :ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBO暫定:ティム・チュー(オーストラリア)


 昨年5月、ジャーメル・チャーロ(33=アメリカ)がブライアン・カスターニョ(33=アルゼンチン)に10回KO勝ちを収めて4本のベルトを独占。誰もが認めるS・ウェルター級の支配者になった。しかし、今年1月に予定されたティム・チューとの防衛戦を拳の負傷でキャンセルしたことで風向きが大きく変わった。チャーロがトニー・ハリソンとの決定戦を制してWBO暫定王座を獲得し、存在感を増してきたのだ。今回、カルロス・オカンポに隙を見せずに圧倒するようならばさらに評価を上げるものと思われる。
 チャーロとチューはWBOから「9月30日までに対戦すること」と指令を受けたが、なんとチャーロは2階級上のS・ミドル級4団体統一王者、サウル・カネロ・アルバレス(33=メキシコ)に挑戦することを選択して驚かせたばかりだ。その試合の実現と結果でチャーロとS・ウェルター級トップ戦線の今後は大きく変わりそうだ。
 197センチの長身サウスポー、セバスチャン・フンドラ(25=アメリカ)を7回逆転KOで破ってWBC暫定王者になったブライアン・メンドサ(29=アメリカ)は2年前にヘスス・ラモス(22=アメリカ)に大差の10回判定負けを喫しており、まだ評価を定めることはできない。そのラモスは20戦全勝(16KO)のサウスポーで、4団体でトップ10入りを果たしている。じっくりと実力を蓄えて来年か再来年あたりに勝負に出てくるものと思われる。

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