WOWOWニュース

WBC暫定世界ミドル級タイトルマッチ カルロス・アダメス対ジュリアン・ウィリアムス

敗北を機にひと皮むけたアダメス
ウィリアムスは2階級制覇狙って挑戦

 

 昨年10月、決定戦を3回KOで制してWBC暫定世界ミドル級王者になったカルロス・アダメス(29=ドミニカ共和国)が、2階級制覇を狙う元WBA、IBF世界スーパー・ウェルター級王者のジュリアン・ウィリアムス(33=アメリカ)を迎えて初防衛戦に臨む。4年前の初黒星を機にひと皮むけた感があるアダメスは王座を守れるか。

 

挫折を機にミドル級に転向して成功したアダメス

 

 アマチュア時代に世界ユース選手権8強や世界選手権出場などの実績を持つアダメスは2015年にプロに転向。複数の地域王座を獲得しながら世界上位に進出し、「近未来の世界王者」として注目を集めていた。しかし、初めて訪れた大舞台、2019年11月のWBO世界スーパー・ウェルター級暫定王座決定戦でパトリック・テイシェイラ(ブラジル)に12回判定で敗れた。試合そのものは接戦だったが、7回に喫したダウンの印象が悪く、周囲の期待度も急落。
 このまま埋もれたホープとして終わるのかと思われたが、アダメスは再起戦を挟んでミドル級に転向して息を吹き返した。2021年12月、転級2戦目で強豪セルゲイ・デレビヤンチェンコ(ウクライナ)に10回判定勝ちを収めたのだ。この試合で強打とタフネス、ハート、体力、心身のスタミナを証明したアダメスは、次戦でファン・マシアス・モンティエル(メキシコ)に3回KOで圧勝、WBC暫定世界ミドル王座を獲得した。敗北を機にミドル級に転向したことが吉と出たといえる。ただし、真価が問われるのはこれからだ。戦績は23戦22勝(17KO)1敗。

 

不利の予想を覆して戴冠 初防衛戦で惨敗のウィリアムス

 

 ウィリアムスの足跡もアダメスと似たところがある。全米選手権や全米ゴールデングローブ大会に出場するなどアマチュアで活躍後、2010年5月にプロデビュー。2016年12月には24戦無敗の勢いを駆ってジャモール・チャーロ(アメリカ)の持つIBF世界スーパー・ウェルター級王座に挑んだが、合計3度のダウンを喫して5回KOで完敗した。
 再起4連勝後、今度はWBA、IBF王者のジャレット・ハード(アメリカ)に挑戦。オッズは6対1で王者有利と出ていたが、ウィリアムスは2回にダウンを奪って12回判定勝ち、一気に2団体王者になった。しかし、圧勝が予想された凱旋初防衛戦で伏兵ジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)に5回TKO負け、わずか7ヵ月で2本のベルトを手放してしまった。チャーロ戦、ロサリオ戦で打たれ脆さを露呈したことで評価は急落。再起戦でも判定負けを喫し、ついに世界15傑からも外れた。それを機にミドル級に転向し、昨年11月に無名選手相手に8回判定勝ちを収めているが、完全に復調したかどうかは分からない。戦績は33戦28勝(16KO)3敗1分1無効試合。

 

オッズは13対3でアダメス有利

 

 挫折を機に総合力をアップさせたアダメスと、逆に弱点を露呈して隘路にはまった印象のウィリアムス。その近況が13対3というオッズに表れているといえる。
 左右どちらの構えでも戦えるアダメスは距離を潰しにかかり、積極的に左右フックやアッパーを繋いでいくものと思われる。ウィリアムスも右ストレートや左フック、右アッパーなどタイミングのいいパンチを持っているだけに予断は禁物だが、耐久力や体力、スタミナで勝るアダメスが徐々に差をつけていく可能性が高い。

 

<ミドル級トップ戦線の現状>

WBA
:エリスランディ・ララ(キューバ)
WBC
:ジャモール・チャーロ(アメリカ)
暫定
:カルロス・アダメス(ドミニカ共和国)
IBF
:空位 ※決定戦 エスキーバ・ファルカン対ヴィンセンツォ・グアルティエリ
WBO
:ジャニベク・アリムハヌリ(カザフスタン)

 つい4年ほど前はサウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)、ゲンナジー・ゴロフキン(41=カザフスタン)、ジャモール・チャーロ(33=アメリカ)、デメトリアス・アンドラーデ(35=アメリカ)、村田諒太(帝拳)らがトップ戦線を形成し、「さあ次は誰と誰が戦うのか」と注目を集めたものだ。それと比べると現状はやや寂しい印象だが、トップ選手の入れ替え時期に来ているともいえる。裏返せばベテランから若手にチャンスが広がっているということだ。
 40歳のエリスランディ・ララ(キューバ/アメリカ)、41歳のゴロフキン、2021年6月から2年以上も実戦から遠ざかっているチャーロは実績と知名度は申し分ないが、年齢の問題もあり大きな期待は難しいといわざるを得ない。ハイメ・ムンギア(26=メキシコ)とセルゲイ・デレビヤンチェンコ(37=ウクライナ)がスーパー・ミドル級に転向してしまったのも惜しまれる。
 代わりに台頭してきたWBC暫定王者のカルロス・アダメス(29=ドミニカ共和国)とWBO王者のジャニベク・アリムハヌリ(30=カザフスタン)は、まだまだ総合力を伸ばす可能性がある。
 これに続くのが元WBO世界スーパー・ウェルター級王者のリアム・スミス(34=イギリス)、竹迫司登(31=ワールドスポーツ)に8回TKO勝ちを収めたメイリム・ヌルスルタノフ(29=カザフスタン)あたりか。先物買いになるが、15戦全勝(12KO)のサウスポー、イライジャ・ガルシア(20歳=アメリカ)にも注目していきたい。

IBF世界スーパー・フライ級タイトルマッチ フェルナンド・マルチネス対ジェイド・ボルネア

15戦全勝の王者 vs 18戦全勝の指名挑戦者
スイッチヒッター同士が対戦

 昨年2月、9度の防衛を重ねていたジェルウィン・アンカハス(フィリピン)を攻略してIBF世界スーパー・フライ級王者になったフェルナンド・マルチネス(31=アルゼンチン)が、1位にランクされる指名挑戦者のジェイド・ボルネア(28=フィリピン)を相手に2度目の防衛戦に臨む。手数とスタミナが自慢のマルチネスとリズムをとりながら出入りするボルネア。スイッチヒッター同士の一戦だ。

オッズは19対5 攻撃力で勝るマルチネス有利

 マルチネスは2016年リオデジャネイロ五輪に出場後、翌年8月にプロデビュー。ここまで6年間に15戦全勝(8KO)をマークしている。キャリア前半は比較的イージーな相手との対戦が目についたが、2022年2月にアンカハスを破って一気に世界のトップに立った。井岡一翔(志成)との統一戦が流れたあとのアンカハスに隙があったことは事実だろうが、再戦でも大差をつけて返り討ちにしているのだから実力勝ちといっていいだろう。
 挑戦者のボルネアも18戦全勝(12KO)という好戦績を残している。昨年1月、メキシコでモハメド・オバディ(モロッコ)との挑戦者決定戦に臨み、右フックで効かせたあと左ボディブローで10カウントを聞かせて(3回KO勝ち)IBF1位に上がってきた。「ハリケーン」というニックネームを持つが、フィリピンの先輩のマニー・パッキャオやジョンリエル・カシメロのような荒々しい攻撃型ではなく、リズムをとりながらワンツーで出入りするボクサーファイター型だ。
 マルチネスもボルネアも構えを左右に変えて戦うことができるスイッチヒッターだが、マルチネスの方が攻撃に特化した選手といえる。その分、ガードがルーズになりがちな傾向がある。ボルネアがそこを突ければ好勝負が期待できるが、次から次へとパンチを繰り出すマルチネスに対応できるかどうか。オッズは19対5で王者有利と出ている。
 この階級はWBA王座に井岡、WBC王座にファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)、WBO王座に中谷潤人(MT)が君臨している。3王者と比較しながら観戦するのも一興といえよう。

【番組オフィシャルサイト】
https://www.wowow.co.jp/sports/excite/
【エキサイトマッチ公式Twitter】
https://twitter.com/Excite_Match
【WOWOWofficial YouTube】
https://www.youtube.com/user/WOWOWofficial

記事をシェアする
  • line

Getty Images

×

PAGE TOP