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【コメント公開】出演者・音楽家・デザイナーから寄せられた『Trio Tour 2012』への言葉

2026/03/25 up

坂本龍一、ジャケス・モレレンバウム、ジュディ・カンによるトリオ演奏を収めた映画『Ryuichi Sakamoto | Trio Tour 2012』に寄せて、出演者および本作にゆかりのある音楽家・デザイナーよりコメントが到着しました!

出演者コメント

ジャケス・モレレンバウム(チェリスト)

Q. Trio Tour 2012 を振り返って、日本公演で特に印象に残っている出来事や思い出があれば教えてください。

津波によって地域全体が壊滅的な被害を受けた後の東北を訪れ、親しい友人である坂本龍一とジュディ・カンとともに過ごした時間は、今でも私の心を深く揺さぶり続けており、これからもずっとそうであり続けると思います。

あの夜、私たちは丘の上にある陸前高田の高校で、被災された方々のために演奏会を行いました。そこは、壊滅的な被害を受けた町のすぐ目の前でした。
あのときほど、音楽が自分にとって大きな意味を持ったことはありません。

私たちの頭の中には、目に焼き付いた破壊の光景が残っており、それは、自然の力の前で人間がいかに脆い存在であるかを感じさせるものでした。


私は日本人ではありませんが、サカモトの表情から、この災害が彼や生き残った人々にどれほど深い痛みをもたらしたのかを感じ取ることができました。
そしてそのことが、私に特別な力を与え、私たちの音楽がその痛みを少しでも癒すことができるようにという想いで演奏しました。


Q. Trio Tour 2012 が映画として劇場公開されることについて、どのように感じていますか?

この映画が公開されると知り、私はとても嬉しく思っています。なぜなら、この作品には、私の人生で最も美しく、そして意味深い芸術的瞬間のひとつが収められているからです。

その芸術的瞬間とは、偉大なアーティストである坂本龍一が生み出した壮麗で深い音楽を、素晴らしいヴァイオリニストのジュディ・カンとともに演奏した時間のことです。

この映画は、さまざまな意味でとても重要な作品です。次世代に多くの美を遺した作曲家へのオマージュを捧げるものであり、人間という存在の本当の意味を私たちに思い出させ、互いに戦争をするのではなく私たちの地球を大切にしなければならないということを教えてくれます。

そして最後に、この映画は、芸術というものは決して壊れることがなく、どんな痛みよりも強い力を持っているということを伝えています。

ジュディ・カン(ヴァイオリニスト)

Q. Trio Tour 2012 を振り返って、日本公演で特に印象に残っている出来事や思い出があれば教えてください。

まず思い浮かぶのは、私たちが演奏したそれぞれの空間に生まれていた特別な雰囲気です。
それは、とても親密で、瞑想的で、そして癒しに満ちていました。

私はその直前、歌手レディー・ガガとのワールドツアーに参加していました。このツアーは当時の私の人生やキャリアにとって、とても新鮮で歓迎すべき環境の変化でもあり、各公演が内省の場となるような空間に身を置けたことは、本当に恵まれた経験でした。

観客の皆さんが、リュウイチに力強く、そして心からの感謝の気持ちを伝えてくれたことに、深く感謝しています。

公演の前後に食事をともにした時間も、懐かしく思い出します。リュウイチの繊細さ、そして子どものような驚きや好奇心。そうした瞬間の中で、私たちの性格に共通点を感じることもありましたし、何よりも彼がとても謙虚で、優しく、穏やかな魂の持ち主であることが伝わってきました。その時間に、私は心から感謝しています。

特に心に残っているのは、東北を訪れたときのことです。そこで私は、震災と津波によって残された深い爪痕を目の当たりにしました。

私たちは、被災され仮設住宅で暮らしている方々のためにチャリティーコンサートを行い、その際に住民の一人が親切にもご自宅へ招いてくださいました。
彼女の家のテーブルで、ブランケットをかけ、下から上がってくる熱の温もりを感じながら座っていたことを覚えています。その温かさは、私たちの心の奥深くにまで届くものでした。

チャリティーコンサートは仮設の会場(=高校)で行われ、とても寒かったのですが、そこにあった空気は温かく、少し静かな哀しみを帯びながらも、かけがえのない特別なものでした。私は今でもそのことを思い返します。


Q. Trio Tour 2012 が映画として劇場公開されることについて、どのように感じていますか?

この映画が公開され、リュウイチのファンの方々がもう一度この体験を味わえること、そしてまだこの作品を体験していない多くの方々にも届くことを、とても嬉しく思っています。

東日本大震災の余波は、日本という国、そして特に被災された方々にとって、今なお深く心に刻まれています。
この映画は、大きな悲劇で失われた命に敬意を捧げ、この大惨事が今もなお多くの人々に影響を与え続けていることを忘れないようにする、という二つを表現するかたちとして、これ以上にない美しいものだと思います。

この映画の公開は素晴らしく、またとても喜ばしい出来事ですが、同時に、ひとりの偉大な人物を失った悲しみを抱える多くの人々の心を思うと、どこかほろ苦い気持ちもあります。

リュウイチの精神は、彼のすべての作品の中に生き続けています。そしてそれは、この映画の中でも深く感じ取れることでしょう。

芸術への貢献だけでなく、リュウイチが社会や環境、そしてこの地球に対して与えた影響の大きさにも、観客の皆さんが気づいてくれることを願っています。

彼の芸術は人類をより良い方向へ導こうとする使命感によって強く動かされていたように感じられました。それこそが、彼の音楽の中心であり、核であり、魂そのものだったと思います。
そしてそれは、私がリュウイチと深く共感し、つながりを感じ、価値観を共有できた理由の一つでもあります。

リュウイチの心は、世界で起こる悲劇によって何度も傷ついていました。痛み、混乱、暗闇――しかしその中にも、かすかな希望の光が彼の作品には散りばめられていました。私は彼の音楽を演奏する中で、そのすべてを感じていました。

この映画が、観るすべての人の心を動かし、何か善い行動へと向かわせるきっかけとなることを願っています。そして、悲劇とは人類すべてにとっての悲劇であること、芸術には力があり、それをどう使うかが周囲に影響を与えること、そして私たちは違いよりも多くの共通点を持っているのだということに気づいてもらえたらと思います。

私はこのツアーに参加できたこと、そして伝説的な存在である坂本龍一という人物の「人としての姿」を少しでも知ることができたことを、大きな誇りに思っています。

音楽家・デザイナー コメント

原 摩利彦(音楽家)

1996年の坂本龍一トリオコンサートを聴いて、13歳の私は後先のことを何も考えずに絶対に音楽家になると決心した。16年が経ち、音楽家として生きていくことの難しさと格闘していたとき、 再びトリオ編成のコンサートを観に行った。そこで自分の音楽の原点を見出して、頑張ろうと思った。聴く人の中に、強い衝動と安らぎを生み出してくれる音楽。この映画を観た人たちの中にはきっと私と同じように何かに挑戦しよう、という気持ちを抱く人がいるに違いない。

南 琢也(グラフィックデザイナー/アーティスト/本作ビジュアルデザイン)

本作のメインビジュアル制作に際して。Trioは、呼応と緊張の均衡のなかで響きを生み出しています。上方からの俯瞰という視点は、その関係を可視化します。映像によって切り取られた空間を閉じた画面として扱うのではなく、フレームの外側を描き加えることで、広がりをフレームの外へと連続させました。三者の関係に応答するように、有機性と緊張の均衡を与えた文字を、広がりの中に、ひとつの響きとして置きました。

蓮沼執太 (音楽家)

SOLOでも、DUOでもない。TRIOだからこそ可能にする「ミニマル」ミュージック。ピアノ、チェロ、ヴァイオリン。それぞれの楽器を通して現れる3人の関係性。初めて坂本さんから頂いたアルバムが3人で作られた『THREE』だったことを思い出しました。最低限に削ぎ落とされた音のパレットが紡ぐ静寂閑雅な世界へ。

あの瞬間に生まれた音は、決して過去のものではない。
『Trio Tour 2012』は、いまなお現在進行形で私たちに響き続けています。

劇場でお待ちしております。

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