WBA世界バンタム級タイトルマッチ アントニオ・バルガス対比嘉大吾

好戦型同士の一戦
直近の世界戦でダウン応酬の激闘を繰り広げたスリリングな強打者同士の一戦。打撃戦必至のカードだ。
バルガスは2016年リオデジャネイロ五輪に出場するなどアマチュアで130戦123勝7敗の戦績を残し、トップランク社と契約を交わして2017年2月にプロ転向を果たした。11戦目に右ストレートのカウンターを浴びて1回KO負けを喫するなど挫折も経験したが、昨年12月にはWBA暫定世界バンタム級王座を獲得。この試合では初回にダウンを奪ったものの自身も2回にダウン。その後、態勢を立て直して10回TKO勝ちを収めている。今春、正王者だった堤聖也(角海老宝石)が眼疾のため休養王者にスライドしたことにともない正王者に繰り上がった。
21戦19勝(11KO)1敗1無効試合と目立ってKO率が高いわけではないが、ガードを固めて圧力をかけ、左右フックを強振するなど攻撃力が最大の売りだ。打たれ脆いことを自覚しているのか防御に対する意識は高そうだが、打ち合いになるとガードがルーズになる傾向がある。
挑戦者の比嘉は2014年7月のプロデビューから15連続KO勝ちという日本記録保持者で、この間、WBC世界フライ級王座を獲得している。体重超過のため王座を失うと約2年のブランクを経てバンタム級に転向。堤と引き分けたり西田凌佑(六島)に敗れたりと順風満帆というわけにはいかなかったが、2023年には世界ランカーを連破してトップ戦線に戻ってきた。昨年9月、WBO王者の武居由樹(大橋)戦ではダウンを奪ったものの12回判定負け。今年2月、堤の持つWBA王座に挑んだが、ダウン応酬のすえ引き分けという結果に終わった。これが3試合連続での世界挑戦となる。
発表会見では「2度あることは3度あるというけれど、3度目の正直という言葉もある。僕は3度目の正直を信じる」と話して場を和ませたものだ。戦績は26戦21勝(19KO)3敗2分。
TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表 ※年齢は試合時
アントニオ・バルガス | 比嘉大吾 | |
生年月日/年齢 | 1996年8月15日/28歳 | 1995年8月9日/29歳 |
出身地 | ヒューストン(アメリカ テキサス州) | 沖縄県浦添市 |
アマチュア実績 | 2016年リオ五輪出場 | |
アマチュア戦績 | 130戦123勝7敗 | 44戦36勝8敗 |
プロデビュー | 2017年2月 | 2014年6月 |
身長/リーチ | 166cm/168cm | 163cm/163cm |
プロ戦績 | 21戦19勝(11KO)1敗1無効試合 | 26戦21勝(19KO)3敗2分 |
KO率 | 52% | 73% |
獲得世界王座 | WBA世界バンタム級 | WBCフライ級 |
世界戦の戦績 | 1戦1勝(1KO) | 6戦3勝(3KO)2敗1分 |
戦闘スタイル | 右ボクサーファイター型 | 右ファイター型 |
<バンタム級トップ戦線の現状>
WBA :アントニオ・バルガス(アメリカ)
暫定 :ノニト・ドネア(フィリピン)
休養 :堤聖也(角海老宝石)
WBC :空位 ※11.24 那須川天心対井上拓真で決定戦
IBF :空位
WBO :クリスチャン・メディナ(メキシコ)
今春までは4人の日本人が王座に君臨していたが、WBA王者の堤聖也(29=角海老宝石)が眼疾のため「休養王者」にスライド。代わって暫定王者だったアントニオ・バルガス(28=アメリカ)が正王者に昇格し、空いた暫定王座には決定戦を制した大ベテランのノニト・ドネア(42=フィリピン)が就いている。WBC王者だった中谷潤人(27=M.T)は6月にIBF王者の西田凌佑(29=六島)を6回終了TKOで下して王座統一を果たしたが、のちに両王座を返上してスーパー・バンタム級に転向した。空いたWBC王座は那須川天心(27=帝拳)と井上拓真(29=大橋)で埋める予定だ。
WBO王座は武居由樹(29=大橋)が保持していたが、クリスチャン・メディナ(25=メキシコ)に4回TKOで敗れて失った。
まずは11月24日に行われる那須川対井上拓真のWBC王座決定戦に注目したい。さらに4階級制覇の実績を持つ井岡一翔(36=志成)もこの階級に転向してきた。戦線復帰を目論む堤とともに再び日本人ボクサーの活躍が期待される。実績、知名度のあるファン・フランシスコ・エストラーダ(35=メキシコ)の動きにも要注目だ。
WBA世界ライト・フライ級タイトルマッチ
エリック・ロサ対高見亨介
2階級制覇王者 vs KO率78%の強打者
デビューから9戦全勝(7KO)をマークしている23歳のホープ、高見亨介(帝拳)が、わずか8戦(全勝2KO)で2階級制覇を成し遂げている25歳のWBA世界ライト・フライ級王者、エリック・ロサ(ドミニカ共和国)に挑む。
高見はアマチュアで47戦(43勝4敗)を経験後、2022年7月にプロデビュー。初陣で1回KO勝ちを収めると順調に白星を重ね、昨年は堀川謙一(三迫)、ウラン・トロハツ(中国)といった経験値の高い選手にも勝利。今年4月、川満俊輝(三迫)との世界ランカー対決でも6回TKO勝ちを収め、日本王座を獲得すると同時にWBA1位にランクされた。右ストレートを中心に秀でたパンチ力を誇るスラッガーで、気の強さにも定評がある。
アマチュアで300戦以上の経験を持つと伝えられるロサは2020年10月にプロに転向。初戦でミニマム級のWBAとWBCの中南米王座に就くと、4戦目には同級WBA暫定王座を獲得。その1ヵ月後に統括団体の方針で暫定王座が廃止(現在は復活)されると次戦で正王座を獲得している。このあと自身のビザの問題でタイでの試合がキャンセルになるなどしたためブランクができたが、ライト・フライ級に上げて昨年12月に
WBA王座を獲得した。「ミニ・パックマン」というニックネームがあるが、6階級制覇を成し遂げた本家のようなパワーは感じられない。
サウスポーのロサは振りの大きな右フックと上下に打ち分ける左ストレートが主武器で、すでに12ラウンドを4度もフルに戦い切っている。スタミナとその配分には自信があるものと思われる。そんな王者をパンチ力と体格で勝る高見がどう攻略するのか見ものだ。
TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表
エリック・ロサ | 高見亨介 | |
生年月日/年齢 | 2000年3月18日/25歳 | 2002年4月5日/23歳 |
出身地 | サントドミンゴ(ドミニカ共和国) | 東京都(日本) |
アマチュア戦績 | 300戦以上 | 47戦43勝4敗 |
プロデビュー | 2020年10月 | 2022年7月 |
身長/リーチ | 160cm/165cm | 166cm/166cm |
プロ戦績 | 8戦全勝(2KO) | 9戦全勝(7KO) |
KO率 | 25% | 78% |
獲得世界王座 | WBAミニマム級 WBAライト・フライ級 |
|
世界戦の戦績 | 3戦全勝 | |
戦闘スタイル | 左ボクサーファイター型 | 右ボクサーファイター型 |
<ライト・フライ級トップ戦線の現状>
WBA:エリック・ロサ(ドミニカ共和国)
WBC:カルロス・カニサレス(ベネズエラ)
IBF :タノンサク・シムシー(タイ)
WBO:レネ・サンティアゴ(プエルトリコ)
4王者とも現時点での在位が1年以内と短く、そのため階級の動きそのものが安定しているとはいえない状況だ。WBA王者のエリック・ロサ(25=ドミニカ共和国)は8戦のキャリアで2階級制覇を成し遂げているが、ダウンを喫した試合もあるなど戦いぶりは安定感に欠ける。そのロサに挑む高見亨介(23=帝拳)の評価が高く、ロサ対高見のオッズは7対1で挑戦者有利と出ているほどだ(ウィリアムヒル)。
元WBA王者でもあるカルロス・カニサレス(32=ベネズエラ)は今年8月、自国にパンヤ・プラダブスリ(タイ)を招いて5回KO勝ち。8ヵ月前にタイで喫した不可解な判定負けのリベンジを果たすとともにWBC王座を獲得した。IBF王者のタノンサク・シムシー(25=タイ)はグリーンツダジムと提携している選手で、矢吹正道(LUSH緑)が返上した王座を6月に手に入れた。しかし、クリスチャン・アラネタ(30=フィリピン)との決定戦はどちらに勝利が転がり込んでも不思議ではない接戦で、王者としての評価は先送りになっている。
WBO王者のレネ・サンティアゴ(33=プエルトリコ)は今年3月、岩田翔吉(29=帝拳)を破って戴冠を果たした技巧派だ。足をつかいながら軽打を多発するスタイルは万人受けするわけではないが、相手にとっては戦いにくいタイプといえよう。
返り咲きを狙う岩田、3戦のキャリアながらWBA2位にランクされる吉良大弥(22=志成)、18戦全勝(8KO)のエリック・バディージョ(29=メキシコ)、元WBO世界ミニマム級王者の谷口将隆(31=ワタナベ)らが追う。
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エキサイトマッチSP
WBA世界バンタム級タイトルマッチ
アントニオ・バルガス vs 比嘉大吾
WBA世界L・フライ級タイトルマッチ
エリック・ロサ vs 高見亨介
10/20(月)午後9:00
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(C)NAOKI FUKUDA