WBO世界ライト級タイトルマッチ キーション・デービス対エドウィン・デ・ロス・サントス

2月に戴冠果たしたデービスの初防衛戦
挑戦者はサウスポーの速攻型強打者
2月14日にスイッチヒッターのデニス・ベリンチク(ウクライナ)に4回KOで圧勝、WBO世界ライト級王座を獲得したキーション・デービス(26=アメリカ)が、サウスポーの強打者、エドウィン・デ・ロス・サントス(25=ドミニカ共和国)を迎えて初防衛戦に臨む。オッズは6対1、スター候補のデービス有利と出ているが、デ・ロス・サントスの一発が番狂わせを起こす可能性も捨てきれない。
東京五輪では銀、プロで頂点に立ったデービス
デービスは東京五輪の開催が1年延びたため2021年2月にプロデビューし、3試合戦ってから五輪に出場。ライト級で銀メダルを獲得した。ちなみに決勝で拳を交えたアンディ・クルス(キューバ=5戦全勝2KO)はIBF王座への挑戦権をかけて6月に三代大訓(横浜光)と対戦することになっている。
プロデビュー2年目の2022年から強豪との対戦が組まれ、ファン・カルロス・ブルゴス(メキシコ)、アンソニー・イギット(スウェーデン)といった世界挑戦経験者を一蹴し、同時に地域王座も獲得した。苦戦したナヒール・オルブライト(アメリカ)戦後、ドーピング違反が発覚して判定勝ちが無効試合に変更されるというトラブルはあったが、以後は再び快進撃が続いている。元世界2階級制覇王者のホセ・ペドラサ(プエルトリコ)に6回TKO勝ち、WBO4位のミゲール・マドゥエノ(メキシコ)に10回判定勝ち、体重超過の世界ランカー、グスタボ・レモス(アルゼンチン)には3度のダウンを与え2回KOでお灸をすえた。そしてベリンチクに圧勝してプロ14戦目で戴冠を果たしたわけだ。
身長175cm、リーチ178cmと恵まれた体格の右ボクサーファイターで、相手を引き付けながらのカウンターアタックを得意としている。リスキーな戦い方だが、卓抜した反射神経やスピードがあるからこそといえる。
14KOすべてが3ラウンド以内のデ・ロス・サントス
挑戦者のデ・ロス・サントスは「La Granada(手榴弾)」という物騒なニックネームを持ったサウスポーで、その異名どおりのスラッガーだ。プロデビューは2018年8月で、S・フェザー級のWBC中南米王座、ライト級のWBAカリブ王座とWBC米大陸王座を獲得した実績を持っている。そんなデ・ロス・サントスの知名度と評価を上げたのは2022年9月のホセ・バレンスエラ(メキシコ/アメリカ)戦だろう。デ・ロス・サントスは2回にダウンを喫したが、同じラウンドに倒し返すと次の回にもダウンを追加。そして3回に連打でストップしたのだ。当時、WBC世界ライト級9位にランクされていたバレンスエラが、のちにWBA世界スーパー・ライト級王者になったこともあり、あらためてデ・ロス・サントスの強打がクローズアップされることになったのだ。
ただし、2023年11月に実現した世界初挑戦試合はシャクール・スティーブンソン(アメリカ)に12回判定で敗れている。この試合におけるWBC世界ライト級王者の戦闘スタイルは「タッチ&アウェー」と揶揄されたが、裏返せばそれほどにデ・ロス・サントスの"手榴弾"が警戒されたともいえる。今回はそのスティーブンソン戦以来、1年7ヵ月ぶりの試合となる。
デ・ロス・サントスは左構えから踏み込んで左ストレートを打ち込んだかと思えば、右側に体をスライドさせて右フック、右アッパーを突き上げることもある。それらのパンチはいずれも強振されることが多いのも特徴といえる。また、14度のKOがすべて3ラウンド以内であるという点は強調しておく必要がありそうだ。
総合力で勝る王者だが前半は要注意!
速攻型強打者のデ・ロス・サントスがプレッシャーをかけ、デービスが慎重に構えながら迎え撃つ展開でスタートしそうだ。6対1のオッズが示すとおり総合力で勝るデービスが有利であることは動かしようがないが、対応を間違うと取り返しがつかないことになりかねない。特に前半は踏み込んで放つ挑戦者の左ストレート、体勢を崩しながらでも強振する右フック、右アッパーには十分な注意が必要だろう。デ・ロス・サントスは上体が立つ癖があり、かつガードも甘いため勝負が長引いた場合はデービスのKOチャンスが増えていきそうだ。
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
<デービス> | <デ・ロス・サントス> | |
生年月日/年齢 | 1999年2月28日/26歳 | 1999年10月7日/25歳 |
出身地 | ノーフォーク(アメリカ バージニア州) | サントドミンゴ(ドミニカ共和国) |
アマチュア実績 | 2019年世界選手権銀 2021年東京五輪銀 |
|
プロデビュー | 2021年2月 | 2018年8月 |
戦績 | 14戦13勝(9KO)1無効試合 | 18戦16勝(14KO)2敗 |
KO率 | 64% | 78% |
身長/リーチ | 175cm/178cm | 173cm/178cm |
戦闘スタイル | 右ボクサーファイター型 | 左ボクサーファイター型 |
<ライト級トップ戦線の現状>
WBA:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBC:シャクール・スティーブンソン(アメリカ)
暫定:ウィリアム・セペダ(メキシコ)
IBF:ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
暫定:レイモンド・ムラタラ(アメリカ)
WBO:キーション・デービス(アメリカ)
タレントが揃うなか頂上決戦が期待されて久しいが、実現しないまま時間ばかりが経過してしまった。IBF王者のワシル・ロマチェンコ(37=ウクライナ)は昨年5月に返り咲いてから休養状態が続いており、団体は暫定王座を設けることに。5月に行われた決定戦でザウル・アブドゥラエフ(31=ロシア)を下したレイモンド・ムラタラ(28=アメリカ)が暫定王者になっている。
WBA王者のジャーボンテイ・デービス(30=アメリカ)は3月のラモント・ローチ(29=アメリカ)で引き分けて大きく評価を下げてしまった。限界を見せたとは思わないが、多くのファン、関係者を落胆させたのは事実だ。夏に計画される再戦で圧勝して巻き返せるか。
WBC王者のシャクール・スティーブンソン(27=アメリカ)は7月に暫定王者のウィリアム・セペダ(29=メキシコ)との団体内統一戦が決まっている。技巧派とファイター型のサウスポー対決だが、正王者の判定勝ちを推す声が多い。
WBOでも今年2月、大きな動きがあった。東京五輪銀メダリストのキーション・デービス(26=アメリカ)がデニス・ベリンチク(37=ウクライナ)に4回KOで圧勝、新王者になったのだ。まずは順調な成長をみせているデービスだが、エドウィン・デ・ロス・サントス(25=ドミニカ共和国)との初防衛戦でどんなパフォーマンスを見せるか注目される。
ランカーでは東京五輪決勝でデービスに勝って金メダルを獲得したアンディ・クルス(29=キューバ)に注目したい。IBF王座への挑戦権をかけて三代大訓(30=横浜光)との試合が決まっている。21歳の新星、アブドゥラー・メイソン(アメリカ)はデビューから18連勝(16KO)をマークしているサウスポーで、すでにWBCで4位、WBOで6位にランクされている。昨年11月の試合で打たれ脆い一面をさらしたが、才能はピカイチだ。一時はシャクール・スティーブンソンへの挑戦が内定した18戦全勝(12KO)のフロイド・スコフィールド(22=アメリカ)にも注目したい。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
エキサイトマッチ~世界プロボクシング
WBO世界ライト級タイトルマッチ
キーション・デービス vs エドウィン・デ・ロス・サントス
NABF・NABO北米ライト級タイトルマッチ
アブドゥラー・メイソン vs ジェレマイア・ナカティラ
6/8(日)午前9:00頃~ 先行ライブ配信
6/9(月)午後9:00
◆最新の放送・配信予定などはこちらから◆
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