WBO世界ウェルター級タイトルマッチ ブライアン・ノーマン対デリック・クエバス

戴冠試合で評価上昇のノーマン
挑戦者は4連続KO中の強打者
昨年5月、32戦全勝(17KO)のジョバニ・サンティリャン(アメリカ)に痛烈な10回KO勝ちを収めて戴冠を果たしたブライアン・ノーマン(24=アメリカ)の初防衛戦。当初、昨年11月に予定されていた試合だが、ノーマンが左手を痛めたため延期された経緯がある。挑戦者のデリック・クエバス(30=プエルトリコ)は29戦27勝(19KO)1敗1分の戦績を残している強打者だけにスリリングな攻防が見られそうだ。
多くの伸びしろを残す24歳の王者
ノーマンは2016年米国ジュニア五輪で優勝するなどアマチュアで活躍後、2018年1月にプロデビュー。負け越しの相手を選びながら4回戦を13試合、6回戦を5試合こなすなど極めて慎重なマッチメークが施されるなか順調に勝利を重ねていった。2023年になってやっと中堅との試合が組まれるようになり、世界戦の前座でWBOインターナショナル王座を獲得。比例して徐々に注目度も上がっていった。
それでもいきなり訪れた10ヵ月前の暫定王座決定戦は不利との予想が多く、オッズも4対1でサンティリャン有利と出ていた。この試合、ノーマンはサウスポーのファイターに押されてロープを背負う場面が多かったが、相手の強打をブロックしながら巧みに迎え撃ち10回KO勝ちを収めた。最初に奪ったダウンはコンビネーションからの右アッパーで、フィニッシュとなった2度目のダウンは同じく連打からの左アッパーだった。疑問視されていた実力を証明した試合といえた。のちにノーマンは正王者に昇格している。戦績は28戦26勝(20KO)2無効試合。まだ24歳の若く成長途上だが、伸びしろがあるだけに注目していきたい選手のひとりだ。
元世界ランカー4人に勝利のクエバス
クエバスは2014年10月にプロデビュー。ノーマン同様に自信をつけさせるマッチメークが続くなか勝利を重ねていった。2018年からブレイディス・プレスコット(コロンビア)、エド・パレデス(アメリカ)、アルベルト・メンサー(ガーナ)といった元世界ランカーを連破して頭角を現した。しかし、2020年12月に7連敗の選手に6回判定負けを喫して急停止を強いられた。これがキャリア唯一の敗北だ。その後は元世界ランカーのアルベルト・モスケラ(パナマ)に4回TKO勝ちを収めるなど4連続KO勝利中だ。
世界的には無名だが、プエルトリコだけでなくドミニカ共和国、アメリカ、メキシコ、パナマでの試合経験を持っている。スピードは平均の域を出ないが、右ストレートから返す左フックはタイミングが良く、軽めに見えて意外に破壊力があるのかもしれない。
ノーマンのKO防衛が濃厚
9対2のオッズが出ているようにノーマン有利は不動といえる。サンティリャン戦で見せたようなワンツー、左右のボディブロー、さらにダウンに結びつけた左右のアッパーが効果的に決まればKO防衛が期待できそうだ。クエバスはプレッシャーをかけながらクリンチで相手のリズムを遮断し、そこからワンツー、左フックに繋げていきたいところだが......。
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
ノーマン | クエバス | |
生年月日 | 2000年11月23日/24歳 | 1994年11月23日/30歳 |
出身地 | アメリカ・ディケーター | プエルトリコ・グアイナボ |
アマチュア実績 | 2016年全米ジュニア五輪優勝 | |
プロデビュー | 2018年1月 | 2014年10月 |
獲得王座 | WBOウェルター級 | |
プロ戦績 | 28戦26勝(20KO)2無効試合 | 29戦27勝(19KO)1敗1分 |
KO率 | 71% | 66% |
世界戦の戦績 | 1戦1勝(1KO) | |
直近の試合 | 2024年5月(10回KO勝ち) | 2023年12月(6回TKO勝ち) |
身長/リーチ | 173cm/183cm | 175cm/ |
戦闘スタイル | 右ボクサーファイター型 | 右ボクサーファイター型 |
ニックネーム | The Assassin II |
<ウェルター級トップ戦線の現状>
WBA:エイマンタス・スタニオニス(リトアニア)
WBC:マリオ・バリオス(アメリカ)
IBF :ジャロン・エニス(アメリカ)
WBO:ブライアン・ノーマン(アメリカ)
IBF王者のジャロン・エニス(27=アメリカ)の実力が頭ひとつ抜けているという見方が多い。ただ、昨年11月のカレン・チュカジャン(28=ウクライナ)戦は調子が悪かったのかモチベーションが上がらなかったのかエニスにしては低調なパフォーマンスに終わり、先行きに不安を残したのも事実だ。4月12日(日本時間13日)にはWBA王者のエイマンタス・スタニオニス(30=リトアニア)との統一戦が決まっている。スタニオニスは技術面では大きく劣ると思われるが、闘志を前面に出して向かっていくファイターだけにエニスも油断はできない。
WBC王者のマリオ・バリオス(29=アメリカ)は2023年9月に獲得した王座を2度防衛しているが、昨年11月のV2戦ではアベル・ラモス(33=アメリカ)とダウン応酬の引き分けに終わっている。今後はランカーたちの標的にされそうだ。WBO王者のブライアン・ノーマンはジョバニ・サンティリャン(33=アメリカ)ではベストともいえるパフォーマンスを見せて評価を上げたところだ。まだ若く伸びしろを残しているだけに楽しみな選手といえる。
各団体の上位を見てみるとランクされている選手にバラつきがあるが、そんななかでOPBF東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王者の佐々木尽(23=八王子中屋)が WBA4位、WBC4位、IBF4位、WBO2位と好位置につけている。現実的な話として、エニスはともかくバリオスとは好勝負が期待できるのではないだろうか。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
WBO世界ウェルター級タイトルマッチ
ブライアン・ノーマン vs デリック・クエバス
3/30(日)午前9:00頃~ 先行ライブ配信
3/31(月)午後9:00
◆最新の放送・配信予定などはこちらから◆
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