「目の前にエンバペとかヴィニシウスがいて...」チェイス・アンリ WOWOW独自インタビュー全編
今季、所属のシュトゥットガルトでトップチームに昇格し、日本人選手2番目の若さ(20歳5カ月24日)でUEFAチャンピオンズリーグデビューを果たしたチェイス・アンリに、WOWOWは独自インタビューを行った。
現在配信中の「チャンピオンズリーグダイジェスト!リーグフェーズ Matchday 4」では、この赤丸急上昇中の若きディフェンダーを特集。番組では一部しかお届けできなかったインタビューの全容を紹介する。
「近くで見ていて、自分もああいう風にプレーしたいなと」
――まずはリーグ戦、今季ここまで多くの出場機会を得ていますね。初めてトップチームでピッチに立った時の感想は?
「フライブルクとのアウェイゲームだったのですが、凄いスタジアムだとわかっていましたし、めちゃくちゃ緊張しました。試合前も早く始まってくれないかなと思いながらアップしていましたが、いざ試合が始まったら一気に緊張もほぐれました。ブンデスリーガの試合は本当に凄いなと思いましたね」
――もともと緊張するようなタイプですか?
「試合前などはけっこう緊張する方です。試合が始まってしまえばもう大丈夫という感じです」
――ブンデスリーガでもバイエルンやドルトムントなど世界のトップクラブとこれまで戦ってきたと思うのですが、ブンデスリーガのレベルの高さなどはどう感じていますか?
「バイエルン戦やドルトムント戦も少しの時間しか出場できていないのであまり話せないですが、レヴァークーゼン戦は強いチームと初めてスタメンで出ることができました。技術面はもちろんですが、頭の回転が凄く速いと思ったし、そういう強いチームとやる時はより高いレベルでプレーしないといけないなと改めて思いました。
その前の試合などは相手があまり前からプレスには来なかったのですが、レヴァークーゼンはハイプレスを仕掛けてきましたし、パスコースを切ることもうまく、やっぱりもっと自分の技術とかもっともう1段階レベルアップしないといけないと改めて感じることができて良かったと思います」
――「頭の回転」ですか。シャビ・アロンソ監督のチームの強さとはそういう点にあるのでしょうか?
「センターバックの選手もボールを奪ったあとのパスなどが正確で、近くで見ていてすごいなと思いましたし、余裕があり焦りもない感じですごいなと思いました。こちらがプレスに行ってもうまく剥がされたり、パスもすぐ出されて...。自分もああいう風にプレーしたいなと試合中ずっと思っていました」
「Jリーグを考えていないわけではなかったけど...」
――少し話は変わりますが、高校で世代別の代表チームに呼ばれたと思うのですが、その頃目標とする選手はいましたか?
「高校1年の時はもうプロになれたらいいやっていう考えだったんですけど、高校2年で世代別の代表チームに参加するようになってからは、それまで全然サッカーを観ていなかったのですが、海外サッカーもチャンピオンズリーグとかを先輩の部屋とかで見るようになり、いつか自分もそこでプレーしたいなと思って、そこから意識するようになりました」
――どういうチーム、どういう選手を見ていましたか?
「リヴァプールですかね。ファン・ダイクが好きだったので、リヴァプールの試合は毎試合見ていましたし、チャンピオンズリーグの試合もほぼ全部観ていました」
――ファンダイクのどこが好きでしたか?
「守備では絶対に抜かれないっていう安心感と、もちろん強さもですが、いつも冷静ですし巧い選手だなと思って好きでした。あまり慌てるシーンもないですし、ミスしてもすぐ味方に指示を出したりと、とてもメンタルが強いなと思います」
――シュトゥットガルトからのオファーを最初に聞いたときはどんな印象でしたか?
「嬉しいっていうか、なんかちょっと寂しいっていう感じになりました。けっこう寂しがりなんですが、親やみんなとも離れたり、日本を離れるのかなと...。ただ正直嬉しい気持ちもありましたよ」
――Jリーグでプレーする前に海外チームに入るというケースはなかなかないことなのですが、そのあたりはどう考えていましたか?
「Jリーグを全く考えていないわけではなかったのですが、当時の実力ではJリーグでも絶対出れないと思っていました。一方で、海外のチームだったら英語でコミュニケーションもとれるので、ちょっと年上の選手たちとセカンドチームやサードチームでプレーした方が自分の能力を伸ばせるのでは、という考えになりました。当時の監督や色んな人に相談して、そういった点が決め手でしたね」
――ドイツにきてまずはセカンドチームでした。最初はかなり苦労したと聞いていますが、どういったところが大変でしたか?
「チームメイトともそこまでうまくコミュニケーションが取れなかったですし、自分も早く結果を出したいという焦りもありました。なかなか代表にも呼ばれず、試合にも出ていなくて、私生活も一人でいることが多く逆に考える時間が多くなって、ストレスをかかえていました。ストレスがかさんで色んなケガもして結構苦しい時期(1年半くらい)でしたね」
――どうやってその時期を乗り越えましたか?
「(当時)岡田怜選手がセカンドチームにいたので一緒に喋ったり、もうやるしかないね、って毎日話していたので、彼がいて良かったなと思います。毎日一緒に自主練とか話せる人がいたのも良かったのですが、性格は真逆で、結構いろんなことを言えてフィーリングがあったので怜がいてくれて良かったですね」
――自分の武器が監督やチームに認められて今の立ち位置にいると思うのですが、自分ではどういう所が認められたと感じていますか?
「対人で前で潰すプレーだったり、一対一で負けないといった守備の面を評価されているかなと思います」
「チャンピオンズリーグの優勝は目標」
――CLでもいきなりレアル・マドリード戦で出場しました。あのような舞台に立つと想像できていましたか?
「チャンピオンズリーグで優勝したいという夢はあったのですが、正直こんなに早く出番が来るとは思っていなかったです。デビュー戦でレアル・マドリードとやるなんてまず全然実感が沸かなくて、全く想像していませんでした」
――スタジアムやアンセムだったり、対面したヴィニシウスだったり、どう感じましたか?
「目の前にエンバペとかヴィニシウスがいて、もう言うことがないですよね。今まで画面越しに見てきた選手とかが目の前にいて、自分もここまで来たんだなと思いましたし、試合後もずっと父親と話したりしましたが、あの日のことは一生忘れないですね」
――プレイヤーとして実際ヴィニシウスはどうでしたか?
「たった30分しか出ていないですけど、結構遊び心というか余裕がある感じで、なんか楽しくプレーしてそうだなって思いました。スピードはもちろん、ドリブル方向も全然わからなかったですし、一瞬のスピードが凄いと感じました」
――そういうレベルは過去には経験がなかったですか?
「あそこまでのレベルはないですね。今までも速い選手と対峙したことはありますが、説明が難しいですが今回は何かが違いました」
――その後CLでも3試合でプレーしていますが、欧州トップレベルのサッカーはどうですか?
「一瞬の隙を相手は狙ってくるので、展開の早さは感じます。レアル・マドリードだけじゃなく色んなタイプのチームがいますし、やっぱりちゃんと考えてプレーしないといけないなと感じました。あまり聞いたようなことのないチームでも力の差はなくて、色々なチームがそれぞれの戦術で勝ちにくるので、改めてチャンピオンズリーグは難しいんだなと思いました」
――先ほど、CLで優勝することが目標と言っていましたが高校時代からの目標ですか?
「そうですね。高校の時からチャンピオンズリーグで絶対優勝したいなと思っています。チャンピオンズリーグ優勝は世界一に限りなく近いと思うので、そこで優勝できれば、自分も世界一のセンターバックになれるので、チャンピオンズリーグの優勝は目標です」
――世界一のセンターバックになるために何が必要になると思いますか?
「一番必要なのは経験ですね。あと今まで通りの練習だけでなく、技術はもちろんもっと頭を使った守備とか、すべてにおいてレベルアップしないといけないと思います」
――現在二十歳で今後のキャリアはまだ始まったばかりだと思いますが、今後どういうふうにキャリアを進めていきたいですか?
「いつかはビッグクラブに行って、引退までトップレベルでやりたいというのが目標です」
――代表チームについてはいかがでしょうか?
「もちろん僕もワールドカップとか代表でも活躍できる選手になりたいですが、いまはチームのことに集中しています。チームでいい結果が出せれば代表の話なども自然と出てくると思います」
――ワールドカップは選手の一つとしての目標ですか?
「4年に一度しか行われない大会ですし、絶対そこでプレーしてみたいですね」
CLでの経験、そして最後にW杯への思いを語ったチェイス・アンリ。次戦はリーグフェーズMatchday 5、敵地でのツルヴェナ・ズヴェズダ戦を迎える。
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