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WBO世界バンタム級タイトルマッチ ジェイソン・マロニー対武居由樹

総合力の王者 vs パンチ力の挑戦者

 元K-1王者でプロボクシングに転向後は8連続KO勝ちを収めている武居由樹(27=大橋)が、3倍以上のキャリアを持つWBO世界バンタム級王者、ジェイソン・マロニー(33=オーストラリア)に挑む。経験値をはじめ総合的な戦力ではマロニーが勝るが、パンチ力では武居が上回っている。
 マロニーは双子の弟アンドリューとともに兄弟世界王者として知られる。現在の王座は昨年5月の決定戦を制して手に入れたものだが、その前に2度の挑戦失敗を経験している。2018年10月のIBF王座決定戦では採点が2対1に割れる僅差の判定でエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に惜敗。2年後、そのロドリゲスを2回KOで屠ったWBA・IBF王者の井上尚弥(大橋)に挑んだが、2度のダウンを喫したすえ7回KOで敗れた。その後は戴冠試合と今年1月の初防衛戦を含めて6連勝(1KO)を収めている。20代のときのような若々しさは感じられなくなったが、競った状態のなかでも勝ち切る勝負強さを身につけた印象だ。戦績は29戦27勝(19KO)2敗。
 一方、挑戦者の武居は元K-1王者で、2021年3月にプロボクシングに転向した。5戦目にOPBF東洋太平洋S・バンタム級王座を獲得し、初防衛戦では元世界ランカーのブルーノ・タリモ(タンザニア/オーストラリア)に負傷による11回TKO勝ちを収めている。
それらを含め9試合すべてを規定ラウンド内で終わらせてきた。
 身長170cm、リーチ173cmと体格に恵まれているが、今回が初めてバンタム級リミット内の体重で戦うためコンディション調整がひとつのカギといえる。戦績が示すとおりのサウスポーの強打者で、相手にとってはパンチのタイミングと軌道が読みにくいため、対応が遅れるケースが目立つ。
 井上尚弥戦で挫折を味わいながら這い上がって栄光をつかんだ総合力のマロニーと、井上のジムメートとして台頭してきた強打の武居という構図のカードだ。

<バンタム級トップ戦線の現状> ※2024年6月21日時点


WBA:井上拓真(大橋)
WBC:中谷潤人(M.T)
IBF   :西田凌佑(六島)
WBO:武居由樹(大橋)


 2024年を迎えた時点ではWBAの井上拓真(28=大橋)だけがバンタム級王者だったが、2月に中谷潤人(26=M.T)がWBC王座を獲得し、5月4日に西田凌佑(27=六島)、そして5月6日に武居由樹(27=大橋)がWBO王座を奪取。日本人が主要4団体の世界王座を独占することになった。
 それだけではない。各団体のランキングを見ても日本人選手の名前が次から次に出てくるのだ。元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(28=志成)はWBO1位、WBA3位、WBC9位、IBF10位にランクされており、前日本バンタム級王者の堤聖也(28=角海老宝石)もWBA2位、IBF3位、WBO7位、WBC11位の好位置につけている。このほか那須川天心(25=帝拳)、栗原慶太(31=一力)、増田陸(26=帝拳)が15傑に名を連ねている。王座統一戦とともに世界を舞台にした日本人同士の最強決定戦も期待したいところだ。
 海外のランカーでは7月20日に中谷に挑むビンセント・アストロラビオ(27=フィリピン)、WBA1位、WBO4位のアントニオ・バルガス(27=アメリカ)、まだ試されてはいないものの27戦全勝(17KO)の戦績を残しているWBO2位、WBC5位、ダビド・クェジャル(22=メキシコ)らに注目したい。

WBA世界フライ級タイトルマッチ
ユーリ阿久井政悟対桑原拓

返り討ちの初防衛か 雪辱&戴冠か

 今年1月、22戦全勝を誇ったV6王者のアルテム・ダラキアン(アゼルバイジャン/ウクライナ)を破って戴冠を果たしたWBA世界フライ級王者、ユーリ阿久井政悟(28=倉敷守安)が、前OPBF東洋太平洋同級王者の桑原拓(29=大橋)を相手に初防衛戦に臨む。両者は2021年7月、阿久井の持つ日本王座に桑原が挑むかたちで対戦し、阿久井が10回TKO勝ちを収めている。阿久井が初回にダウンを奪って優位に立つなか桑原が追い上げるという展開になったが、最終回に再び阿久井がダウンを奪ってけりをつけている。世界を舞台に実現することになった3年ぶりの再戦。阿久井が返り討ちにして初防衛を果たすのか、それとも桑原が雪辱して王座奪取を成し遂げるのか。
 阿久井は22戦19勝(11KO)2敗1分の戦績を残しているが、11KOのうち9度は1ラウンドでけりをつけている。その一方、直近の5戦に関しては10回判定勝ち、10回TKO勝ち(桑原戦)、10回判定勝ち、10回判定勝ち、12回判定勝ち(ダラキアン戦)と長期戦が目立つ。日本から世界へと戦いの舞台を変えながらスタミナや経験値を上げてきたことが分かる。ダラキアンを攻略したことで得た自信も大きいものがあるはずだ。
 対する桑原はアマチュアで68戦(50勝10KO18敗)を経験後にプロデビューし、阿久井に敗れたあと2022年10月に世界挑戦経験者のジーメル・マグラモ(フィリピン)を破ってOPBF東洋太平洋王座を獲得。昨年7月の初防衛戦では同じく世界挑戦経験者のウラン・トロハツ(中国)を4回KOで退けている。持ち前のスピードに加えパワーアップを図ってきた成果が出てきたといえる。
 ともに3年前の初戦をベースに今回の再戦の策を練るものと思われる。右ストレートを軸にした阿久井の攻撃力、桑原のスピードとテクニックに要注目だ。

<フライ級トップ戦線の現状> ※2024年6月21日時点


WBA:ユーリ阿久井政悟(28=倉敷守安)
WBC:空位
IBF   :空位
WBO:空位


 IBFとWBOのベルトを保持していたジェシー・ロドリゲス(アメリカ)が両王座を返上してS・フライ級に転向。またWBC王者だったフリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)もこの春に王座を放棄したため、現状ではユーリ阿久井政悟が唯一の王者となっている。
 WBO王座は7月20日、2位の加納陸(26=大成)と3位のアンソニー・オラスクアガ(25=アメリカ)で決定戦が行われることになっている。
 WBCでは1位がフランシスコ・ロドリゲス(31=メキシコ)、2位がクリストファー・ロサレス(29=ニカラグア)、3位にサニー・エドワーズ(28=イギリス)がつけている。さらにWBCはL・フライ級の2団体王者、寺地拳四朗(32=BMB)に王座決定戦出場を呼びかけていると伝えられている。今後の動きに注目したい。
 IBFは17戦全勝(7KO)の1位、アンヘル・アヤラ(24=メキシコ)と20戦全勝(14KO)の3位、デーブ・アポリナリオ(25=フィリピン)で8月に王座決定戦が予定されている。

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(C)NAOKI FUKUDA

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