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WBO世界ライト級王座決定戦 エマヌエル・ナバレッテ対デニス・ベリンチク

4階級制覇か 36歳で初戴冠か
オッズは5対1 ナバレッテ有利

 デビン・ヘイニー(アメリカ)がS・ライト級に転向したため空位になったWBO世界ライト級王座をエマヌエル・ナバレッテ(29=メキシコ)とデニス・ベリンチク(36=ウクライナ)が争う。
WBO世界S・フェザー級王座を保持したまま試合に臨むナバレッテは勝てば4階級制覇となる。一方、2012年ロンドン五輪L・ウェルター級銀メダリストのベリンチクは36歳で初戴冠を狙う。オッズは5対1でナバレッテ有利と出ているが、手数の多いスイッチヒッター、ベリンチクに手を焼く可能性もある。

Sバンタム級、フェザー級、Sフェザー級を制覇したナバレッテ

 ナバレッテは2018年12月にアイザック・ドグボエ(ガーナ/イギリス)に12回判定勝ちを収めてWBO世界S・バンタム級王座を獲得したが、その試合がプロ27戦目で初のアメリカ進出ということもあり当時は無名に近い存在だった。ところが半年後の直接再戦でドグボエを12回TKOで返り討ちにするなど、2019年に4度の防衛を重ねて「戦うチャンピオン」として認知されることになった。その後、2020年にフェザー級、2023年にはS・フェザー級で王座を獲得し、3階級制覇を達成。そして今回、4階級制覇を狙ってベリンチク戦に臨むわけだ。
 170cmの身長と183cmのリーチはフェザー級まではアドバンテージになったが、S・フェザー級では平均的な体格といえた。ナバレッテはS・フェザー級王座決定戦では痛烈なダウンを喫しており、また昨年11月のV2戦では引き分けに終わるなど近況は芳しいとはいえない。約61.2kgが体重上限となるライト級では単に数字だけでなく持ち味のパワー、手数、タフネスなどがどこまで通用するか試されることになりそうだ。戦績は40戦38勝(31KO)1敗1分。

世界選手権準優勝、五輪銀のベリンチク

 ベリンチクは2011年世界選手権と2012年ロンドン五輪L・ウェルター級でそれぞれ銀メダルを獲得したアマチュアのエリートで、ビタリ&ウラディミールのクリチコ兄弟のK2プロモーションと契約を交わして27歳でプロに転向した。10連勝後の2019年4月にはキーウ(ウクライナ)に世界挑戦経験者の荒川仁人(八王子中屋→ワタナベ)を招き、大差の12回判定勝ちを収めた。
 これで勢いを増したベリンチクは直近の5試合で現役の世界ランカー(2人)、元世界ランカー、世界挑戦経験者(2人)を相手に5勝(2KO)して評価を上げた。この間、保持していたWBOインターナショナル王座に加えEBU欧州王座も獲得している。
 戦績は18戦全勝(9KO)。ロシアの軍事侵攻の影響を受け直近の2試合はイギリス、ポーランドで行ったが、それが経験値を上げることにも繋がっている。

試されることが多いナバレッテ 試合は接戦か

 ともに攻撃型で機を見て構えを右から左、左から右に変えるスイッチヒッターである点も同じだ。KO率ではナバレッテが78パーセント、ベリンチクが50パーセントと数字上はパンチ力でナバレッテが上回っているように見える。しかし、ナバレッテは59kgより重い体重で戦うことが初めてで、18戦すべて60kg以上の体重で戦ってきたベリンチクとパワーやタフネスの面で単純比較することはできない。そこは蓋を開けてみないと分からない部分といえる。
 中間距離の戦いを得意とするベリンチクが細かく立ち位置を変えながら接近戦を仕掛け、ナバレッテが応戦する展開が考えられる。接戦になりそうだが、ともにチャンスをつかんでからの連打が速いため一瞬の判断ミスが勝敗を分ける可能性もある。

<ライト級トップ戦線の現状> ※2024年6月13日現在


WBA:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBC:シャクール・スティーブンソン(アメリカ)
IBF   :ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
WBO:空位

 4団体統一王者だったデビン・ヘイニー(25=アメリカ)はS・ライト級に転向したが、それでもタレントは十分に揃っている。WBA王者のジャーボンテイ・デービス(29=アメリカ)、WBC王者のシャクール・スティーブンソン(26=アメリカ)、5月にIBF王座で返り咲きを果たしたワシル・ロマチェンコ(36=ウクライナ)に加え、WBO王座決定戦に出場するエマヌエル・ナバレッテも3階級制覇王者だ。
 スティーブンソンは7月にアルテム・ハルチュニャン(33=アルメニア/ドイツ)との初防衛戦が決まっている。12対1のオッズが出ているように、ここはスティーブンソンが能力の差を存分に見せつける可能性が高い。
 5月にIBF王座を取り戻したロマチェンコは36歳になったが、まだまだ第一線で活躍しそうだ。衰えが見える前に他団体王者との統一戦実現を期待したい。
 ランカー陣も充実している。今回、ナバレッテとWBO王座決定戦を行うデニス・ベリンチクはアマチュア時代に2011年世界選手権準優勝、2012年ロンドン五輪で銀メダルを獲得した選手で、プロでは18戦全勝(9KO)をマークしている。
 このほか30戦全勝(26KO)のウィリアム・セペダ(28=メキシコ)、20戦全勝(16KO)のレイモンド・ムラタラ(27=アメリカ)、さらに東京五輪のライト級銀メダリスト、11戦10勝(7KO)1無効試合のキーション・デービス(25=アメリカ)、そのデービスに勝って金メダルを獲得した3戦全勝(1KO)のアンディ・クルス(28=キューバ)らがトップの座を狙っている。


WBO世界ウェルター級暫定王座決定戦
ジョバンニ・サンティリャン対ブライアン・ノーマン

32歳vs23歳 無敗同士の対決
オッズは4対1 サンティリャン有利

 テレンス・クロフォード(アメリカ)が王座を保持したまま8月に1階級上のWBA世界S・ウェルター級王者、イスラエル・マドリモフ(ウズベキスタン)に挑むことになったことを受け、1位のジョバンニ・サンティリャン(32=アメリカ)と9位のブライアン・ノーマン(23=アメリカ)で暫定王座決定戦が行われる。戦績はサンティリャンが32戦全勝(17KO)、ノーマンが27戦25勝(19KO)2無効試合。無敗同士のカードだ。
 2012年5月にプロデビューしたサンティリャンは2017年7月にNABO北米ウェルター級王座を獲得して世界ランク入りを果たしたが、その後の活動が不活発だったため2019年にはランク外へ。しかし、再びトップ15に戻り、現在はWBO1位、IBF4位、WBC5位、WBA15位にランクされている。サウスポーの攻撃型で、昨年10月のアレクシス・ロチャ(アメリカ)との世界ランカー対決では5回に2度のダウンを奪ったあと6回に右フックから左アッパーを突き上げて仕留めている。
 一方のノーマンはボクサーだった父親のニックネームを受け継ぎ「The Assassin 2(暗殺者)」と呼ばれている。70パーセントのKO率を残しているが、その多くは負け越し選手相手に記録したもので、数字ほどのパワーは感じられない。初10回戦が26戦目で、このときに10回判定勝ちを収めて空位のWBOインターナショナル王座を獲得。今年3月、ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)対阿部麗也(KG大和)の前座で同王座の初防衛戦に臨んだが、バッティングによる負傷のため3回無効試合に終わっている。これが直近の試合だ。
 攻撃型サウスポーのサンティリャンがプレッシャーをかけ、右ボクサーファイター型のノーマンが適度な距離を保ちながら応戦する展開が予想される。4対1のオッズが出ているようにサンティリャンの攻撃力にアドバンテージがあるが、攻め急いで雑になるようだとノーマンのカウンターや左フックを浴びることになりそうだ。

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