WBC暫定世界スーパー・ライト級タイトルマッチ イサック・クルス対ラモント・ローチ
Pitbull 闘犬 vs The Reaper 死神
オッズは11対5でローチ有利
小柄なファイター、WBC暫定世界スーパー・ライト級王者のイサック・クルス(27=メキシコ)に、2階級下のWBA世界スーパー・フェザー級王者、ラモント・ローチ
(30=アメリカ)が挑む。「Pitbull(闘犬)」と呼ばれるクルスが距離を潰して連打を浴びせるのか、それとも「The Reaper(死神)」というニックネームを持つ万能型のローチが飛び級の2階級制覇を成し遂げるのか。階級の異なる王者同士の一戦だが、オッズは11対5で挑戦者のローチ有利と出ている。
身長163cm、リーチ161cmのクルスは体を丸めて前進、距離を詰めて左右フック、アッパーを打ち込む攻撃型だ。世界初挑戦となった4年前のジャーボンテイ・デービス(アメリカ)戦は判定負けだったが、昨年3月には現WBA世界ウェルター級王者のローランド・ロメロ(アメリカ)を8回TKOで下してWBA世界スーパー・ライト級王座を獲得した実績を持っている。そのときは初防衛戦でホセ・バレンスエラ(メキシコ/アメリカ)に敗れたが、今年7月、WBC暫定王座決定戦を制して2度目の戴冠を果たした。戦績は32戦28勝(18KO)3敗1分。
一方のローチは2019年11月にジャメル・ヘリング(アメリカ)の持つWBO世界スーパー・フェザー級王座に挑んだが、大差の12回判定で完敗。2年前、エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)を12回判定で破ってWBA世界スーパー・フェザー級王座を手にしている。戴冠を果たしたとはいえ最終回にダウンを奪っての逆転勝利だったため評価は据え置きだったが、今年3月、デービスの持つWBA世界ライト級王座に挑んで12回ドローという結果を引き出し、スポットライトの当たる存在になった。身長170cm、リーチ173cmとこちらも大柄というわけではないが、バランスよく高い戦力を備えたボクサーファイター型で、長丁場の経験も多い。
ふたりともデービスに善戦しているが、戦前の予想はより良い結果を出しているローチに傾いている。本来ならば両者は2階級異なるが、クルスが小柄である点に加え、前戦でローチがライト級で戦っていることもあり体格面のハンディキャップがないに等しいといっていい。そのためクルスの突進をローチがスキルでさばくと見られているのだ。クルスが噛みつくのか、それともローチが眠らせてしまうのか。接戦になりそうだ。
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
| <クルス> | <ローチ> | |
| 生年月日/年齢 | 1998年5月23日/27歳 | 1995年8月18日/30歳 |
| 出身地 | メキシコシティ(メキシコ) | ワシントンDC(アメリカ) |
| アマチュア実績 | 2013年全米GG大会優勝 | |
| アマチュア戦績 | 85戦73勝(50KO)12敗 | 140戦125勝15敗 |
| プロデビュー | 2015年3月 | 2014年4月 |
| 獲得世界王座 | WBA、WBC暫定Sライト級 | WBA Sフェザー級 |
| 身長/リーチ | 163cm/161cm | 170cm/173cm |
| プロ戦績 | 32戦28勝(18KO)3敗1分 | 28戦25勝(10KO)1敗2分 |
| KO率 | 56% | 36% |
| 世界戦の戦績 | 4戦2勝(1KO)2敗 | 4戦2勝(1KO)1敗1分 |
| 直近の試合 | 2025年7月(10回判定勝ち) | 2025年3月(12回引分) |
| 戦闘スタイル | 右ファイター型 | 右ボクサーファイター型 |
| ニックネーム | 「Pitbull」(闘犬) | 「Reaper」(死神) |
<スーパー・ライト級トップ戦線の現状>
WBA:ゲイリー・アントゥアン・ラッセル(アメリカ)
WBC:スブリエル・マティアス(プエルトリコ)
暫定 :イサック・クルス(メキシコ)
IBF :リチャードソン・ヒッチンス(アメリカ)
WBO:テオフィモ・ロペス(アメリカ)
いろいろな意味で混戦模様となっている。WBA王者のゲイリー・アントゥアン・ラッセル(29=アメリカ)は平岡アンディ(29=大橋)との防衛戦を予定していたが、メインの試合延期にともない先送りになった。11月下旬時点では新たな日程は出ていない。
ラッセルと並ぶ強打者のWBC王者のスブリエル・マティアス(33=プエルトリコ)は1月10日にダルトン・スミス(28=イギリス)との防衛戦を予定しているが、ここにきてドーピング問題が発生。先行きが不透明となっている。
IBF王者のリチャードソン・ヒッチンス(28=アメリカ)はスピードとスキルに長けた長身のボクサー型で、今年6月の初防衛戦では元王者のジョージ・カンボソス(32=オーストラリア)を一方的な8回TKOで退けている。
WBO王者のテオフィモ・ロペス(28=アメリカ)は7度の世界戦を経験している2階級制覇王者で、今年5月にはWBO団体内王座統一戦で暫定王者のアーノルド・バルボサ(32=アメリカ)を下している。ただ、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に勝ったころのような若々しさと輝きは失せてきている印象だ。いまは4階級制覇を狙うWBC世界ライト級王者、シャクール・スティーブンソン(28=アメリカ)の標的になっている。
挑戦に向けて待機中の選手としては平岡アンディ、ダルトン・スミス、ガブリエル・バレンスエラ(31=メキシコ)に辛勝してIBFの挑戦権を獲得したリンドルフォ・デルガド(30=メキシコ)がいる。体重苦のためライト級から上がってきたキーション・デービス(26=アメリカ)は現時点では試合予定が発表されていない。
WBA、IBF、WBO世界ミドル級王座統一戦
エリスランディ・ララ対ジャニベク・アリムハヌリ
技巧派 vs 強打者 サウスポー対決
サウスポーの技巧派として知られるWBA世界ミドル級王者のエリスランディ・ララ(42=キューバ/アメリカ)と、サウスポーのスラッガー、IBF、WBO同級王者のジャニベク・アリムハヌリ(32=カザフスタン)が互いのベルトをかけて戦う。10歳若く、体格と攻撃力で勝るアリムハヌリが9対2で有利と見られている。
ララは「テクニカルだがエキサイティングではない」との理由から対戦相手からもボクシングファンからも敬遠される傾向があったが、実力と実績は申し分ない。37戦31勝(19KO)3敗3分の戦績中、ポール・ウィリアムス(アメリカ)、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、ジャレット・ハード(アメリカ)に喫した三つの敗北は接戦で、いずれも「ララが勝っていた」という声もあったほどだ。42歳になったが、ミドル級に上げてからの世界戦4試合は相手との力量差があったとはいえ全KO勝ちと勢いを増している印象だ。
17戦全勝(12KO)のアリムハヌリは身長、リーチとも182cmと体格に恵まれたサウスポーで、こちらも世界戦で4連続KO勝ち中だ。2022年5月にWBO世界ミドル級王座を獲得したが、その前にはロブ・ブラント(アメリカ)、アッサン・エンダム(カメルーン/フランス)という世界王者経験者を屠っている。2年前にはIBF王者にも勝って2団体統一王者になった。試合ごとに評価が上がっている一方で相手から敬遠される傾向が強くなっており、近年は試合間隔が延び延びとなっている。そんなタイミングで持ち上がったララとの統一戦だけにモチベーションは高いものがあるはずだ。
パワーで勝るアリムハヌリが強引に距離を潰して攻め落としてしまう可能性が高いとみるが、一方で百戦錬磨のララの術中にはまる危険性も決して低くはないように思える。
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
| <ララ> | <アリムハヌリ> | |
| 生年月日/年齢 | 1983年4月11日/42歳 | 1993年4月1日/32歳 |
| 出身地 | グアンタナモ(キューバ) | ジランディ(カザフスタン) |
| アマチュア戦績 | 320戦310勝10敗 | 300戦以上(勝敗数不明) |
| アマチュア実績 | 2005年世界選手権W級優勝 | 2013年世界選手権M級優勝 2015年世界選手権M級ベスト8 2016年リオ五輪M級ベスト8 |
| プロデビュー | 2008年7月 | 2016年10月 |
| 獲得王座 | WBA Sウェルター級 WBAミドル級 |
IBF、WBOミドル級 |
| 世界戦 | 16戦14勝(8KO)1敗1分 | 6戦全勝(5KO) |
| 戦績 | 37戦31勝(19KO)3敗3分 | 17戦全勝(12KO) |
| KO率 | 51% | 71% |
| 身長/リーチ | 175cm/191cm | 182cm/182cm |
| 戦闘スタイル | 左ボクサー型 | 左ボクサーファイター型 |
| ニックネーム | 「アメリカン・ドリーム」 | 「Qazaq Style」 |
WBC世界スーパー・フェザー級タイトルマッチ
オシャキー・フォスター対スティーブン・フルトン
スピーディーな技巧派同士の対決
2年前、来日して井上尚弥(大橋)に8回TKO負けを喫した元WBC、WBO世界スーパー・バンタム級王者、現WBC世界フェザー級王者のスティーブン・フルトン(31=アメリカ)が、さらに階級を上げてオシャキー・フォスター(32=アメリカ)の持つWBC世界スーパー・フェザー級王座に挑む。
ともにスピードとスキルを売りにしている技巧派で、KO率はフォスターが46パーセント、フルトンが33パーセントと決して高くはない。それでも切れがある分、パンチ力はフォスターが上か。体格でもフォスターが上回っており、11体10のオッズ以上に有利とみていいのではないだろうか。フルトンにとって体重を上げることが吉と出るか凶と出るか、蓋を開けてみないと分からない。戦績は、王座奪回後の初防衛を目指すフォスターが26戦23勝(12KO)3敗、3階級制覇を狙うフルトンが24戦23勝(8KO)1敗。
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
| <フォスター> | <フルトン> | |
| 生年月日/年齢 | 1993年9月17日/32歳 | 1994年7月17日/31歳 |
| 出身地 | オレンジ(アメリカ テキサス州) | フィラデルフィア(アメリカ ペンシルベニア州) |
| アマチュア戦績 | 100戦以上(勝敗数不明) | 90戦75勝15敗 |
| プロデビュー | 2012年9月 | 2014年10月 |
| 獲得王座 | WBC Sフェザー級(2度) | WBC、WBO Sバンタム級 WBCフェザー級 |
| 世界戦 | 5戦4勝(1KO)1敗 | 5戦4勝1敗 |
| 戦績 | 26戦23勝(12KO)3敗 | 24戦24勝(8KO)1敗 |
| KO率 | 46% | 33% |
| 身長/リーチ | 174cm/183cm | 169cm/179cm |
| 戦闘スタイル | 右ボクサーファイター型 | 右ボクサー型 |
| ニックネーム | 「Ice Water」 | 「Cool Boy Steph」 |
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
生中継!エキサイトマッチSP
WBC暫定世界S・ライト級タイトルマッチ
イサック・クルス vs ラモント・ローチ
WBA・IBF・WBO世界ミドル級王座統一戦
エリスランディ・ララ vs ジャニベク・アリムハヌリ
WBC世界S・フェザー級タイトルマッチ
オシャキー・フォスター vs スティーブン・フルトン
12/7(日)午前10:00
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