WBA世界フェザー級タイトルマッチ ニック・ボール対TJドヘニー

井上尚弥との対戦熱望のボール
2階級制覇狙うドヘニー
昨年6月、レイモンド・フォード(アメリカ)に2対1の判定で競り勝ってWBA世界フェザー級王座を獲得したニック・ボール(28=イギリス)が、元IBF世界スーパー・バンタム級王者のTJドヘニー(38=アイルランド)を相手に2度目の防衛戦に臨む。1階級下の4団体統一王者、井上尚弥(大橋)との対戦を望んでいるボールは、その井上に7回TKOで敗れているドヘニーを挑戦者に選ぶあたり、ライバル心は相当高いものがあるようだ。
「破壊者」と呼ばれる弾丸ファイター
ボールは2017年6月にプロデビューし、8年間に22戦21勝(12KO)1分の戦績を残している。キャリア前半は大きく負け越している相手との試合がほとんどだったが、2022年から対戦者のレベルを上げてきた。世界ランカーのアイザック・ロー(イギリス)に勝ってWBCシルバー王座を獲得するとV3戦では世界ランカーのルドゥモ・ラマティ(南ア)に12回KO勝ち。さらに次戦では元世界王者のアイザック・ドグボエ(ガーナ/イギリス)にも12回判定勝ちを収めている。昨年3月のWBC世界フェザー級王座挑戦はレイ・バルガス(メキシコ)から2度のダウンを奪ったものの三者三様のドローに終わったが、3ヵ月後にはフォードを破って戴冠を果たした。初防衛戦では経験値の高いロニー・リオス(アメリカ)を一方的に攻め続けて10回TKOで退けている。
約57.1kgが体重上限のフェザー級にあってボールは身長157cm、リーチ165cmと小柄だが、胸板が厚く首も太い。その小さな体を丸めつつ前に出て相手に圧力をかけ、飛び込んで左右フック、アッパーを顔面とボディに打ち分ける。「The Wrecking 破壊者」のニックネームどおりの弾丸ファイターだ。順調に行けば年内にも井上の挑戦を受ける計画が浮上しているだけに、どんなパフォーマンスを見せるのか注目される。
「パワー」のニックネームを持つ"意外性の男"ドヘニー
これから井上との対戦が組まれるかもしれないボールとは逆に、ドヘニーは昨年9月に井上に7回TKOで完敗したばかりだ。しかもフェザー級転向初戦、再起戦でもある。それでもボールの相手に抜擢されたのは、ドヘニーを通じて間接的に井上との比較ができるという話題性があるからと考えられる。
ドヘニーはアマチュアを経て2012年4月にプロデビューし、13年間に31戦26勝(20KO)5敗の戦績を残している。2018年8月に岩佐亮祐(セレス)からIBF世界スーパー・バンタム級王座を奪い、8ヵ月間、王座に君臨した実績がある。しかし、その後の10戦は5勝(5KO)5敗と芳しい数字は残せていない。ただ「Power」のニックネームがあるようにサウスポーから繰り出すパンチは左右とも強く、
中嶋一輝(大橋)やジャフェスリー・ラミド(アメリカ)らホープを討ち取っており意外性のある選手ともいえる。
両者とも慎重なスタートか 中盤からヒートアップの可能性
攻撃型のボールとはいえ、微妙な角度とタイミングで繰り出されるドヘニーのパンチには細心の注意を払うことになるだろう。同じサウスポーでもフォードとはタイプが異なるだけに、井上がそうだったように序盤は慎重に戦うものと思われる。ドヘニーはその間に主導権を握りたいところだが、小柄な王者を相手にこちらも慎重にならざるを得ないかもしれない。試合は中盤あたりからヒートアップしていきそうだ。オッズは12対1、もちろん無敗の王者有利の数字である。近未来に計画されている井上との対戦に向け、ボールがどんな戦いを見せるのか要注目だ。
<フェザー級トップ戦線の現状>
WBA :ニック・ボール(イギリス)
WBC :スティーブン・フルトン(アメリカ)
休養 :レイ・バルガス(メキシコ)
IBF :アンジェロ・レオ(アメリカ)
WBO :ラファエル・エスピノサ(メキシコ)
5人の世界王者を含めて総合的な力量、実績という点で飛び抜けた選手は見当たらない。無敗の戦績と個性的という点では身長157cm、リーチ165cmのWBA王者ニック・ボール(28=イギリス)、身長185cm、リーチ188cmのWBO王者ラファエル・エスピノサ(30=メキシコ)が際立っている。興味深いのは両者とも攻撃型であるという点だ。距離を潰さないことには仕事にならないボールはともかく、エスピノサは長い腕を折り畳んでインサイドからアッパーを突き上げることが多い。この両者の直接対決を見てみたいというファンは少なくないはずだ。ボールが井上尚弥(32=大橋)の対戦相手候補としてクローズアップされているが、エスピノサは5月4日(日本時間5日)、井上と同じリングでエドワード・バスケス(29=アメリカ)を相手に3度目の防衛戦が決まっている。バスケスはパンチ力こそないものの巧妙で執拗な攻撃をしてくるタイプだけに油断は禁物だ。
WBC王者のスティーブン・フルトン(30=アメリカ)は今年2月、スーパー・バンタム級時代に続いてブランドン・フィゲロア(28=アメリカ)を下して2階級制覇を成し遂げた。テクニックが売りの試合巧者だが、パワー不足が目立つ。IBF王者のアンジェロ・レオ(30=アメリカ)は昨年8月、ルイス・アルベルト・ロペス(31=メキシコ)を左フック一発でKO、スーパー・バンタム級に続いて2階級制覇を果たした。しかし、フルトンには完敗しており、ロペス戦ができ過ぎとの声もある。5月に予定される亀田和毅(33=TMK)との初防衛戦で真価が問われることになりそうだ。
ランカーでは主要4団体で上位に名を連ねる15戦全勝(9KO)のブルース・カーリントン(27=アメリカ)が一番手といえる。ただ、現時点では強豪との対戦経験が不足しており、世界挑戦まではもう少し時間がかかるかもしれない。このほか中野幹士(29=帝拳)もそろそろウェーティングサークルに入りそうな勢いだ。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
WBA世界フェザー級タイトルマッチ
ニック・ボール vs TJ・ドヘニー
4/21(月)午後9:00
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