WBA世界L・ヘビー級タイトルマッチ デビッド・ベナビデス対デビッド・モレル
全勝の2階級制覇王者同士の対決
オッズは3対2 ベナビデス有利
29戦全勝(24KO)のWBC暫定世界L・ヘビー級王者のデビッド・ベナビデス(28=アメリカ)と、11戦全勝(9KO)のWBA同級王者、デビッド・モレル(27=キューバ)が拳を交える。馬力のベナビデスか押し切るのか、それともサウスポーのモレルがスピードと連打で凌駕するのか。実力者同士の注目ファイトだ。
20歳で世界王者になったベナビデス
兄弟世界王者としても知られるベナビデスは、ダイエット目的でボクシングを始めたという。父親ホセ・シニアがトレーナー、兄ホセ・ジュニアも世界王者になったほどだからベナビデス自身にも素質があったのだろう。アマチュアで15戦(全勝)したあと16歳8ヵ月でプロデビューすると、いきなり7連続KO勝ちをマーク。2017年9月には20歳の若さでWBC世界S・ミドル級王者になった。
ドーピング違反と体重オーバーで2度も王座を失ったのはいただけないが、2022年5月には3度目の王座を獲得。サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)との対戦を熱望して防衛を重ねながら待機していたが、相手は振り向いてくれなかった。それならばとL・ヘビー級に転向し、昨年6月に元王者のオレクサンダー・グボジーク(ウクライナ)に大差の12回判定勝ちを収めWBC暫定王座を獲得、2階級制覇を成し遂げた。
身長188cm、リーチ189cmの恵まれた体を生かして相手にプレッシャーをかけ、重量感のある左右フック、アッパーを顔面、ボディに打ち分けるファイターで、打たれ強さにも定評がある。
3戦目で世界王座を獲得したモレル
モレルは世界ユース選手権やキューバの国内選手権で優勝するなどアマチュアで活躍後、2019年8月に21歳でプロに転じた。1年後、3戦目でWBA暫定世界S・ミドル級王座を獲得した。これはセンサク・ムアンスリン(タイ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と並ぶ最短記録だが、まったく実績のない相手に2勝したあとの暫定王座決定戦だったため評価が分かれるところだ。しかも初防衛戦として行われる試合では体重オーバーの失態を犯しながら急遽ノンタイトル戦に変更されるなど、統括団体の過剰庇護と批判を浴びたこともある。
次戦を前に正王者に昇格したことも不可解だが、五輪メダリストのヤマグチ・ファルカン(ブラジル)らを相手に6連続KO防衛を果たして口うるさい輩を黙らせていった。ベナビデス同様、アルバレスとの対戦を待っていたが実現せず、L・ヘビー級に転向。昨年8月にWBA王座を獲得した。
こちらも身長185cm、リーチ199cmと大柄で、左構えからテンポよくスピーディーな右ジャブ、左ストレート、コンビネーションに繋いでいく攻撃型だ。
前半型のモレル、中盤からペース上げるベナビデス
序盤から目の離せない試合になりそうだ。サウスポーのモレルがスピードを生かして攻め込む機会をうかがえば、ベナビデスはガードを固めながら前に出て距離を潰そうと試みるはず。モレルが前半に強く、ベナビデスがスロースタートの傾向があることを考えると、まずはモレルのペースで試合が進んでいく可能性が高い。早い段階でベナビデスの防御が破綻するようならばモレルの前半KO勝ちも考えられる。WBC暫定王者が大きなダメージを被ることなく中盤を迎えた場合、ベナビデスがペースを上げて馬力で押し込んでいく展開になりそうだ。その場合、モレルの体力、耐久力が試されることになるだろう。それでも決着がつかないときは終盤勝負になりそうだ。オッズは3対2、ベナビデス有利と出ている。
<デビッド・ベナビデス 全世界戦>
2017年9月 | ロナルド・ガブリル (WBC世界S・ミドル級王座獲得) |
〇12回判定 | |
2018年2月 | ロナルド・ガブリル ※のちにドーピング違反のため王座剥奪 |
〇12回判定 | 防衛1 |
2019年9月 | アンソニー・ディレル (WBC世界S・ミドル級王座獲得) |
〇9回KO | |
2020年8月 | ロアメル・アングロ ※体重超過のため計量で失格 王座を失う |
〇10回終了TKO | |
2022年5月 | デビッド・レミュー (WBC暫定世界S・ミドル級王座獲得) |
〇3回TKO | |
2023年3月 | ケイレブ・プラント | 〇12回判定 | 防衛1 |
2023年11月 | デメトリアス・アンドラーデ | 〇6回終了TKO | 防衛2 |
2024年6 月 | オレクサンダー・グボジーク (WBC暫定世界L・ヘビー級王座獲得) |
〇12回判定 |
<デビッド・モレル 全世界戦>
2020年8月 | レノックス・アレン (WBA暫定世界S・ミドル級王座獲得 ※のちに正王者に昇格) |
〇12回判定 | |
2021年6月 | マリオ・カサレス | 〇1回KO | 防衛1 |
2021年12月 | アランテス・フォックス | 〇4回TKO | 防衛2 |
2022年6月 | カルビン・ヘンダーソン | 〇4回TKO | 防衛3 |
2022年11月 | アイドス・イェルボシーヌリー | 〇12回KO | 防衛4 |
2023年4月 | ヤマグチ・ファルカン | 〇1回KO | 防衛5 |
2023年12月 | セナ・アグベコ | 〇2回TKO | 防衛6 |
2024年8月 | ラディボヤ・カライジッチ (WBA世界L・ヘビー級王座獲得) |
〇12回判定 |
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
<ベナビデス> | <モレル> | |
生年月日 | 1996年12月17日/28歳 | 1998年1月18日/27歳 |
出身地 | アメリカ・フェニックス | キューバ・サンタクララ |
アマチュア実績 | 2016年世界ユース選手権優勝 | |
アマチュア戦績 | 15戦全勝 | 135戦130勝5敗 |
プロデビュー | 2013年8月 | 2019年8月 |
獲得王座 | WBC S・ミドル級 WBC暫定L・ヘビー級 |
WBA S・ミドル級 WBA L・ヘビー級 |
プロ戦績 | 29戦全勝(24KO) | 11戦全勝(9KO) |
KO率 | 83% | 82% |
世界戦の戦績 | 8戦全勝(4KO) ※自身の体重超過の試合含む |
8戦全勝(6KO) |
身長/リーチ | 188cm/189cm | 185cm/199cm |
戦闘スタイル | 右ファイター型 | 左ボクサーファイター型 |
ニックネーム | 「The Monster Bandera Roja」 | |
トレーナー | ホセ・ベナビデス・シニア(父) | ロニー・シールズ |
<L・ヘビー級トップ戦線の現状>
WBAスーパー :アルツール・ベテルビエフ(ロシア/カナダ)
WBA :デビッド・モレル(キューバ)
WBC :アルツール・ベテルビエフ(ロシア/カナダ)
WBC暫定 :デビッド・ベナビデス(アメリカ)
IBF :アルツール・ベテルビエフ(ロシア/カナダ)
WBO :アルツール・ベテルビエフ(ロシア/カナダ)
WBO暫定 :ジョシュア・ブアチ(イギリス)
長いことアルツール・ベテルビエフ(40=ロシア/カナダ)とドミトリー・ビボル(34=キルギス/ロシア)の並走が続いていたが、両者は昨年10月にサウジアラビアのリヤドで対戦し、際どい判定でベテルビエフの手が挙がった。ベテルビエフが4団体王座を束ねたわけだが、「ビボルが勝っていた」という声も多く、それを受けて2月22日(日本時間23日)に再戦する予定だ。
一方、2月1日(日本時間2日)にはWBC暫定王者のデビッド・ベナビデスとWBAレギュラー王者のデビッド・モレルが拳を交える。勝者がベテルビエフ対ビボルの勝者と対戦する流れであることは確実で、いわば2月に行われる2試合は最強決定戦に向けた準決勝という位置づけになりそうだ。考えられる決勝カードはベテルビエフ対ベナビデス、ベテルビエフ対モレル、ビボル対ベナビデス、ビボル対モレルの4つ。しばらくはL・ヘビー級トップ戦線から目が離せない状況といえる。
もうひとつ、ベテルビエフ対ビボルの前座で行われるWBO暫定王者のジョシュア・ブアチ(31=ガーナ/イギリス)対カラム・スミス(34=イギリス)にも要注目だ。
WBC世界フェザー級タイトルマッチ
ブランドン・フィゲロア対スティーブン・フルトン
階級を変えて実現する再戦
今回は4対3でフィゲロア有利の予想
WBC世界フェザー級王者のブランドン・フィゲロア(28=アメリカ)が、同級2位にランクされるスティーブン・フルトン(30=アメリカ)の挑戦を受ける。両者はS・バンタム級時代の2021年11月27日にアメリカのネバダ州ラスベガスで対戦し、WBO王者だったフルトンがWBC王者のフィゲロアに2対0の際どい判定勝ちを収めている(フィゲロアはWBA王座も保持していたがリングインと同時に剥奪)。それから約3年2ヵ月、フェザー級で再び拳を交えることになった。
フィゲロアは身長175cm、リーチ184cmの大きな体を利して相手に詰め寄り、左右フックやアッパーを顔面とボディに連射していく攻撃型で、受けにも強い。8度の世界戦を経験しており、充実期に入った印象だ。
対するフルトンは身長169cm、リーチ179cmとこちらも恵まれた体格の持ち主といえる。しかし、井上尚弥(大橋)に8回TKO負けを喫してフェザー級に転向したものの、昨年9月の再起戦では世界ランカーのカルロス・カストロ(アメリカ)の右ストレートを浴びて5回にダウン。辛うじて2対1の10回判定勝ちを収めている。少なからず不安を抱えての転級第2戦となる。
いつものようにフィゲロアが大きな体を生かして圧力をかけ、距離を潰して連打を繰り出していくものと思われる。パンチの精度は高くないものの休みなく繰り出されるため相手はいつの間にか乱気流に飲み込まれてしまう。それは初戦でフルトンも経験済みだ。それでも前回は巧みに迎え撃ってジャッジの支持を得ており、今回も対応策は練っているものと思われる。ただ、井上に倒され、再起戦でもダウンを喫したあとの試合だけに不安を払拭できているか気になるところだ。迷いが表情や動きに出てしまうようだとフィゲロアの乱打にさらされる可能性がある。
初戦は10対3でフルトン有利とみられていたが、今回は4対3と数字は接近しているもののフィゲロア有利と出ている。
<ブランドン・フィゲロア 全世界戦>
2019年4月 | ヨンフレス・パレホ (WBA暫定世界S・バンタム級王座獲得 のちに正王者に昇格) |
〇8回終了TKO | |
2019年8月 | ハビエル・チャコン | 〇4回KO | 防衛1 |
2019年11月 | フリオ・セハ | △12回引分 | 防衛2 |
2020年9月 | ダミエン・バスケス | 〇10回TKO | 防衛3 |
2021年5月 | ルイス・ネリ (WBC世界S・バンタム級王座獲得) |
〇7回KO | 防衛4 |
2021年11月 | スティーブン・フルトン (WBC世界S・バンタム級王座失う ※WBA王座はリングイン時に剥奪) |
●12回判定 | |
2023年3月 | マーク・マグサヨ (WBC暫定世界フェザー級王座獲得 のちに正王者に昇格) |
〇12回判定 | |
2024年5月 | ジェシー・マグダレノ | 〇9回KO | 防衛1 |
<スティーブン・フルトン 全世界戦>
2021年1月 | アンジェロ・レオ (WBO世界S・バンタム級王座獲得) |
〇12回判定 | |
2021年11月 | ブランドン・フィゲロア (WBC世界S・バンタム級王座獲得=統一) |
〇12回判定 | 防衛1 |
2022年6月 | ダニエル・ローマン | 〇12回判定 | 防衛2 |
2023年7月 | 井上尚弥 (WBC・WBO世界S・バンタム級王座失う) |
●8回TKO |
<フィゲロア> | <フルトン> | |
生年月日 | 1996年12月29日/28歳 | 1994年7月17日/30歳 |
出身地 | アメリカ・ウェスラコ | アメリカ・フィラデルフィア |
アマチュア戦績 | 50戦33勝17敗 | 90戦75勝15敗 |
プロデビュー | 2015年5月 | 2014年10月 |
獲得王座 | WBA,WBC S・バンタム級 WBCフェザー級 |
WBC,WBO S・バンタム級 |
プロ戦績 | 27戦25勝(19KO)1敗1分 | 23戦22勝(8KO)1敗 |
KO率 | 70% | 35% |
世界戦 | 8戦6勝(5KO)1敗1分 | 4戦3勝1敗 |
身長/リーチ | 175cm/184cm | 169cm/179cm |
戦闘スタイル | 右ファイター型 | 右ボクサー型 |
ニックネーム | 「The Heartbreaker」 | 「Cool Boy Steph」 |
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
WBA世界L・ヘビー級タイトルマッチ
デビッド・ベナビデス vs デビッド・モレル
WBC世界フェザー級タイトルマッチ
ブランドン・フィゲロア vs スティーブン・フルトン
2/2(日)午前10:00 生中継
2/3(月)午後9:00
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