WBO世界S・フェザー級タイトルマッチ エマヌエル・ナバレッテ対オスカル・バルデス
1年4ヵ月ぶりの再戦が団体内王座統一戦として実現
オッズは5対2でナバレッテ有利
3階級制覇を成し遂げているWBO世界S・フェザー級王者のエマヌエル・ナバレッテ(29=メキシコ)と、2階級制覇の実績を持つ同暫定王者のオスカル・バルデス(33=メキシコ)が団体内王座統一戦で拳を交える。両者は昨年8月、ナバレッテの王座にバルデスが挑むかたちで対戦。ナバレッテが119対109、118対110、116対112の大差の12回判定勝ちを収めている。1年4ヵ月ぶりの再戦のオッズは5対2で正王者有利と出ている。
14度の世界戦を経験している3階級制覇のナバレッテ
ナバレッテは2018年12月にWBO世界S・バンタム級王座を獲得後、14度の世界戦をこなし12勝(8KO)1敗1分の戦績を残している。S・バンタム級時代には10ヵ月の短期間に5連続KO防衛を果たすなど無敵ぶりを発揮していたが、コロナ禍のなかフェザー級上げてからは試合間隔が延び、かつ決着も長引くことが多くなった。昨年2月、リアム・ウィルソン(オーストラリア)に9回TKO勝ちを収めて現在の王座を獲得したが、4回に痛烈なダウンを喫するなど不安を感じさせたものだ。バルデスとの初戦はウィルソン戦の半年後ということもあり、オッズは13対8で挑戦者有利と出ていたほどだった。しかし、体格で勝るナバレッテが有効打で上回り、バルデスの右目を塞いで大差で勝利をものにした。
これで評価を保ったナバレッテだが、3ヵ月後のロブソン・コンセイサン(ブラジル)戦は再び苦戦を強いられた。なんとか引き分けで王座を守ったが、2度のダウンを奪っていなければベルトを手放しているところだった。悪い流れは今年5月に行われたWBO世界ライト級王座決定戦でも続いた。12年のプロキャリアで最重量の61.2キロで計量を終えたナバレッテは、左構えで戦うデニス・ベリンチク(ウクライナ)に手を焼き主導権を握れない12回判定負け、4階級制覇を阻まれた。ただ、S・フェザー級王座は保持したままだったため今回の試合を迎えることになった。14度の世界戦を含む戦績は41戦38勝(31KO)2敗1分。
2階級制覇のバルデスは12度の世界戦を経験
バルデスはアマチュア時代に2008年北京大会、2012年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たし、世界選手権にも2度出場した実績を持っている。2012年11月にプロに転向し、4年後にWBO世界フェザー級王座、2021年には長期政権を誇ったWBC世界S・フェザー級王者のミゲール・ベルチェルト(メキシコ)を衝撃的な10回KOで下して2階級制覇を成し遂げた。
しかし、WBO王者のシャクール・スティーブンソン(アメリカ)に初黒星を喫しWBC王座を失った。昨年8月にはナバレッテに挑んだが、大差の判定で敗れた。今年3月、ナバレッテがWBO世界ライト級王座決定戦に出場することにともない設置された暫定王座の決定戦に出場し、かつてナバレッテに善戦したウィルソンに7回TKO勝ちを収めた。12度(10勝5KO2敗)の世界戦を含む戦績は34戦32勝(24KO)2敗。
再起戦のナバレッテ 前戦で暫定王座獲得のバルデス
1年4ヵ月ぶりの再戦となるが、興味深いのは初戦のオッズが13対8で挑戦者のバルデス有利だったのに対し、王者同士の対戦となる今回は5対2でナバレッテ有利と出ている点だ。直近の試合で敗れているナバレッテとKO勝ちを収めているバルデス。近況は暫定王者の方が良いが、やはり昨年8月の直接対決の印象がオッズに反映されているようだ。つまり今回も体格で勝るナバレッテがバルデスの持ち味を封じつつポイントを重ねるのではないかと見られているのだ。バルデスがその予想を覆すためには初戦以上の鋭い踏み込みやパンチの精度が求められることになる。被弾も少なく抑える必要がある。一方、ナバレッテ陣営は初戦をベースにして戦うことになるだろうが、先のベリンチク戦で上げた体重を戻すことを含め心身のコンディション調整が課題といえる。ナバレッテ有利は動かないが、この2年ほどは隙が多くなってきているのも事実。雑な戦い方になった場合は、暫定王者に雪辱を許す可能性もありそうだ。
<エマヌエル・ナバレッテの全世界戦> 14戦12勝(8KO)1敗1分
2018年12月8日 アイザック・ドグボエ 〇12回判定
(WBO世界S・バンタム級王座獲得)
2019年5月11日 アイザック・ドグボエ 〇12回TKO 防衛1
2019年8月17日 フランシスコ・デ・バカ 〇3回KO 防衛2
2019年9月14日 ジャン・ミゲール・エロルデ 〇4回TKO 防衛3
2019年12月7日 フランシスコ・オルタ 〇4回KO 防衛4
2020年2月22日 ジェオ・サンティシマ 〇11回TKO 防衛5
2020年10月9日 ルーベン・ビラ 〇12回判定
(WBO世界フェザー級王座獲得)
2021年4月24日 クリストファー・ディアス 〇12回TKO 防衛1
2021年10月15日 ジョエト・ゴンザレス 〇12回判定 防衛2
2022年8月20日 エデュアルド・バエス 〇6回KO 防衛3
2023年2月3日 リアム・ウィルソン 〇9回TKO
(WBO世界S・フェザー級王座獲得)
2023年8月12日 オスカル・バルデス 〇12回判定 防衛1
2023年11月16日 ロブソン・コンセイサン △12回引分 防衛2
2024年5月18日 デニス・ベリンチク ●12回判定
(WBO世界ライト級王座決定戦)
<オスカル・バルデスの全世界戦> 12戦10勝(5KO)2敗
2016年7月23日 マティアス・ルエダ 〇2回TKO
(WBO世界フェザー級王座獲得)
2016年11月5日 大澤宏晋 〇7回TKO 防衛1
2017年4月22日 ミゲール・マリアガ 〇12回判定 防衛2
2017年9月22日 ジェネシス・セルバニア 〇12回判定 防衛3
2018年3月10日 スコット・クィッグ 〇12回判定 防衛4
2019年2月2日 カーマイン・トマソーネ 〇7回KO 防衛5
2019年6月8日 ジェイソン・サンチェス 〇12回判定 防衛6
2021年2月20日 ミゲール・ベルチェルト 〇10回KO
(WBC世界S・フェザー級王座獲得)
2021年9月10日 ロブソン・コンセイサン 〇12回判定 防衛1
2022年4月30日 シャクール・スティーブンソン ●12回判定
(WBC世界S・フェザー級王座失う=WBOとの王座統一戦)
2023年8月12日 エマヌエル・ナバレッテ ●12回判定
(WBO世界S・フェザー級王座挑戦)
2024年3月29日 リアム・ウィルソン 〇7回TKO
(WBO暫定世界S・フェザー級王座獲得)
<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>
ナバレッテ | バルデス | |
生年月日 | 1995年1月17日/29歳 | 1990年12月22日/33歳 |
出身地 | メキシコ・メキシコシティ | メキシコ・ノガレス |
アマチュア実績 | 2008年北京五輪出場 | |
2012年ロンドン五輪バンタム | ||
級ベスト8 | ||
アマチュア戦績 | 204戦177勝27敗 | |
プロデビュー | 2012年2月 | 2012年11月 |
獲得王座 | WBO S・バンタム級 | |
WBO フェザー級 | WBO フェザー級 | |
WBO S・フェザー級 | WBC S・フェザー級 | |
プロ戦績 | 41戦38勝(31KO)2敗1分 | 34戦32勝(24KO)2敗 |
KO率 | 76% | 71% |
世界戦の戦績 | 14戦12勝(8KO)1敗1分 | 12戦10勝(5KO)2敗 |
身長/リーチ | 170cm/183cm | 166cm/168cm |
ニックネーム | 「バケロ(カウボーイ)」 | |
戦闘スタイル | 右ファイター型 | 右ファイター型 |
<S・フェザー級トップ戦線の現状>
WBA :ラモント・ローチ(アメリカ)
WBA暫定:アルバート・バティルガジエフ(ロシア)
WBC :オシャキー・フォスター(アメリカ)
IBF :アンソニー・カカチ(アイルランド)
WBO :エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)
WBO暫定:オスカル・バルデス(メキシコ)
フェザー級、S・ライト級、ウェルター級などとともに、このクラスも混戦模様といえる。WBA王者のラモント・ローチ(29=アメリカ)は来年3月にライト級のWBA王者、ジャーボンテイ・デービス(30=アメリカ)に挑戦する方向で最終調整中と伝えられ、しばらく防衛戦から遠ざかりそうだ。WBA暫定王者のアルバート・バティルガジエフ(26=ロシア)はプロで3勝後に出場した2021年東京五輪フェザー級で金メダルを獲得したエリートで、ここまで11戦全勝(8KO)を収めている。まだ暫定王座の防衛戦日程は出ていない。
WBCはオシャキー・フォスター(31=アメリカ)がロブソン・コンセイサン(36=ブラジル)から王座を取り戻したばかりだ。スピードのあるスイッチヒッターで世界の舞台に出てからひと皮むけた印象もあるが、さらなる飛躍を期待したい。
IBF王者のアンソニー・カカチ(35=イギリス/アイルランド)は5月のジョー・コルディナ(32=イギリス)戦ではベストパフォーマンスといえる戦いぶりで番狂わせの8回TKO勝ち、新王者になった。しかし、28戦27勝(27KO)1敗の1位、エデュアルド・ヌニェス(27=メキシコ)との対戦を課したIBFの指示に背いて9月にジョシュ・ウォーリントン(34=イギリス)戦を強行(12回判定勝ち)。3位には力石政法(30=大橋)が控えているだけに、IBFとカカチの今後の判断が注目される。
実績では3階級制覇を成し遂げているWBO王者エマヌエル・ナバレッテと、2階級制覇のWBO暫定王者オスカル・バルデスのふたりが他を圧倒している。その両雄が12月7日(日本時間8日)、アメリカのアリゾナ州フェニックスで団体内王座統一戦として拳を交える。勝者がこの階級の混戦状態から一歩抜け出すものと思われる。
元IBF王者の尾川堅一(36=帝拳)、フェザー級から転向してきた前WBA王者のレイモンド・フォード(25=アメリカ)、元WB王者のマーク・マグサヨ(29=フィリピン)、30歳を過ぎてからプロデビューした2016年リオデジャネイロ五輪戦士のチャーリー・スアレス(36=フィリピン)らにもチャンスがありそうだ。
WBO世界フェザー級タイトルマッチ
ラファエル・エスピノサ対ロベイシ・ラミレス
立場を変えて実現する1年ぶりの再戦
総合力は互角 今回も接戦か
両者は昨年12月、今回とは逆の立場で対戦し、挑戦者だったラファエル・エスピノサ(30=メキシコ)がロベイシ・ラミレス(30=キューバ)に12回判定勝ちを収めて新王者になった。前半は体格で勝るエスピノサがリードしたが、5回に右フックを浴びて痛烈なダウン。それを機にサウスポーのラミレスが中盤を支配して混戦を抜け出したが、12回に今度は挑戦者がダウンを奪い返すという熱戦だった。採点は114対112、115対111でジャッジ二者がエスピノサを支持、もうひとりは113対113のイーブンだった。「年間最高試合」の声が出るほどの激闘だった。
劇的な逆転勝利を収めて新王者になったエスピノサは今年6月、セルヒオ・チリノ・サンチェス(メキシコ)から3度のダウンを奪って4回TKOの圧勝で初防衛に成功。戦績を25戦全勝(21KO)に伸ばしている。対するラミレスも6月に再起戦に臨み、WBO6位、IBF7位にランクされるブランドン・ベニテス(メキシコ)に7回TKO勝ちを収めている。五輪2大会連続金メダリストでもあるラミレスは16戦14勝(9KO)2敗。
1年前の初戦時はエスピノサが無名だったうえに世界的な実績が皆無だったこともあり、8対1でラミレス有利というオッズが出ていた。今回もラミレス有利は変わらないものの11対8と接近した数字になっている。初戦はエスピノサが勝ったが、身長185cm/リーチ188cmのエスピノサ対策が不十分だったことがラミレスの敗因で、いまも地力は前王者の方が上とみるファンが多いということか。
エスピノサが前に出ながら左右フックにアッパーを交えた攻撃で積極的に仕掛け、ラミレスがスピードと正確なパンチで迎え撃つ展開が予想される。今回もスリリングな試合になりそうだ。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
WBO世界S・フェザー級タイトルマッチ
エマヌエル・ナバレッテvsオスカル・バルデス
WBO世界フェザー級タイトルマッチ
ラファエル・エスピノサvsロベイシ・ラミレス
12/9(月)午後9:00
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