IBF世界ミドル級タイトルマッチ ジャニベク・アリムハヌリ対アンドレイ・ミカイロビッチ
仕切り直しの全勝対決
舞台は挑戦者の準ホーム
IBFとWBOの2団体統一世界ミドル級王者のジャニベク・アリムハヌリ(31=カザフスタン)が、IBF3位、WBO4位のアンドレイ・ミカイロビッチ(26=ロシア/ニュージーランド)の挑戦を受ける。もともと両者は7月13日にアメリカのネバダ州ラスベガスで対戦する予定だったが、前日計量の際にアリムハヌリが脱水症状で病院に収容されたため試合がキャンセルになった経緯がある。今回、舞台をミカイロビッチの準ホームともいえるオーストラリアに移し、IBF王座のみをかけた全勝対決が行われる。
7月の試合を前に脱水症状で入院したアリムハヌリ
アリムハヌリはアマチュア時代に2016年リオデジャネイロ五輪ミドル級ベスト8、2013年世界選手権ミドル級優勝、2015年世界選手権ミドル級ベスト8入りするなど活躍後にカザフスタンでプロ転向を果たした。デビュー3戦目から主戦場をアメリカに移し、地域王座を獲得するなどして世界15傑入り。元世界王者のロブ・ブラント(アメリカ)、アッサン・エンダム(カメルーン/フランス)連破を経て、2022年5月にWBO暫定世界ミドル級王座を獲得した。初防衛戦を前に正王者に昇格し、2度防衛後の昨年10月にはIBF王者のビンセンツォ・グアルティエリ(ドイツ)に6回TKOで圧勝、王座を統一した。戦績は15戦全勝(10KO)。
前述のとおりアリムハヌリはミカイロビッチを相手に7月に両王座の防衛戦を挙行する予定だったが、計量時に脱水症状を起こし緊急入院する事態となり試合は中止。改めて興行権入札が行われ、ミカイロビッチ側が落札してオーストラリア開催が決まった。
挑戦者はサウスポー対策が万全?
ミカイロビッチはロシアのサンクトペテルブルクの生まれだが、アマチュア時代からニュージーランドで活動している。プロデビューは2018年4月で、6年半で21戦全勝(13KO)の戦績を収めている。S・ウェルター級のニュージーランド国内王座、IBFパンパシフィック王座、WBOグローバル王座を獲得してランクを上げてきたが、世界的な強豪との対戦は皆無だ。
王者と同じ182cmの長身選手で、左ジャブから右ストレートに繋げ、返しの左フックを狙う正統派といえる。アリムハヌリへの挑戦をイメージしてか2022年以降の5戦のうち3試合でサウスポーと拳を交えており、十分な対策を練ってきたものと思われる。しかし、昨年4月の試合では初回にダウンを喫するなど防御面と打たれ強さには疑問符がつく。
13対2のオッズ 圧倒的に王者有利
戦力的にはまとまっているミカイロビッチだが、世界のトップレベルとの対戦がないためアリムハヌリを相手にどれだけ戦えるのかは蓋を開けてみないと分からない。準ホームといえる地で逃げ腰の戦いはできないため、ミカイロビッチが初回から積極的に仕掛けて出ると予想される。極端に斜に構えるサウスポーのアリムハヌリにとっても相手が出てきてくれた方が好都合というものだ。中間距離でパンチを交換する場面が多くなりそうだが、左ストレート、右フックに加え死角から突き上げる左アッパーなど王者の攻撃に挑戦者が対応できるかどうか。地の利があるミカイロビッチだが、オッズは13対2でアリムハヌリ有利と出ている。
<ミドル級トップ戦線の現状>
WBA:エリスランディ・ララ(キューバ/アメリカ)
WBC:カルロス・アダメス(ドミニカ共和国)
IBF :ジャニベク・アリムハヌリ(カザフスタン)
WBO:ジャニベク・アリムハヌリ(カザフスタン)
サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)、ジャモール・チャーロ(アメリカ)、村田諒太(帝拳)らが王座に君臨していたのは2000年前後のこと。コロナ禍を挟み、この4年ほどでトップの顔ぶれは大きく変わった。3王者のなかで最も長く王位にいるのがWBAのエリスランディ・ララ(41=キューバ/アメリカ)だ。サウスポーの技巧派だが、9月のダニー・ガルシア(36=アメリカ)戦を含め直近の4試合をすべてKO(TKO)で終わらせている。ただ、このところ力量の接近した相手との対戦が少ないのが惜しまれる。
ジャモール・チャーロ(34=アメリカ)に代わりWBC正王者に認定されたカルロス・アダメス(30=ドミニカ共和国)はバランスのとれた戦力を備えているが、2022年以降は年に1試合というスローペースになっている。もっとアクティブな活動が期待される。
IBFとWBOの王座を持つジャニベク・アリムハヌリは「ゴロフキンの後継者」といわれるサウスポーの強打者で、さらにスケールアップする可能性を秘めた選手といえる。今回のアンドレイ・ミカイロビッチ戦をクリアしたあと、誰と戦うのか注目していきたい。
WBCとWBOで1位にランクされる21戦全勝(17KO)のハムザ・シェラーズ(25=イギリス)は次期チャンピオン候補と目されている。このところ15連続KO勝ちと勢いを増しており、ララ、アダメス、アリムハヌリを脅かす存在といえる。
シェーン・モズリー・ジュニア(33=アメリカ)、クリス・ユーバンク・ジュニア(35=イギリス)と2世が上位につけているが、現状ではやや話題性が先行している印象は拭えない。
WBA世界フェザー級タイトルマッチ
ニック・ボール対ロニー・リオス
攻撃型同士が激突
「破壊者」ボールが凱旋防衛か
今年6月、サウジアラビアのリヤドでレイモンド・フォード(アメリカ)に2対1の判定勝ちを収めてWBA世界フェザー級王座を獲得したニック・ボール(27=イギリス)の初防衛戦。ロニー・リオス(34=アメリカ)はS・バンタム級時代から数えて3度目の世界挑戦となる。ボールが凱旋防衛を果たすのか、それともリオスが悲願の戴冠を成し遂げるのか。オッズは9対1、地の利もあるボールが圧倒的有利と出ている。
ボールは身長157cm、リーチ165cmとフェザー級のなかでは小柄だが、その小さな体で相手にプレッシャーをかけながら距離を詰めて左右フックを顔面、ボディに打ち分ける。一方で自分は両グローブで防御を固めると顔面もボディも隠れてしまう。構えを右から左にスイッチすることもある。ニックネームは「The Wrecking」破壊者。スピードやパワーには飛び抜けたものは感じられないが、実に戦いにくい相手といえる。直近の3戦で12ラウンドをフルに戦い切っており、スタミナも問題ない。21戦20勝(11KO)1分。
リオスは2008年10月にプロデビューした34歳のベテランで、これが3度目の世界挑戦となる。過去2度はS・バンタム級での挑戦で、7年前にレイ・バルガス(メキシコ)に12回判定負け、2年前にはムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に12回TKOで敗れている。今年4月の再起戦でフェザー級に転向し5回KO勝ちを収めている。8月にスティーブン・フルトン(アメリカ)戦が内定していたがキャンセルになり、代わりに今回のチャンスが舞い込んできた。中間距離での打撃戦で持ち味を発揮する好戦派だが、やや攻防分離の傾向がある。38戦34勝(17KO)4敗。
地元の声援を背にボールが積極的に攻め、リオスが応戦するパターンが予想される。リオスが番狂わせを起こすためには前半で王者にダメージを与えるなど早い時点で主導権を握ることが求められる。
◆[WOWOW エキサイトマッチ 放送・配信情報]◆
IBF世界ミドル級タイトルマッチ
ジャニベク・アリムハヌリ vs アンドレイ・ミカイロビッチ
WBA世界フェザー級タイトルマッチ
ニック・ボール vs ロニー・リオス
11/18(月)午後9:00
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