WBC世界バンタム級タイトルマッチ 中谷潤人対ビンセント・アストロラビオ
長身サウスポー vs 番狂わせの男
3階級制覇王者に死角なし
今年2月、アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)を6回TKOで下してWBC世界バンタム級王座を獲得し、フライ級、S・フライ級と合わせて3階級制覇を成し遂げた中谷の初防衛戦。
身長173cm、リーチ174cmの中谷はバンタム級でも恵まれた体格の持ち主で、懐深く構えるサウスポーの強打者ということもあり相手にとっては戦いにくいタイプといえる。右のリードブローは正確で、それから繋がる左はストレート、フック、アッパーと角度が違ううえ長、中、短と長さも異なる。S・フライ級王座を獲得したアンドリュー・マロニー(オーストラリア)戦のように一発で仕留めるパワーもあれば連打の回転力もある。26歳という年齢を考えると、本領発揮はまだまだ先ということになりそうだ。
挑戦者のアストロラビオは2019年4月にWBOオリエンタル王座を獲得して世界15傑入り。2022年2月には元2階級制覇王者のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)に殊勲の判定勝ちを収め知名度を上げた。次戦でも上位ランカーのニコライ・ポタポフ(ロシア)に6回KO勝ちを収め、2023年5月にはジェイソン・マロニー(オーストラリア)とのWBO世界バンタム級王座決定戦に臨んだが、僅少差の判定で敗れた。昨年8月、ナワポン・ソールンビサイ(タイ)とのWBC挑戦者決定戦で11回TKO勝ちを収め、今回の舞台に駒を進めてきた。破壊力のある右は要注意だ。
アストロラビオは「Asero(鋼鉄、意志の強い男)」あるいは「番狂わせの男」と呼ばれるが、今回のオッズは20対1。中谷に死角はなさそうだ。
<バンタム級トップ戦線の現状>
WBA:井上拓真(大橋)
WBC:中谷潤人(M.T)
IBF :西田凌佑(六島)
WBO:武居由樹(大橋)
日本のジム所属選手が主要4団体の世界王座を独占している。昨年4月に戴冠を果たした井上拓真(28=大橋)以外は、中谷潤人(26=M.T)が2月、西田凌佑(28=六島)と武居由樹(28=大橋)は5月と、いずれも今年に入って王座を獲得している。特にプロで9戦の西田と10戦の武居に関しては評価を定める段階ではないともいえる。その分、大きな伸びしろと可能性もあるわけで、先々が楽しみだ。
ランカーも日本人選手が多く、すでに井上は5月に石田匠(井岡)の挑戦を退け、10月には堤聖也(29=角海老宝石)を相手にV3戦に臨むことになっている。武居も9月に比嘉大吾(29=志成)との激闘を制し、初防衛を果たしている。
キックボクシングから転向して順調に白星を重ねている那須川天心(26=帝拳)は一戦ごとにプロボクシングの水に慣れてきている。今年1月にはWBA14位のルイス・ロブレス(メキシコ)を3回終了時点で棄権に追い込むなど著しい成長を感じさせている。
同じ帝拳ジムの日本王者、増田陸(26)は左ストレートに一撃KOの威力を秘めたパンチャーで、経験値を上げていけば王者たちを脅かす存在になりそうだ。
海外選手では28戦全勝(18KO)のダビド・クェジャル(22=メキシコ)、ペッチ・ソー・チットパッタナ(30=タイ)、アントニオ・バルガス(28=アメリカ)らが上位にいる。
120ポンド契約10回戦
那須川天心対ジョナサン・ロドリゲス
スピードの那須川 vs 右強打のロドリゲス
バンタム級世界ランカー対決
キックボクシング時代に42戦全勝(28KO)の戦績を残し、昨年4月にプロボクシングに転向した那須川天心(25=帝拳)が、WBA世界バンタム級4位のジョナサン・ロドリゲス(25=プエルトリコ/アメリカ)と拳を交える。
那須川は最初の2試合はKOを逃したが、いずれもダウンを奪っている。3戦目は相手が棄権するという消化不良の結果だったが、試合内容は完璧だった。すでに群を抜くスピードに加えカウンターをとれるスキルを身に着けており、あとはパワーやスタミナ、駆け引き、経験などを積み上げていけば世界が視界に入ってくる状態といえる。
プエルトリコ生まれのロドリゲスは8歳のときにアメリカに移住したが、父親がアルコール依存症だったためホームレス・シェルターにいたこともあったという。ジムで現在の養父と出会ってボクシングを始めた。アマチュア戦績は58戦54勝4敗。
プロでは6年間に20戦17勝(7KO)2敗1分のレコードを残している。昨年11月、元WBA世界S・フライ級王者で当時はバンタム級でWBA4位にランクされていたカリド・ヤファイ(イギリス)に1回KO勝ちを収めた試合が光る。次戦のアントニオ・バルガス(アメリカ)との世界ランカー対決では7回終了TKO負けを喫したが、初回にはダウンを奪っている。KO率は35パーセントだが、その数字以上に危険な相手といえる。
WBO世界フライ級王座決定戦
加納陸対アンソニー・オラスクアガ
ともに2度目の世界戦
オッズは3対1でオラスクアガ有利
ジェシー・ロドリゲス(24=アメリカ)が返上した王座の決定戦。加納陸(26=大成)は2016年8月以来、アンソニー・オラスクアガ(25=アメリカ/帝拳)は昨年4月以来、ともに2度目の世界挑戦となる。
加納は2013年12月にフィリピンでプロデビューし、1年間は国外で7戦したが、これらは17歳前だったため日本ボクシングコミッション(JBC)の非公認試合となっている。ミニマム級のWBOアジアパシフィック王座を獲得後の2016年8月、18歳でWBO世界同級王座決定戦に出場したが、高山勝成(仲里)に6回負傷判定負け。その後、2年間に2度の敗北を喫したあとはL・フライ級とフライ級のWBOアジアパシフィック王座を獲得するなど引き分けを挟んで9連勝を収めている。JBC公認後の戦績は21戦17勝(8KO)3敗1分。サウスポーのボクサーファイター型で、右ジャブから左ストレート、接近しての左右フック、アッパーが主武器だ。
オラスクアガは2020年9月にプロデビューし、世界挑戦経験者を連破したあと昨年4月に寺地拳四朗(BMB)の持つWBA・WBC世界L・フライ級王座に挑んだが、大健闘したものの9回TKOで敗れた。5ヵ月後に再起を果たし、3試合連続で日本のリングに上がることになった。戦績は7戦6勝(4KO)1敗。若さと馬力を前面に出した攻撃型で、試合は常にスリリングだ。
オッズは3対1、オラスクアガ有利と出ている。
S・ミドル級6回戦
荒本一成対ムングンツォージ・ナンディンエルデン
アマチュア時代に高校8冠を含め12度の国内優勝を収めた実績を持つ荒本一成(24=帝拳)のプロデビュー戦。
相手のムングンツォージ・ナンディンエルデン(37=モンゴル)はアマチュア時代、のちにプロで世界挑戦するアルツール・アカボフ(ロシア)に勝ったこともある選手で、現在は韓国の水原(スウォン)に住んでいる。2年前に35歳でプロデビューし、今年1月には韓国ミドル級王座決定戦に出場したが10回判定負けを喫した。これが再起戦となる。器用なタイプではないが、パンチは左右とも強い。
荒本もアマチュアで92戦85勝(37KO)7敗の戦績を残しており、パンチ力には自信を持っている。初回から打撃戦になりそうだ。
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エキサイトマッチSP「中谷潤人vsアストロラビオ」「那須川天心vsロドリゲス」
9/30(月)午後8:00
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(C)NAOKI FUKUDA