WBC世界ライト級タイトルマッチ シャクール・スティーブンソン対アルテム・ハルチュニャン
リオ五輪バンタム級銀 vs リオ五輪L・ウェルター級銅
高度な技術戦か
昨年11月に3階級制覇を成し遂げたWBC世界ライト級王者、シャクール・スティーブンソン(27=アメリカ)が、同級7位のアルテム・ハルチュニャン(33=アルメニア/ドイツ)を迎えて初防衛戦に臨む。ふたりともアマチュア時代に2016年リオデジャネイロ五輪に出場し、スティーブンソンはバンタム級(56kg以下)で銀メダル、ハルチュニャンはL・ウェルター級(64kg以下)で銅メダルを獲得しており、メダリスト対決となる。
危機管理能力に長けたスティーブンソン
スティーブンソンは現在もトレーナーを務める祖父と一緒にジムに行ってボクシングを始め、アマチュアでは五輪銀のほか世界ジュニア選手権、世界ユース選手権、ユース五輪で優勝するなど「約140戦して12敗か13敗」(スティーブンソン)の戦績を残した。トップランク社と契約して2017年4月にプロ転向を果たし、2年半後の2019年10月にWBO世界フェザー級王座を獲得。2021年6月にはWBO暫定世界S・フェザー級王座を手に入れ、のちに正王者になっている。そして昨年11月、エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)との王座決定戦を制して3階級制覇を達成した。
生来の右利きだが、5歳でボクシングを始めたときから左構えだという。身長とリーチは173cmだが、ロングレンジからスピードと伸びのある右ジャブ、左ストレートを放つため数字以上に大柄に感じられる。21戦全勝(10KO)の戦績が物語るようにパワーでねじ伏せるスタイルではなく、スピードとスキルで魅せるタイプといえる。「Fearless(怖いもの知らず)」というニックネームを持つが、そのイメージとは逆に危機管理能力に長けた選手といっていいだろう。
アルメニア出身でドイツを活動拠点とするハルチュニャン
ハルチュニャンはアルメニアの首都エレバンの出身だが、リオデジャネイロ五輪には移住したドイツ代表として出場。第3シードだったため1回戦はシードで、2回戦、準々決勝を勝ち抜いてベスト4入り(銅メダル)を果たした。翌年11月にドイツでプロデビューし、ここまで13戦12勝(7KO)1敗の戦績を残している。唯一の黒星は昨年7月、WBC世界ライト級挑戦者決定戦でフランク・マーティン(アメリカ)に喫したものだ。最終回に膝をつくダウンがなければ引き分けもあり得た僅少差の敗北で、株を落とす内容ではなかった。
身長は172cmとライト級では大きい方ではなく、ガードを固めながら距離を詰めて左右フック、右アッパーを顔面とボディに打ち分けることが多い。マーティン戦に続きアメリカのリングは2度目となる。
オッズは16対1 王者が実力差を見せつけるか
スピードとスキル、プロでの経験値で勝るスティーブンソンが有利であることは間違いない。自分に都合のいい適度な距離をキープしながら右ジャブから左ストレートを打ち込み、ハルチュニャンが出てきたときにはクリンチで攻撃を寸断してしまうシーンが目に浮かぶ。挑戦者は中近距離の攻防に持ち込んでかき回し、ボディから顔面に左フックを打ち分けて3階級制覇王者を慌てさせたいところだ。しかし、両者のスタイルから考えると16対1のオッズがひっくり返る可能性は低いと言わざるを得ない。
<ライト級トップ戦線の現状>
WBA:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBC:シャクール・スティーブンソン(アメリカ)
IBF :ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
WBO:デニス・ベリンチク(ウクライナ)
3階級制覇の3王者、ジャーボンテイ・デービス(29=アメリカ)、シャクール・スティーブンソン(27=アメリカ)、ワシル・ロマチェンコ(36=ウクライナ)が実績、実力の面で3強といっていいだろう。なかでもKOを量産しているデービスはこの階級の核になる選手で、死角が見当たらない。一時はロマチェンコとの対戦プランが浮上していたが、年内の実現は見送りになったと報じられている。時間が経てば経つほどロマチェンコにとっては不利になるだけに、早期実現を期待したいところだ。
デービス対スティーブンソンも興味深いカードだ。攻撃型のWBA王者と防御力の高いWBC王者という組み合わせになる。緊張感溢れる試合になりそうだが、パンチの交換が多い展開になればデービス、噛み合わせの甘い展開に持ち込めればスティーブンソンが有利といえよう。
エマヌエル・ナバレッテ(29=メキシコ)に勝ってWBO王者になったデニス・ベリンチク(36=ウクライナ)は、現時点では知名度と実績不足といえる。上記3強のひとりを食って存在感を示したいところだが......。
ランカー陣も充実している。最も王座に近いのは4団体すべてで1位につけているウィリアム・セペダ(28=メキシコ)だろう。175cmの長身サウスポーで31戦全勝(27KO)の戦績が示すとおりの強打者だ。暫定王座を含め3階級制覇の実績を持つジョセフ・ディアス(31=アメリカ)、世界挑戦経験者のメルシト・ヘスタ(36=フィリピン)、世界ランカーのマクシー・ヒューズ(34=イギリス)とジョバニ・カブレラ(30=アメリカ)と強豪を連破して最上位に浮上してきた。
東京五輪金メダリストのアンディ・クルス(28=キューバ)、同五輪決勝でクルスに敗れたキーション・デービス(25=アメリカ)、ジャーボンテイ・デービスに善戦したフランク・マーティン(29=アメリカ)とスティーブンソンを苦しめたエドウィン・デ・ロス・サントス(24=ドミニカ共和国)、21戦全勝(16KO)のレイモンド・ムラタラ(27=アメリカ)、さらに14戦全勝(12KO)のアブドゥラー・メイソン(20=アメリカ)にも注目したい。
WBC世界S・フェザー級タイトルマッチ
オシャキー・フォスター対ロブソン・コンセイサン
本当に覚醒したのか? 真価問われる王者
4度目の挑戦実らせたいコンセイサン
昨年2月、レイ・バルガス(メキシコ)との王座決定戦を制して戴冠を果たしたオシャキー・フォスター(30=アメリカ)のV3戦。2016年リオデジャネイロ五輪ライト級金メダリストのロブソン・コンセイサン(35=ブラジル)を相手にどんなパフォーマンスを見せるのか。
フォスターはキャリア前半に2度の敗北を経験したが、2017年以降は12連勝(5KO)と好調を維持している。バルガスに勝って手に入れた王座はメキシコで劇的な最終回逆転TKO勝ちで初防衛を果たし、これで覚醒したかと思われた。しかし、圧勝が予想されたV2戦ではエイブラハム・ノバ(アメリカ)に大苦戦。最終回にダウンを奪って2対1の判定で辛勝という内容だった。スピードを生かしたボクサーファイター型で、左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターだ。
挑戦者のコンセイサンは金メダルを手土産に2016年11月に28歳でプロデビュー。ダウンを喫するなど危なっかしい試合もあったが、2021年9月にはWBC世界S・フェザー級王座に挑戦する機会を得た。しかし、このときはオスカル・バルデス(メキシコ)に12回判定負け。1年後、シャクール・スティーブンソン(アメリカ)の持つWBC・WBO同級王座に挑んだが、今度は体重オーバーの相手に大差で敗れた。昨年11月、WBO同級王者のエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)に挑戦したが、2度のダウンが響いて12回引き分けに終わった。再起戦を挟み、今回が4度目の大舞台となる。179cmの長身選手で、決め手に欠ける傾向はあるものの相手にとっては戦いにくいタイプといえる。
オッズは15対8でフォスター有利と出ているように接戦が予想されるカードだ。王者がスピードを生かして出入りしてポイントを重ねるか、それともコンセイサンがチョップ気味の右をヒットして印象点を稼ぐか。終盤まで目の離せない攻防が続きそうだ。
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エキサイトマッチ~世界プロボクシング WBC世界ライト級タイトルマッチ シャクール・スティーブンソンvsアルテム・ハルチュニャン
8/12(月・祝)午後9:00
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