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NABF・NABO北米S・ウェルター級タイトルマッチ ザンダー・ザヤス対パトリック・テイシェイラ

近未来の王者候補 vs 元WBO王者
21歳の逸材ザヤスに注目

 S・ウェルター級でWBO5位、WBC7位、IBF11位にランクされるプエルトリコのスーパースター候補、ザンダー・ザヤス(21)が、元WBO同級王者で現在はWBO8位に名を連ねるパトリック・テイシェイラ(33=ブラジル)と対戦する。試合はザヤスの持つNABF北米、NABO北米王座の防衛戦として行われる。才能に恵まれた21歳の新星が輝きを増すのか、それとも経験豊富なベテランが意地を見せるのか。

スピードと鋭いパンチを持つザヤス

 ザヤスはプエルトリコのサンファン生まれだが、アマチュア時代から活動拠点をアメリカに置いている。2018年の全米ユース選手権で優勝したあと2019年10月、シャクール・スティーブンソン(アメリカ)対ジョエト・ゴンザレス(アメリカ)のWBO世界フェザー級王座決定戦の前座でプロデビュー(1回KO勝ち)。当時は17歳1ヵ月だった。
 その1ヵ月後にもザヤスは1回TKO勝ちを収めているが、このときのメインカードはテイシェイラ対カルロス・アダメス(ドミニカ共和国)のWBO世界S・ウェルター級暫定王座決定戦だった。紆余曲折を経て5年後にザヤスとテイシェイラが拳を交えるのだから先は分からないものだ。
若いこともあって慎重なマッチメークが施されたザヤスは期待どおりに勝利を重ね、2022年にはNABO北米王座とNABF北米王座を獲得。以後、両王座の防衛戦をこなしながら世界ランキングを上げてきた。戦績は18戦全勝(12KO)。スピードを生かした右のボクサーファイター型で、右ストレート、左フックは切れがある。パンチは多彩でカウンターがとれるのも強みだ。ただ、競った状態でのスタミナやタフネスは試されていない。

世界王者 ⇒ 3連敗 ⇒ 3連続KO 復活のテイシェイラ

 テイシェイラは2009年8月に18歳でプロデビューし、6年間に26連勝(22KO)をマーク。この間、WBO中南米王座を獲得するなどして世界ランク入りも果たした。2016年5月、世界挑戦経験者のカーティス・スティーブンス(アメリカ)の右フックを浴びて2回TKO負けを喫したが、そこから巻き返して2019年11月にはアダメスに勝ってWBO暫定世界S・ウェルター級王者になった。
直後に正王者に昇格したもののコロナ禍のなか思ったように試合が組めず、ブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)との初防衛戦が行われたのは1年2ヵ月後の2021年2月だった。この試合、テイシェイラは挑戦者の馬力に押され12回判定で完敗。無冠になったあと再起戦ではラビットパンチ(後頭部への反則打)で失格負けとなり、次戦ではダウンを喫して10回判定負け。こうして3連敗のどん底を経験したが、以後はミドル級のWBAカリブ王座を獲得するなど3連続KO勝ちを収めている。戦績は38戦34勝(25KO)4敗。

若く才能あふれるザヤスが圧倒的有利

 長身サウスポーのテイシェイラが変則的な動きから右ジャブを飛ばし、左ストレート、左フックを狙っていくことになりそうだ。これに対しザヤスは慎重に距離をとりながら右ストレート、左フックを打ち抜くタイミングを計るものと思われる。
 スピードやパンチのバリエーションで勝るザヤスが圧倒的有利と見られており、順当にいけば中盤から終盤にかけてヤマをつくる可能性が高い。ただ、テイシェイラのパンチはラフで破壊力もあるだけに気を抜けない。

<S・ウェルター級トップ戦線の現状>


WBA         :イスラエル・マドリモフ(ウズベキスタン)
WBC         :セバスチャン・フンドラ(アメリカ)
WBC暫定:セルヒイ・ボハチュク(ウクライナ)
WBC休養:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
IBF            :バフラム・ムラタザリエフ(ロシア)
WBO        :セバスチャン・フンドラ(アメリカ)

 今年3月、ティム・チュー(29=オーストラリア)が長身サウスポーのセバスチャン・フンドラ(26=アメリカ)に大流血戦のすえ12回判定負けを喫したことで、この階級は大混戦模様となっている。番狂わせを起こしたフンドラに対してはウェルター級の元世界王者、エロール・スペンス(34=アメリカ)が挑戦を希望している。下馬評は5対2でスペンス有利に傾いているが、再び番狂わせが起こる可能性も低くはなさそうだ。
 そのスペンスに1年前に完勝しているテレンス・クロフォード(36=アメリカ)もS・ウェルター級進出を果たす。8月にWBA王者のイスラエル・マドリモフ(29=ウズベキスタン)に挑むもので、この試合はWBO暫定王座決定戦も兼ねている。11対2のオッズが出ているようにクロフォードが圧倒的有利であることは間違いないが、壁のように迫る頑丈なファイター、マドリモフを侮ることは危険だ。
 ランカー陣では21戦全KO勝ちのバージル・オルティス(26=アメリカ)への期待が高い。ウェルター級では体重苦と体調不良に悩まされたが、いよいよ世界挑戦が視界に入ってきた。
 前WBO王者のチューも巻き返しを狙っているし、21歳の逸材、ザンダー・ザヤス(プエルトリコ)も順調に伸びてきている。一時期、低迷したエリクソン・ルビン(28=アメリカ)も3度目の挑戦の機会を狙っている。

NABF北米・IBFインターナショナル・WBOインターコンチネンタル フェザー級タイトルマッチ
ブルース・カーリントン対ブライアン・デ・グラシア

井上尚弥戦を熱望するカーリントン
その実力は?

 フェザー級の三つの地域王座を保持しているWBO4位、WBC7位、IBF11位のブルース・カーリントン(27=アメリカ)が、12年のプロキャリアを持つベテランのブライアン・デ・グラシア(30=パナマ)を相手に三王座の防衛戦に臨む。井上尚弥(31=大橋)のフェザー級転向を前提に「モンスター」との対戦を望んでいるカーリントンのパフォーマンスに要注目だ。
 カーリントンはアマチュアを経て2021年10月に24歳でプロデビュー。昨年12月、初めての10回戦で世界挑戦経験者のジェイソン・サンチェス(アメリカ)に2回TKO勝ちを収め、次戦で空になっていた三つの地域王座を獲得した。今回、もともとはホセ・エンリケ・サンチェス(メキシコ)と対戦する予定だったが、サンチェスに査証トラブルが発生したため相手がグラシアに変更された経緯がある。
 身長173cm、リーチ183cmと恵まれた体格のカーリントンはスピードとパンチ力を兼ね備えた選手で、伸びと破壊力のある右ストレートに加え強振する左右フックにも威力がある。戦績は11戦全勝(7KO)。ただ、まだ打たれ強さやスタミナなど試されていない面が残っている。
 対するグラシアは33戦29勝(25KO)3敗1分の戦績を残しているベテランで、パナマのフェザー級国内王座、WBC中南米王座、WBAカリブ王座などを獲得した実績を持っている。しかし、世界挑戦経験者のエデュアルド・ラミレス(メキシコ)に9回TKO負け、対戦の約3ヵ月後に世界挑戦するエドワード・バスケス(アメリカ)には10回判定負けと限界を見せてもいる。低い構えで頭から突っ込む攻撃型だが、KO率(約76パーセント)ほどのパンチ力は感じられない。
 井上尚弥にラブコールを送っているカーリントンが、その才能の一端を披露することになりそうだ。

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