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WBA世界ライト級タイトルマッチ ジャーボンテイ・デービス対フランク・マーティン

Tank(装甲戦車)のV5戦
4試合連続で無敗の相手と対戦

 2019年12月にWBA世界ライト級王座を獲得してから約5年、ジャーボンテイ・デービス(29=アメリカ)が、同じサウスポーのフランク・マーティン(29=アメリカ)を相手に5度目の防衛戦に臨む。29戦全勝(27KO)のデービスに対しマーティンも18戦全勝(12KO)の快進撃を続行中だ。デービスが世界戦で無敗の相手と拳を交えるのは4戦連続8度目となるが、5対1のオッズが出ているように今回も実力差を見せつけることになりそうだ。

3階級王座を同時保持後はライト級に専念

 デービスは2017年1月にIBF世界S・フェザー級王座を獲得したが、V2戦を前に体重超過で失格。しかし、次戦で同級WBA王座を獲得して2度防衛を果たした。ユリオルキス・ガンボア(キューバ)に12回TKOで圧勝して現在の王座を手に入れると、次戦ではS・フェザー級のWBAスーパー王者、レオ・サンタ・クルス(メキシコ)と互いの王座をかけて戦い6回KO勝ち。その8ヵ月後にはS・ライト級のWBA王者、マリオ・バリオス(アメリカ)を11回TKOで下して3階級の王座を同時に保持することになった。ほどなくしてふたつのベルトを返上してベスト体重のライト級での活動に絞り、イサック・クルス(メキシコ)、ローランド・ロメロ(アメリカ)、エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)を退けて防衛記録を4に伸ばしている。
 身長166cm、リーチ171cmとライト級のなかでは小柄な部類に入るが、自在な動きのなかで左ストレート、左右フック、アッパーなど多彩な強打を放つ。防御技術にも長けており、危機的状況に陥ったことは皆無に等しい。直近の試合でもある昨年4月のライアン・ガルシア(アメリカ)とのノンタイトル戦がそうだったように、最近、序盤は慎重に相手の出方をうかがうことが多い。そして、攻防のパターンを読み取ると積極的に仕掛け、そのうえで攻め落としてしまうパターンが目立つ。不安らしいものが見当たらないが、あえて挙げるとすれば試合間隔が1年2ヵ月空いた点だろうか。

強豪を連破して上位進出を果たしたマーティン

 マーティンは2016年の全米ゴールデングローブ大会L・ウェルター級決勝でバージル・オルティス(アメリカ)に勝って優勝するなどアマチュアで58戦52勝6敗の戦績を残している。2017年10月にプロデビューし、最初の3年間は負け越しの相手などリスクの少ない選手との試合が多かったが、2020年に憧れのエロール・スペンス(アメリカ)とマネジメント契約を交わした後、2021年あたりから徐々に対戦相手の質を上げていった。元世界ランカーのロメロ・ドゥノ(フィリピン)に4回TKO勝ち、世界挑戦経験者のジャクソン・マリネス(ドミニカ共和国)に10回TKO勝ち、さらに世界ランカーのミチェル・リベラ(ドミニカ共和国)にも12回判定勝ちを収めた。直近の試合は昨年7月で、リオデジャネイロ五輪銅メダリスト、WBC8位のアルテム・ハルチュニャン(アルメニア/ドイツ)に12回判定勝ちを収めている。
 スピードがあって攻防の勘もよく、自ら踏み込んで打つだけでなく相手の打ち終わりを突くこともできるなど総合的な戦闘能力は高いものがある。ただ、デービスと比較するとパワーの点で物足りなさが残る。

序盤で主導権を握りたい挑戦者

 最近のデービスの試合同様、王者が同じサウスポーのマーティンのスピードを警戒し、比較的慎重なスタートを切る可能性が高い。挑戦者が番狂わせを起こすためには、そんな序盤にデービスにカウンターでダメージを与えるなり警戒心を抱かせる必要があるだろう。仮にマーティンが慎重に相手の出方を見てペースを合わせてしまうようだと勝機は遠のいていきそうだ。

<2017年以降のジャーボンテイ・デービスの対戦相手>


17年1月   ホセ・ペドラサ        〇7回TKO IBF S・フェザー級王座獲得
17年5月   リアム・ウォルシュ      〇3回TKO 防衛1
17年8月   フランシスコ・フォンセカ   〇8回KO ※自身が体重超過→王座剥奪
18年4月   ヘスス・クェジャル      〇3回TKO WBA S・フェザー級スーパー王座獲得
19年2月   ウーゴ・ルイス        〇1回KO 防衛1
19年7月   リカルド・ヌネス       〇2回TKO 防衛2
19年12月 ユリオルキス・ガンボア    〇12回TKO WBA ライト級王座獲得
20年10月 レオ・サンタ・クルス     〇6回KO WBA S・フェザー級スーパー王座獲得 ライト級防衛1
21年6月   マリオ・バリオス       〇11回TKO WBA S・ライト級王座獲得→返上
21年12月 イサック・クルス       〇12回判定 WBA ライト級王座防衛2
22年5月   ローランド・ロメロ      〇6回TKO WBA ライト級王座防衛3
23年1月   エクトル・ルイス・ガルシア  〇9回TKO WBA ライト級王座防衛4
23年4月   ライアン・ガルシア      〇7回KO ※ノンタイトル12回戦
24年6月   フランク・マーティン
赤字は全勝または無敗の相手



<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>


  デービス マーティン
生年月日/年齢 1994年11月7日/29歳 1995年1月12日/29歳
出身地 アメリカ・メリーランド州ボルティモア アメリカ・ミシガン州デトロイト
アマチュア実績 12年全米GG大会優勝 16年全米GG大会優勝
アマチュア戦績 220戦205勝15敗 58戦52勝6敗
プロデビュー 2013年2月 2017年10月
獲得王座 WBAスーパー、IBF Sフェザー級
WBAライト級
WBA S・ライト級
 
プロ戦績 29戦全勝(27KO) 18戦全勝(12KO)
KO率 93% 67%
世界戦の戦績 12戦全勝(11KO)
※計量で失格の試合含む
 
直近の試合 2023年4月(7回KO勝ち) 2023年7月(12回判定勝ち)
身長/リーチ 166センチ/171センチ 173センチ/173センチ
戦闘スタイル 左ボクサーファイター型 左ボクサーファイター型
ニックネーム Tank(装甲戦車) Ghost(幽霊)

<ライト級トップ戦線の現状>


WBA:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBC:シャクール・スティーブンソン(アメリカ)
IBF   :ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
WBO:空位 ※エマヌエル・ナバレッテ対デニス・ベリンチクで決定戦  6/24放送

 4団体統一王者だったデビン・ヘイニー(25=アメリカ)はS・ライト級に転向したが、それでもタレントは十分に揃っている。WBA王者のジャーボンテイ・デービス、WBC王者のシャクール・スティーブンソン(26=アメリカ)、5月にIBF王座で返り咲きを果たしたワシル・ロマチェンコ(36=ウクライナ)の3人に加え、WBO王座決定戦に出場するエマヌエル・ナバレッテ(29=メキシコ)も3階級制覇王者だ(ナバレッテ対デニス・ベリンチク戦は6月24日に放送・配信)。
 デービスは今回のフランク・マーティンが5度目の防衛戦になり、スティーブンソンは7月にアルテム・ハルチュニャン(33=アルメニア/ドイツ)との初防衛戦が決まっている。王者が勝ち抜くことを前提に、デービス対スティーブンソン、デービス対ロマチェンコ、スティーブンソン対ロマチェンコ――この3試合は黄金カードといえる。ぜひ実現してほしいものだ。
 ランカー陣も充実している。30戦全勝(26KO)のウィリアム・セペダ(28=メキシコ)、20戦全勝(16KO)のレイモンド・ムラタラ(27=アメリカ)、さらに東京五輪のライト級銀メダリスト、11戦10勝(7KO)1無効試合のキーション・デービス(25=アメリカ)、そのデービスに勝って金メダルを獲得した3戦全勝(1KO)のアンディ・クルス(28=キューバ)らがトップの座を狙っている。

WBC世界L・ヘビー級暫定王座決定戦
デビッド・ベナビデス対オレクサンダー・グボジーク

2階級制覇を狙う27歳 vs 37歳の元WBC王者
ベナビデスが馬力で圧倒か

 L・ヘビー級でWBC・IBF・WBO3王座を持つアルツール・ベテルビエフ(ロシア/カナダ)がWBA王者のドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア)との統一戦に臨むため、しばらくは防衛戦義務を果たせなくなることからWBCが暫定王座を設けることになった。デビッド・ベナビデス(27=アメリカ)は現WBC暫定世界S・ミドル級王者で、勝てば2階級制覇となる。一方、2位にランクされるオレクサンダー・グボジーク(37=ウクライナ)が勝てば約5年ぶりの返り咲きとなる。
 ベナビデスは身長188cm、リーチ189cmと大柄で、その体格を生かして相手に圧力をかけて逃げ場を塞いで連打で仕留める馬力型の選手といえる。その戦法の前にアンソニー・ディレル(アメリカ)、デビット・レミュー(カナダ)、ケイレブ・プラント(アメリカ)、デメトリアス・アンドラーデ(アメリカ)らが敗れ去っている。戦績は28戦全勝(24KO)。S・ミドル級でサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)との頂上対決が期待されていたが、一向にプランが具体化しないため痺れを切らしているようだ。
 グボジークは2012年ロンドン五輪L・ヘビー級で銅メダル獲得後、トップランク社と契約して2014年4月にプロに転向。2018年3月にWBC暫定世界L・ヘビー級王座を獲得し、9ヵ月後に9度防衛中のアドニス・スティーブンソン(ハイチ/カナダ)を11回KOで下して正王者に昇格した。しかし、2019年10月、アマチュア時代に敗れているベテルビエフに10回TKO負けを喫し、WBC王座を失った。
 それを機に引退したが、3年4ヵ月後の2023年2月に35歳で戦線復帰して3連勝を収めている。戦績は21戦20勝(16KO)1敗。攻防に滑らかさを欠く印象はあるが、左ジャブから繋げる右ストレートは破壊力がある。身長188cm、リーチ192cmで、ベナビデスとほぼ同じ体格だ。
 グボジークが左ジャブを突きながら右ストレートを狙い、ベナビデスが距離を詰めるために前に出るという展開になりそうだ。グボジークの左ジャブが機能して中間距離を保つことができれば前半は互角以上に戦えるかもしれないが、徐々にベナビデスの圧力に押されるようだと苦しくなるだろう。グボジークもパンチ力があるだけに予断は禁物だが、6対1のオッズが示すように順当ならベナビデスの中盤KO勝ちか。

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