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WBC世界ブリッジャー級タイトルマッチ ルカシュ・ロザンスキー対ローレンス・オコリー

新設階級で初の"防衛戦"
KO決着間違いなしのカード

 2020年11月にWBCがクルーザー級の上に新設したブリッジャー級(90.7kg~101.6kg)の2代目王者、ルカシュ・ロザンスキー(38=ポーランド)が、前WBO世界クルーザー級王者のローレンス・オコリー(31=イギリス)を迎えて初防衛戦に臨む。このクラスではWBAとWBC暫定を含めて4人の世界王者が誕生しているが、まだ防衛戦を行った選手はいない。ロザンスキーが戴冠試合に続いて地元で記念すべき勝利を収めるのか、それとも2016年リオデジャネイロ五輪戦士のオコリーが2階級制覇を成し遂げるのか。KO決着間違いなしのカードだ。

ヘビー級から転向して王座を獲得したロザンスキー

 ロザンスキーはアマチュアを経て2015年10月に29歳でプロ転向を果たした。2年後には世界挑戦経験者のアルバート・ソスノウスキー(ポーランド)に1回KO勝ちを収め、その2年後には元世界ランカーのイズアグベ・ウゴノー(ポーランド)を4回KOで破りヘビー級の国内王座を獲得。さらに2021年には同じく世界挑戦経験者のアルツール・ズピルカ(ポーランド)にも1回KO勝ちを収めた。その後、WBC初代王者のオスカル・リバス(コロンビア)への挑戦が具体化しかけたこともあったが破談。そのリバスが網膜剥離のため王座を返上して引退したことで2代目王者を決める試合への出場が決定した。昨年4月のことだ。この試合でロザンスキーは11戦全勝(10KO)のアレン・バビッチ(クロアチア)に130秒でTKO勝ち、ポーランドのファンを熱狂させた。
 ヘビー級で戦っていたときのロザンスキーは106kg~110kgの体重だったが、バビッチ戦では約100kgまで絞った。このときは最初から前傾姿勢で飛び込んで乱打戦を仕掛け、左右フックで先制のダウンを奪い、再開後に連打を浴びせてレフェリー・ストップに持ち込んでいる。戦績は15戦全勝(14KO)。

クルーザー級で3度の防衛を果たしたオコリー

 オコリーはアマチュア時代に2016年リオデジャネイロ五輪に出場(ヘビー級ベスト16)後、当時の世界ヘビー級王者、アンソニー・ジョシュア(イギリス)とマネジメント契約を交わしてプロに転向。ジョシュア対カルロス・タカム(カメルーン/フランス)、ジョシュア対アレクサンドロ・ポベトキン(ロシア)、ジョシュア対クブラト・プーレフ(ブルガリア)の前座などに出場し、クルーザー級の国内王座、英連邦王座、EBU欧州王座、WBOインターナショナル王座など地域王座を次々とゲット。2021年3月にはクジシュトフ・グロワッキ(ポーランド)に6回KO勝ちを収めてWBO王座を獲得した。
 その後、3度の防衛に成功したが、昨年5月にクリス・ビラム・スミス(イギリス)に12回判定で敗れて無冠に戻った。スミス戦ではガードの堅い相手を崩せず、攻撃が雑になったところを突かれて3度ダウンするなど完敗だった。今回は再起戦でもあるが、10kg近い増量をして臨むことになる。
 オコリーは身長196cm、リーチ210cmと恵まれた体の持ち主だが、その体格を生かす戦い方をせず、とにかく自信のある右を狙うことに固執している印象だ。そのためディフェンス面は比較的ルーズといえる。戦績は20戦19勝(14KO)1敗。

王者の左右フックか 挑戦者の右か

 93パーセントのKO率を誇るロザンスキーと、右の一発を狙うオコリー。まずKO決着は間違いないところといえる。しかも両者とも早くから仕掛けることが多いため、開始のゴングから一瞬たりとも目の離せない試合になりそうだ。ロザンスキーが飛び込んで体重を乗せた左右フックを当てるのか、それともオコリーが絶対の自信を持つ右をヒットするのか。オッズは9対4で挑戦者有利と出ている。

<ブリッジャー級誕生と現状>


WBA:エフゲニー・ティシュチェンコ(ロシア)
WBC:ルカシュ・ロザンスキー(ポーランド)
WBC暫定:ケビン・レリーナ(南アフリカ)

 このクラスは「最重量級のヘビー級で体格差の大きい試合が目立つ。健康面と公平性に問題あり」という理由で2020年11月にWBCが新設を決めた。体重区分は200ポンド(約90.7kg)以上224ポンド(約101.6kg)以下と規定されている。11ヵ月後の2021年10月に初代王座決定戦が行われ、体重100.8kgのオスカル・リバス(コロンビア)が92.0kgのライアン・ロジッキ(カナダ)に12回判定勝ちを収めた。
 網膜剥離が判明したリバスは防衛戦を行うことなく2023年1月に王座を返上して引退。これを受け同年4月に2代目王者を決める戦いが行われ、アレン・バビッチ(クロアチア)に1回TKO勝ちを収めたロザンスキーがベルト保持者となった。7ヵ月後にはケビン・レリーナ(南アフリカ)が暫定王座についている。ちなみにレリーナは今年3月、ヘビー級のWBOグローバル王座決定戦に出場して10回判定負けを喫している。
 WBCに追従したのがWBAで、昨年12月に元クルーザー級ランカー同士で初代王座決定戦を行い、レオン・ハース(アルメニア/ドイツ)に6回TKO勝ちを収めたエフゲニー・ティシュチェンコ(ロシア)がベルトを獲得した。しかし、のちにドーピング違反が発覚し、試合の結果は無効試合に変更されている(2024年4月時点でもWBAはティシュチェンコを王者として認定している)。IBFとWBOはブリッジャー級を設けていない。
 現在のブリッジャー級ランカーを見てみると、やはり軽めのヘビー級と重いクルーザー級が混在という構成になっている。今後、ローレンス・オコリー、バドゥ・ジャック(40=スウェーデン)といった世界王者経験者がどこまで盛り上げていけるか。

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